シンドビスウイルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/28 06:19 UTC 版)
シンドビスウイルス(Sindbis virus(SINV))は、トガウイルス科アルファウイルス属のウイルスである。このウイルスは1952年にエジプトのカイロで初めて分離された[1]。このウイルスは蚊(イエカとCuliseta)により媒介される。SINVはポゴスタ病[2](フィンランド)、オッケルボー病(スウェーデン)、カレリア熱(ロシア)に関連している。ヒトでは症状に関節痛、発疹、倦怠感などがある。シンドビスウイルスは、ユーラシア、アフリカ、オセアニアの昆虫や脊椎動物に広く継続的に見つかっている。しかし、ヒトにおける臨床的な感染と疾患は、SINVが流行し、大規模なアウトブレイクが断続的に発生する北ヨーロッパ(フィンランド、スウェーデン、ロシア領カレリア)からしかほとんど報告されていない。オーストラリア、中国、南アフリカでも稀に症例が報告されている[3]。
SINVはアルボウイルスであり、節足動物により媒介され、自然界では脊椎動物(鳥類)の宿主と無脊椎動物(蚊)のベクターとの間の感染により維持されている。ヒトは感染した蚊に刺されるとシンドビスウイルスに感染する。
ウイルス生理学
構造、ゲノム、複製
シンドビスウイルスは正二十面体のカプシドを持つエンベロープ粒子で、プラス1本鎖RNAゲノムを持ち、その大きさは約11.7kbである。RNAは5'-capと3'-polyadenylated tailを持ち、宿主細胞内で直接メッセンジャーRNA(mRNA)として機能する。 ゲノムには4つの非構造タンパク質、カプシド、2つのエンベロープタンパク質がコードされている。これは全てのトガウイルスに見られる特徴である。複製は細胞質内で急速に行われる。ゲノムRNAは5'末端で部分的に翻訳され、非構造タンパク質を生成し、それがゲノムの複製と新しいゲノムRNAと短いサブゲノムRNA鎖の生成に関与する。このサブゲノム鎖は構造タンパク質に翻訳される。ウイルスは宿主細胞表面で集合し、出芽によってエンベロープを獲得する。
シンドビスウイルスのゲノム複製には、ノンコーディングRNAが必要であることが分かっている[4]。
シンドビスウイルスのRNA間で組換えが証明されている[5][6]。組換えのメカニズムは、RNA複製の際のtemplate switching(copy choice)にあるようである[5][6]。
関連記事
脚注
- MicrobiologyBytes: Togaviruses
- CDC: Pogosta disease and Sindbis virus
- Sindbis virus—ICTVdB—The Universal Virus Database, version 4.
- ^ “Introduction and Dispersal of Sindbis Virus from Central Africa to Europe”. J Virol 93 (16): e00620-19. (30 July 2019). doi:10.1128/JVI.00620-19. PMC 6675900. PMID 31142666 .
- ^ Kurkela S, Manni T, Vaheri A, Vapalahti O. Causative agent of Pogosta disease isolated from blood and skin lesions, Emerg Infect Dis [serial on the Internet]. Published 2004 May. (accessed 2007-10-16). Archived 2010-07-05 at the Wayback Machine.
- ^ “Facts about Sindbis fever” (英語). European Centre for Disease Prevention and Control (2017年6月11日). 2021年9月7日閲覧。
- ^ Frolov, I; Hardy R; Rice CM (2001). “Cis-acting RNA elements at the 5' end of Sindbis virus genome RNA regulate minus- and plus-strand RNA synthesis”. RNA 7 (11): 1638–1651. doi:10.1017/S135583820101010X. PMC 1370205. PMID 11720292 .
- ^ a b “RNA recombination in animal and plant viruses”. Microbiol Rev 56 (1): 61–79. (1992). doi:10.1128/mr.56.1.61-79.1992. PMC 372854. PMID 1579113 .
- ^ a b “Recombination between Sindbis virus RNAs”. J Virol 65 (8): 4017–25. (1991). doi:10.1128/JVI.65.8.4017-4025.1991. PMC 248832. PMID 2072444 .
外部リンク
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