クンネチカプ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/24 21:24 UTC 版)
クンネチカプ(アイヌ語:Kunne-cikap)は、アイヌに伝わる妖怪[1]。
概要
吉田巌『アイヌの妖怪説話(続)』によれば、クンネチカプ(黒い鳥)はポンヤウンペの征服した北方クンネペッ(黒い川)の怪鳥だという。同じくポンヤウンペの征服した北方フウレケナシ(赤い林)には怪鳥フウレチカプ(赤い鳥、フリカムイのこと)がいたと記されている吉田巖。
クンネチカプとの関連性は不明だが、フリカムイと関わって「黒い川、暗い川」と名付けられたと伝わる山越郡の国縫川(クンナイカワ[2])が実在する(フリカムイ § 国縫川参照)[6]。
バチェラー八重子が詠んだ短歌の歌集『若きウタリに』の一首に「ウタリの子に 君流せし血 生きてあり などか恐れむクンネチカッポ等」と歌われるが、カムイチカッポ(kunne-chikap-po[7])とは、悪や虚偽の象徴であると解説される[7]。また、"黒い鳥、群り集つて屍の肉をついばむ.. 妖鳥"である、と武田泰淳の小説『森と湖のまつり』(1957年)や[8]、短歌の解説にもみえる[9]。
脚注
- ^ 吉田巖 1914, p. 409.
- ^ a b 太田爲三郎「クンヌイ(国縫川)」『帝國地名辭典 上卷』三省堂、1912年、623頁。CRID 1130000796755709184。doi:10.11501/1086067。 NAID 130000983765。 NCID BN04309833。 OCLC 816842231。国立国会図書館書誌ID: 000000424602 。2024年8月14日閲覧。
- ^ 中田千畝「クンネナイ」『アイヌ神話』報知新聞社出版部、1924年、116頁。 CRID 1130000794366105472。doi:10.11501/982448。 NCID BN02666782。 OCLC 1402504064。国立国会図書館書誌ID: 000000594542 。2024年8月14日閲覧。
- ^ 中島峻蔵「怪鳥神の復讐―世界創造神の不用意・魔人どもの跳梁跋扈―」『北方文明史話』北海出版社社、1929年、360–362頁。 CRID 1130000798347535744。 NCID BN06054336。NDLJP:1444073,国立国会図書館書誌ID: 000000773758 。
- ^ 太田爲三郎 1912 「クンヌイカワ(国縫川)」の項。
- ^ 中田千畝『アイヌ神話』は「クンネナイ」が「暗(やみ)川」の意とする以外、川名の表記はない[3]。中島峻蔵『北方文明史話』は「クンネナイ(闇の川)」と「国縫村」のみに言及するが[4]、「クンネナイ」が訛って「クンナイ(国縫)」になったのであり[2]、国縫川は国縫を通り噴火湾に注ぐ[5]。
- ^ a b 児山敬一「基督敎と和歌」『短歌講座』改造社、1932年、115頁。NDLJP:1260047 。
- ^ 武田泰淳「森と湖のまつり(一五) (續)」『世界』第137号、岩波書店、1957年5月、270頁、NDLJP:3366693。「クンネチカッポとは、黒い鳥、群り集つて屍の肉をついばむという、おそろしい妖鳥のことであります」/
- ^ 湯本喜作「バチェラー八重子」『アイヌの歌人』、洋々社, 1963年、NDLJP:1346726など
参考文献
- 吉田巖「アイヌの妖怪説話 (續)」『人類學雜誌』第29巻第10号、日本人類学会、1914年、397-409頁。(snippet@google)
関連項目
- クンネチカプのページへのリンク