カウボーイズ・フロム・ヘル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/20 07:41 UTC 版)
『カウボーイズ・フロム・ヘル』 | ||||
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パンテラ の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 | テキサス州 パンテゴ・サウンド・スタジオ | |||
ジャンル | グルーヴ・メタル、スラッシュメタル | |||
時間 | ||||
レーベル | アトコ・レコード | |||
プロデュース | テリー・デイト、パンテラ | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
チャート最高順位 | ||||
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パンテラ アルバム 年表 | ||||
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『カウボーイズ・フロム・ヘル』(Cowboys from Hell)は、パンテラが1990年に発表した、通算5作目のスタジオ・アルバム。フィル・アンセルモ加入後としては2作目に当たり、バンドは本作でメジャー・デビューを果たした。
背景
パンテラがグラム・メタルから、よりハードコアやスラッシュ色の強い方向性へ移行した作品に当たり、ヴィニー・ポールは後年のインタビューにおいて、前作『Power Metal』制作後、自分達の派手な衣装や髪形に疑問を抱き「今までのイメージを捨てて、より音楽そのものに焦点を絞って、できるだけ激しく行こうとした」と振り返っている[4]。1989年、アトコ・レコードのA&Rマーク・ロスは、当初カリフォルニア州でタンジアー(当時アトコと契約したばかりのバンド)のライブを観る予定だったが、ハリケーンの影響でダラスに滞在することとなり、上司のデレク・シャルマンの命令によりフォートワースのメキシカン・レストランで行われたパンテラのライブを観て、ロスはライブの途中でシャルマンに電話をかけに行き、パンテラとの契約を進言した[4]。バンドは当初、マックス・ノーマンによるプロデュースを希望していたが、金銭面で折り合いがつかず、最終的にはマーク・ロスの紹介により、サウンドガーデンやオーヴァーキル等の作品を手がけてきたテリー・デイトが起用された[4]。
クレジットには明記されていないが、ベーシストのレックスは、「セミトリー・ゲイツ」のイントロのアコースティック・ギターも演奏している[5]。「メッセージ・イン・ブラッド」の歌詞は、チャールズ・マンソンのファミリーのメンバー4人が1969年8月9日から10日にかけて起こしたテート・ラビアンカ殺人事件において、被害者の血で書いたメッセージに影響を受けており、パンテラは2000年にも、マンソンの言葉を引用した曲「アップリフト」を発表している[6]。
本作のジャケットは、コロラド州のバー「コスモポリタン・サルーン」の店内の写真(1910年撮影)に、メンバー4人の写真を合成して作られた[7]。本作からのシングル「カウボーイズ・フロム・ヘル」および「サイコ・ホリデイ」のミュージック・ビデオは、いずれもポール・ラックマンが監督し、2曲とも同じクラブでライブ映像が撮影された[8]。
反響・評価
オリジナル・リリース時はアメリカの総合アルバム・チャートBillboard 200入りを果たせず、1992年に『ビルボード』のトップ・ヒートシーカーズで27位を記録するにとどまったが[3]、1997年7月にはRIAAによりプラチナ・ディスクの認定を受けた[9]。発表から20年後の2010年には、Billboard 200で117位を記録している[3]。そして2023年5月26日には、アメリカ国内の売り上げが200万枚を突破した[9]。
スウェーデンでは、バンドがブレイクを果たした後の1995年3月3日付のアルバム・チャートで、46位を記録した[2]。
Eduardo Rivadaviaは後年、オールミュージックにおいて5点満点中4点を付け「パンテラの最高傑作は『俗悪』だが、同作のコンセプトの基盤を作った『カウボーイズ・フロム・ヘル』は、創造的な面で大躍進を遂げた作品である」、「パンテラのメンバーが生まれ変わったのと同時に、その過程でグルーヴ・メタルという新しいサブジャンルを決定づけた」と評している[1]。『ケラング!』誌の2019年12月6日の特集記事「Every Pantera Album Ranked From Worst To Best」では、全9作中3位となり「パンテラの様々な面を網羅しており、グルーヴ・メタルの先駆者へと進化していく前の、正統派ヘヴィメタル・バンドとしての強力な音楽性を示している」と評されている[10]。
リイシュー
2010年9月14日、本作のリリース20周年を記念したエクスパンデッド・エディション盤、デラックス・エディション盤が発売され、いずれもライブ音源を収録したボーナス・ディスクが付属しており、デラックス・エディション盤には、さらに本作収録曲のデモ録音や未発表曲「The Will to Survive」を含むボーナス・ディスクも加えられた[11]。なお、Eduardo Rivadaviaは「The Will to Survive」に関して「より正統派ヘヴィメタル色の強いリフで、アンセルモも主にメロディックな歌唱をしており、ジューダス・プリーストの『ペインキラー』に入っていてもおかしくない」と評している[1]。また、2010年11月23日には、デラックス・エディション盤の全内容に、本作当時のグッズのレプリカも付属したボックス・セット「アルティメット・エディション」も発売されている[11]。
収録曲
全曲ともメンバー4人の共作。
- カウボーイズ・フロム・ヘル - "Cowboys from Hell" - 4:06
- プライマル・コンクリート・スレッジ - "Primal Concrete Sledge" - 2:13
- サイコ・ホリデイ - "Psycho Holiday" - 5:19
- ハラシー - "Heresy" - 4:46
- セミトリー・ゲイツ - "Cemetery Gates" - 7:02
- ドミネーション - "Domination" - 5:04
- シャタード - "Shattered" - 3:22
- クラッシュ・ウィズ・リアリティ - "Clash with Reality" - 5:16
- メディシン・マン - "Medicine Man" - 5:15
- メッセージ・イン・ブラッド - "Message in Blood" - 5:09
- ザ・スリープ - "The Sleep" - 5:47
- ジ・アート・オブ・シュレッディング - "The Art of Shredding" - 4:20
20周年記念盤ボーナス・ディスク
ディスク2
1. - 7.は1990年9月15日のファウンデーション・フォーラム公演におけるライブ録音で、8.以降の5曲は1991年のモンスターズ・オブ・ロック・モスクワにおけるライブ録音を収録したEP「Alive and Hostile」より[11]。
- "Domination" - 4:56
- "Psycho Holiday" - 5:26
- "The Art of Shredding" - 5:47
- "Cowboys from Hell" - 5:03
- "Cemetery Gates" - 7:01
- "Primal Concrete Sledge" - 3:52
- "Heresy" - 5:12
- "Domination" - 7:02
- "Primal Concrete Sledge" - 3:18
- "Cowboys from Hell" - 4:16
- "Heresy" - 5:00
- "Psycho Holiday" - 5:50
ディスク3
- "The Will to Survive" - 4:14
- "Shattered (demo)" - 4:48
- "Cowboys from Hell (demo)" - 4:06
- "Heresy (demo)" - 4:43
- "Cemetery Gates (demo)" - 5:20
- "Psycho Holiday (demo)" - 5:10
- "Medicine Man" (demo) - 4:52
- "Message in Blood (demo)" - 4:58
- "Domination (demo)" - 4:45
- "The Sleep (demo)" - 6:16
- "The Art of Shredding (demo)" - 4:12
参加ミュージシャン
脚注
- ^ a b c Rivadavia, Eduardo. “Cowboys from Hell - Pantera - Album”. AllMusic. 2025年4月11日閲覧。
- ^ a b swedishcharts.com - Pantera - Cowboys From Hell
- ^ a b c “Pantera - Awards”. AllMusic. 2016年1月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年4月11日閲覧。
- ^ a b c Wiederhorn, Jon (2019年12月3日). “The Story Behind: Cowboys From Hell by Pantera”. loudersound.com. Future plc. 2025年4月11日閲覧。
- ^ Wiederhorn, Jon (2015年7月24日). “Rex Brown Recalls the Making of Pantera's 'Cowboys from Hell,' 'Vulgar Display of Power' and More”. Guitar World. Future plc. 2025年4月11日閲覧。
- ^ “Message In Blood by Pantera”. Songfacts. 2025年4月11日閲覧。
- ^ Schaffner, Lauryn (2022年7月24日). “Pantera's 'Cowboys From Hell': 9 Facts Only Superfans Would Know”. Loudwire. Townsquare Media. 2025年4月11日閲覧。
- ^ Wiser, Carl. “Director Paul Rachman on "Hunger Strike," "Man in the Box," Kiss”. Songfacts. 2025年4月11日閲覧。
- ^ a b “PANTERA's 'Cowboys From Hell' Certified Double Platinum In U.S”. Blabbermouth.net (2023年5月30日). 2025年4月11日閲覧。
- ^ “Every Pantera Album Ranked From Worst To Best”. Kerrang! (2019年12月6日). 2025年4月11日閲覧。
- ^ a b c “PANTERA: 'Cowboys From Hell' 20th-Anniversary Edition Detailed”. Blabbermouth.net (2010年7月20日). 2025年4月11日閲覧。
外部リンク
- カウボーイズ・フロム・ヘル - Discogs (発売一覧)
- カウボーイズ・フロム・ヘルのページへのリンク