アファイア神殿とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > アファイア神殿の意味・解説 

アファイア‐しんでん【アファイア神殿】

読み方:あふぁいあしんでん

Naos tis Aphaias/Ναός της Αφαίας》⇒アフェア神殿


アパイアー

(アファイア神殿 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/17 10:28 UTC 版)

アイギーナ島のアパイアー神殿

アパイアー古希: Ἀφαία, Aphaiā, ラテン語: Aphaea)は、古代ギリシアの女神であり、南ギリシアのアイギーナ島で専ら崇拝されていた。その祭祀はアテーナイにも入り、アテーナイにはアルテミス・アパイアーの神殿があったが、本来アイギーナ島の地方神である。古代ギリシアの地方神の多くがそうであるように、アパイアーは習合されて、アルテミスクレーテー島の女神ブリトマルティスなどと同一視された。

すなわち、クレーテー島の女神であるブリトマルティス古希: Βριτομαρτις, Britomartis, クレーテー語で「甘美な乙女 Sweet Maiden」の意)が、クレーテーにあって、ミーノース王等に追われ、後にアイギーナ島に遁れて、そこでアルテミス女神の庇護のもと、アパイアーの名で崇拝されたと古代のギリシアの詩人や歴史家が記している。また実際に、アイギーナ島には、アパイアー女神の神殿跡が確認されており、往古の姿が復元されている。

古代ギリシア・ローマの記録

リーベラーリスの記述

例えば、アントーニーヌス・リーベラーリス (Antoninus Liberalis) の『変身譚 (Metamorphoses)』の 40章 に次のように述べられている:

ブリトマルティスは、クレーテー島より遁走して後、アイギーナ島にて舟より跳び降り、小さな森へと逃げ込んだ。その地に、今日、アパイアー女神の神殿が建っている森である。ブリトマルティスはその後、視界から消え去り見えなくなったので、人々は彼女を、「姿を消した者」すなわちアパイアーと呼んでいる。

パウサニアースの記録

また、パウサニアースは『ギリシア誌』の2巻30章3節で、次のように述べている[1]

アイギーナ島のゼウスの山へと向かって進むと、アパイアー女神の聖域に達する。ピンダロスはこの女神を称える詩を作った。アポローンピュートーン退治の穢れを祓ったカルマーノールの孫娘カルメーが、ゼウスとの間に生んだのがブリトマルティスであるとクレーテーでは伝えられている。徒競走や狩りを好み、アルテミスと親しかったブリトマルティスは、ミーノースからの求愛を逃れるため、魚をとるための網(アペイメナ・ディクテュア)へと飛び込んだ。アルテミスによって女神となった彼女はアイギーナ島やクレーテー島に姿を現した。アイギーナ島ではアパイアー、クレーテー島ではディクテュンナ(Diktynna, 「網の女神」の意)として知られる。

女神ブリトマルティスとアパイアー女神

ブリトマルティスはアルテミスに庇護された乙女であり、アパイアーもまた、アルテミスに関係する森の女神であって、アイギーナの女神アパイアーが、クレーテー島の女神ブリトマルティスと同一視され、更にアルテミス女神そのものとも同一視されていた。

アパイアーの名は、ギリシア語として見ると、「薄暗い、幽かな光の、陰鬱な」を意味する形容詞「パイオス、φαιος」の女性形に、否定の接頭辞「 -α 」が付いて形成されたものと理解でき、「薄暗さ」が否定されるとき、「かすかな明るさ」の意味となる。また、動詞「φαινομαι~φαινω(光をもたらす・出現する)」の否定動詞の分詞よりの派生形としての「アパネース(αφανης)」のヴァリエーションとして、「姿を消した者・乙女(aphaia)」という意味になる。アパイアー女神は、またラプリアー(Λαφρια)としても知られた。

アパイアー女神は、クレーテーでは「甘美な乙女」にして、しかしアイギーナでは「姿を消す女神」であり、アルテミスと同一視された通り、森の処女神で、男を殺戮する恐ろしい女神でもあった。

アパイアー女神神殿

アパイアー女神神殿の彫刻群

アイギーナ島には古代のギリシアやローマの神話記述者や詩人が記した通り、アパイアー女神の聖域と神殿の遺跡が残っており、女神の像もまた発見されている。女神の神殿は、紀元前6世紀から紀元前5世紀のものであり、13.75m X 29m の壮麗な建造物であった。

この神殿跡で発見された、東西の彫刻切妻壁には、アテーナー女神を中心に、トロイア戦争の勇士たちが浮き彫りにされていた。この切妻壁は、1811年にドイツのミュンヘンに運ばれ、バイエルンルートヴィヒ1世がこれを購入し、修復して彫刻像に造りかえた。彫刻像群は、現在、ドイツのミュンヘンに所在するグリュプトテーク美術館に展示されている。神殿は、現在もその構造を残してアイギーナ島に残っている。

出典

  1. ^ パウサニアス『ギリシア記』(飯尾都人訳)、龍溪書舎、1991年、pp.154-155.

参考文献

  • 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店
  • Liddell & Scott『An Intermediate Greek-English Lexicon』Oxford
  • Liddell & Scott『Greek-English Lexicon』Oxford

外部リンク



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「アファイア神殿」の関連用語

アファイア神殿のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



アファイア神殿のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのアパイアー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS