「スマイラー少年の旅」シリーズ
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「スマイラー少年の旅」シリーズ(Smiler trilogy)は、イギリスの作家ヴィクター・カニングによる "The Runaways"(1971年)、"Flight of the grey goose"(1973年)、"The Painted Tent"(1975年)の三部作からなる少年小説。日本では1975年に中村妙子訳で新潮社(人と自然シリーズ)、のちに偕成社文庫で出版された。日本版のタイトルは順に『チーターの草原』『灰色雁の城』『隼のゆくえ』となる。
無実の罪で教護学校に収容された少年が脱走し、無実が証明されるまでの約1年間の逃亡生活の中で様々な人物との出会い、自然や動物たちとの触れ合いの中での成長を描いている。物語の舞台は三部作の作品ごとに「南イギリスのソールズベリー平原」「スコットランドの湖水地方の古城」「南西イギリスのデヴォンシャー」と三転し、各作品で鍵となる動物たちも「動物公園から逃げ出したチーター」「怪我をして群れからはぐれたハイイロガン」「幼鳥時から飼い慣らされて飛ぶ事を躊躇するハヤブサ」と変わって行く。
目次
あらすじ
チーターの草原(The Runaways)
無実の罪を着せられて教護学校に送られた15歳の「スマイラー」ことサミュエル・マイルズ少年は、脱走後一度は警察に捕まったものの、落雷によるトラブルに乗じて、再びパトカーから逃亡する。時を同じくしてロングリート動物公園から逃げ出した雌チーターのヤラも、2度目の落雷をきっかけに動物公園を脱走する。スマイラーはその後、妻の病気療養のため留守をしているコリングウッド少宅の納屋の2階に潜伏するが、ヤラもまた納屋の1階を一時的な潜伏先として選ぶ。コリングウッド家から拝借したラジオでヤラの境遇を知ったスマイラーは、自身と同じ立場にいる彼女に親近感を覚える。
スマイラーはヘアダイで髪を染め、特徴的なそばかすを「タンニング・ローション」で隠し、プロフィールを偽り、名前もジョニー・ピカリングと変えて、ミセス・レーキーとミス・ミリーの姉妹が経営するケネルで働くことになる。近くにあるソールズベリー平原内の演習場で、納屋からすぐ姿をくらましたヤラが生活、しかも脱走当時身重だった彼女が2頭の子供を産み、育てる様子を目撃した住まいらーは、以降ヤラの生態を観察するために草原に足を運ぶようになる。
やがて、妻の快癒に伴いコリングウッド少佐が帰宅したことで、納屋を隠れ家に出来なくなったスマイラーは、友人となったケネルの出入り業者ジョーの家に、格安の部屋代で転がり込む。しかし一方ヤラは、子育て途中で油断から牛の角によって深手を負い、巣の前で息絶える。それを発見したスマイラーはショックを受けるが、仔チーターをこのままにはしておけないと、ヤラを古井戸に水葬すると、自身が2頭を草原内で育てることを決意する。
一方、コリングウッド少佐は、自宅内にスマイラーが書き残していた自身宛ての置手紙から推理、調査し、手紙の主「おたずねもの」の正体は、ケネルで働いているジョニー・ピカリングことサミュエル・マイルズであると確信する。「サミュエル少年」の裁判の一部始終や、手紙の内容、拝借したものを一部を除いてきちんと返却していたりと、「おたずねもの」に対して好感を持っていた少佐だが、まず間違いなく無実とはいえ、このまま逃亡したままではそれを証明する事もままならない以上、警察に連絡して一旦教護学校に戻した上で自分達が彼の無実を証明するために尽力した方が良いと考え、ケネルのレーキー姉妹を夕食に呼んで、ジョニーことサミュエル少年の濡れ衣の一部始終[1]と、その無実を晴らすために警察を呼ぶことを提案する。
しかし、「ジョニー」を特に気に入っているミリーが話の途中で激昂、ほとんどはじめの頃から「ジョニー」の正体に気づきながら知らないふりをしていたミセス・レーキーの取り成しもあり、すぐにこの場で警察を呼ぶ予定が、一晩の猶予を与えることに変更された。ところが、スマイラーのガールフレンド的存在になっていた少女パットの母が、その日の夕食の手伝いに来ていて偶然話を聞き、帰宅してから夫に話し、それを耳にしたパットは深夜のうちにスマイラーに連絡する。
スマイラーは夢遊病者のふりをしたジョーから車のキーを受け取り、そのまま草原で2頭の仔チーターを乗せて、ロングリート動物公園のチーターの囲い地に行き、そこで2頭に別れを告げて逃亡する。草原でこのまま誰にも見つからずに2頭が成長して行くのは無理があり、自身がいずれまた逃亡することになるかも知れず、そうなれば2頭の世話も不可能になると考えたスマイラーは、最終的にはこうして動物公園に連れて行くのが2頭にとっては一番良い道だと結論を出していた。チーターの囲い地内に残されたアフラとリコの2頭だったが、群れのボスであるアポロは2頭を受け入れた。互いに知る術はないが、このアポロこそ2頭の父親だったのである。そしてその日の午後、スマイラーが乗り捨てたジョーのライトバンは警察によって発見された。
灰色雁の城(Flight of the grey goose)
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隼のゆくえ(The Painted Tent)
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日本語版
- チーターの草原―スマイラー少年の旅(偕成社文庫4037、ISBN 4038503704)
- 灰色雁の城―スマイラー少年の旅(偕成社文庫4038、ISBN 4038503801)
- 隼のゆくえ―スマイラー少年の旅(偕成社文庫4039、ISBN 4038503909)など
テレビドラマ
脚注
- ^ ある日の昼下がり、ブリストルの舗道を歩いていた一人の老婆が後ろから走ってきた少年に突き飛ばされ、ハンドバッグを奪われた。たまたま警官が遠くからこの現場を目撃して泥棒の後を追った。角を曲がったところで少し先を走っていく少年を見つけて捕まえると、盗まれたハンドバッグを持っていた。少年の名はサミュエル・マイルズ。彼は犯行を否認したが、以前からたびたび警察とかかわりを持ったことがあった(のどがかわいた時によその家の戸口から牛乳瓶を失敬したり、本屋から漫画本をちょろまかしたりなど)。サミュエルの言い分は、街角に立っていると知り合いだが、互いに嫌ってあっている少年ジョニー・ピカリングが、走り過ぎざま自分にバッグを投げてよこし、「かくしてくれ!」と怒鳴った。だから自分はジョニーを追いかけて、バッグを持ち主に返させようとしたのだと。しかし、少年裁判所の証言でピカリングの両親や隣人は、ジョニーはその日ずっと家にいたと主張(少佐はこれを、息子ジョニーを守るためにみんなで口裏を合わせたのだろうと推測する)。法廷はサミュエル・マイルズは罪を逃れるために苦し紛れのうそをついていると断定、有罪であり、教護学校に行くのが妥当だとされた。
- ^ 偕成社文庫の訳者あとがきによる。
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