JDAM 誘導システム

JDAM

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/04 17:29 UTC 版)

誘導システム

JDAMは、大きく尾部セクションとストレーキ部に分けられ、尾部セクション内に収められた誘導制御ユニットが慣性誘導システムGPSという2つの方式を併用して自らの位置と方向を割り出し、設定された着弾目標の座標との差を尾部の空力制御翼面を動かすことで縮め、爆弾を高い精度で誘導する。

誘導は、尾部の制御システムとGPSで補助される慣性航法システムによって行われるが、この航法システムは航空機のシステムから送られる位置と速度ベクトルの調整値によって初期化される。一度、航空機から投下されれば、JDAMは与えられた目標座標へ向けて自律的に操舵される。

目標座標は、離陸前に航空機へ読み込まれるか、離陸後も投下前であれば搭乗員の手動によって変更でき、さらに投下後にもデータリンクを通じた入力が可能になっている。2004年のリザルタント・フューリー演習では、B-52爆撃機が投下したJDAMを、E-8 JSTARSがリンクを介して誘導することで、洋上の移動目標への攻撃を成功させた[9]。リンクを介した目標変更は、母機に搭載された「ライトニング2」か「スナイパー照準ポッド英語版のような搭載照準装置からも行うことができる。

最も正確な方法では、JDAMシステムはGPS信号が有効な時に13m以下のCEPという最小の兵器正確性が得られるとされ、ボーイング社と米空軍はテストにおいては10m以下であったと報告している。GPS信号が妨害を受けるか受信できない場合でも、JDAMは最大100秒間の自由滑空するとして、30mのCEPをまだ達成できるとしている[10]

JDAMは、超低高度から超高高度までの、降下中・トス&ロフト(上昇中での投げ上げ投下)・水平飛行中に投下が行える。レーザー誘導される「ペイブウェイ」爆弾のような従来型の精密誘導キットでは、投下時には爆弾のシーカーが確実に目標を視野に捉えられるように狭い角度領域での飛行を要求されるが、JDAMではそういった制約は無く、目標とは異なった方向に飛行したままでも投下できる。

さらにJDAMは、1機の航空機が1回の飛行通過で複数の兵器を、1つまたは複数の目標に投下することを可能とし、また、信管の起爆タイミングも空中起爆から触発、貫通後の起爆という多様な信管設定が行える[10]。ただし、信管設定は離陸前に行っていなければならず、搭乗員は飛行中に変更することはできない。

LJDAM

アメリカ陸軍不朽の自由作戦イラクの自由作戦の間に得た経験から、1つの筐体にさらなる能力を加える必要が明らかとなり、進行中の計画でJDAMキットに精密終末誘導シーカーを備え付ける改良が行われることとなった[11]

レーザーJDAM(LJDAM)として知られるこの改良は、JDAM爆弾の先端部にレーザー誘導セミアクティブ・レーザー・ホーミング、SALH)システムを加え、JDAMに移動目標への攻撃能力を与えるものである。レーザーシーカーは、米ボーイング社では精密レーザー誘導セット(Precision Laser Guidance Set, PLGS)と呼ばれ、今ではDSU-38/Bで知られる先端のレーザーシーカー部分と、後部のテールキットと先端のDSU-38/Bを弾体の下で固縛し固定するためのワイヤーハーネス部から構成される。2004年会計年度の内にボーイング社と米空軍は、JDAMのレーザー誘導能力のテストを開始し、そのテストにおいてシステムが移動目標を追跡し、破壊する能力があることを明らかにしている[12]。 この2重誘導システムは、GPS/INS単独での運用能力も残しているので、レーザー誘導が働かなくてもこれまでのJDAMと同様の精度を持っている。地上部隊が目標にレーザーを当てるだけでGPS機能と連動して目標座標が測定され、そのデジタル情報は、無線で空中のJDAM搭載攻撃機に送信されると人手を介さずにJDAM内に設定されるシステムも開発された[13]

2007年6月11日にボーイング社は、2009年6月までに600個のレーザーシーカー(米空軍に400個、米海軍に200個)を生産する契約を2,800万米ドルで獲得したと発表した[14]

ボーイング社によれば、ネバダ州ネリス空軍基地でテストを行い、空軍のF-16戦闘機F-15E戦闘爆撃機が投下した12基の500ポンドLJDAM爆弾は、高速で移動する目標を破壊することに成功したとされた。機体に搭載された照準装置を使い、投下機自身がレーザー照射を行い、投下した爆弾が目標に命中するまで自ら誘導した。さらに、LJDAMキットでは、ボーイング社はJDAMの耐ジャミングシステムの開発を米海軍と契約し、テストを行っており、2007年には開発が終了して2008年には出荷が始まる予定である[15]。 このシステムは、統合GPS耐妨害システム(Integrated GPS Anti-Jam System, IGAS)として知られる。ボーイング社は、2008年9月15日B-52H戦略爆撃機でLJDAMを搭載してデモフライトが行われたと報じた[16]。2008年8月12日イラクで実戦投入された。

2008年7月24日には、ドイツがボーイング社とLJDAMの最初の海外顧客となる契約を締結した。ドイツ空軍への引き渡しは2009年中頃から始まる予定である。この注文には、2009年にキット数を追加する選択肢も含まれている[17]


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  1. ^ Defense Industry Daily staff (2012年3月12日). “JDAM: A GPS-INS Add-on Adds Accuracy to Airstrikes” (英語). 2012年5月10日閲覧。
  2. ^ a b アメリカ空軍. “Official Site of the U.S. Air Force - Fact Sheet (Printable) : JOINT DIRECT ATTACK MUNITION GBU- 31/32/38” (英語). 2013年1月24日閲覧。
  3. ^ JDAM continues to be warfighter's weapon of choice”. 2012年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月27日閲覧。
  4. ^ JDAM: The Kosovo Experience and DPAS, The Boeing Company, Charles H. Davis, (2000年4月19日), http://guidebook.dcma.mil/38/dpas/12DavisPres.pdf 2007年9月1日閲覧。 
  5. ^ “U.S. Air Force B-2 Bomber Drops 80 JDAMS in Historic Test” (プレスリリース), The Boeing Company, (2003年9月17日), http://www.boeing.com/defense-space/missiles/jdam/news/2003/q3/nr_030917o.html 2007年9月2日閲覧。 
  6. ^ “Acquisition Reform-Inside The Silver Bullet”, Acquisition Review Journal IX, no. 2 (Fall 2002): 312-322, (2002), http://www.dau.mil/pubs/arq/2002arq/MyersFL02.pdf 2007年9月1日閲覧。 
  7. ^ Killing Your Own: The Problem of Friendly Fire During the Afghan Campaign”. 2007年7月27日閲覧。
  8. ^ uni-bielefeld.de Why-Because analysis (p. 9).
  9. ^ Tech. Sgt. Tonya Keebaugh (2004年12月14日). “Resultant Fury successful thanks to ‘test’ Airmen” (英語). 2013年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年1月27日閲覧。
  10. ^ a b USAF Factsheet: JOINT DIRECT ATTACK MUNITIONS”. 2003年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月27日閲覧。
  11. ^ Dual Mode Guided Bomb”. 2007年7月27日閲覧。
  12. ^ Boeing Scores Direct Hit in Laser JDAM Moving Target Test”. 2007年7月27日閲覧。
  13. ^ 江畑謙介著 『情報と戦争』 NTT出版 2006年4月6日初版第1刷発行 ISBN 4-7571-0179-1 26頁
  14. ^ “Boeing Awarded Laser JDAM Contract” (プレスリリース), The Boeing Company, (2007年6月11日), http://www.boeing.com/defense-space/missiles/jdam/news/2007/q2/070611c_nr.html 2007年9月2日閲覧。 
  15. ^ “Boeing Completes JDAM Anti-Jamming Developmental Flight Test Program” (プレスリリース), The Boeing Company, (2007年6月18日), http://www.boeing.com/defense-space/missiles/jdam/news/2007/q2/070618a_nr.html 2007年9月2日閲覧。 
  16. ^ Boeing Press Release, September 15, 2008
  17. ^ [1], Boeing.com - Germany becomes the first international customer of LDJAM
  18. ^ http://www.finance.hq.navy.mil/fmb/06pres/proc/PANMC_Book.pdf DEPARTMENT OF THE NAVY FISCAL YEAR (FY) 2006/FY 2007 BUDGET ESTIMATES
  19. ^ boeing.com Boeing JDAM Wins Australian Competition”. 2007年7月27日閲覧。
  20. ^ First International JDAM Sale: Boeing to Integrate Weapon on Israeli Aircraft”. 2007年7月27日閲覧。
  21. ^ global security.org”. 2007年7月27日閲覧。
  22. ^ 航空ファン』 2008年12月号 P118
  23. ^ Dutch secretary of defense details plan for purchase of JDAM's”. 2007年7月27日閲覧。
  24. ^ Norway Signs Contract for Boeing JDAM”. 2007年7月27日閲覧。
  25. ^ Gates says Washington to sell smart bombs to Saudi Arabia”. 2007年7月27日閲覧。
  26. ^ FMS: Third Phase of Finnish F/A-18 MLU”. 2007年7月27日閲覧。
  27. ^ FMS: Greece - F-16C/D Munitions”. 2007年7月27日閲覧。


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