線文字B 線文字Bの概要

線文字B

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/13 17:15 UTC 版)

線文字B
類型: 音節文字 および表意文字
言語: ミケーネ・ギリシャ語(古代ギリシア語の古形)
時期: 紀元前1450年から紀元前1375年
親の文字体系:
おそらく線文字A
  • 線文字B
Unicode範囲: U+10000–U+1007F(音節文字)
U+10080–U+100FF(表意文字)
ISO 15924 コード: Linb
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
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アーサー・エヴァンズによって発見された、線文字Bが刻まれた粘土板
粘土板

主に粘土板の上に左から右に書かれ、音節文字と「表意文字」と呼ばれるが実際は文字ではない絵画的な記号、および数字と単位記号から構成される。

この文字によって表されるギリシア語をミケーネ・ギリシャ語と称する。

概要

線文字Bを記した粘土板は、ギリシア本土のピュロスミケーネテーバイティリンス、およびクレタ島のクノッソスハニアから発見されている[2]。線文字Bは、書簡や論文などには使用されず、また、文字が書き留められた粘土板は、人為的に焼成されていないことから、単純に記録を伝えるためだけに用いられたものと考えられている。文学はなく、人名と職業が書かれた帳簿、物品目録、宮廷内の単なる事柄が記録されていた[3]

多くの場合、粘土板の上に横に罫線を引き、その上に左から右へ字が書かれる。

主要な部分は1つの母音(V)、または子音と母音(CV)を表す音節文字であり、59文字から構成される[4]。このほかにおそらく二重母音や気音、あるいは子音結合をふくむ音節を表したと見られる16の文字がある[5]。そのほかに11の文字があるが、使用頻度が少ないために音価がわかっていない[5]。単語を区切るための縦棒があり、単語はこの記号、またはスペース、または文字の高さの変更によって区切られる[4]

線文字Bはギリシア語の有声・無声・帯気音の区別のうち、t と d 以外は区別されない。r と l の区別もなく、母音の長短も区別されない。子音結合は前後の母音を補う場合もあるが、一部の子音は書かれない。語末の子音(s,r,n)も省略される[6]

「表意文字」と呼ばれる記号はミケーネ・ギリシア人の経済にとって重要だった資産を絵にしたものである[5]。その総数ははっきりせず、今後も増える可能性がある。ほかに数字がある。

系統

線文字Bより古い線文字Aは未解読だが、線文字Bと同様に音節文字と表意文字から構成され、その形は大部分が線文字Bと共通している[7]

紀元前1千年紀キプロス島で用いられたキュプロス文字も音節文字であり、多くの点で線文字Bに似ている。線文字Bとキュプロス文字の間には形と読みの両方が一致する文字がいくつかある[8]


  1. ^ Bennett (1996) p.125
  2. ^ Bennett (1996) p.129
  3. ^ アンドルー・ロビンソン著 片山陽子訳『線文字Bを解読した男-マイケル・ヴェントリスの生涯』創元社 2005年、191-192頁
  4. ^ a b Bennett (1996) p.126
  5. ^ a b c Bennett (1996) p.127
  6. ^ 高津(1964) pp.269-270
  7. ^ Bennett (1996) p.132
  8. ^ 松本(1981) pp.81-82
  9. ^ a b 高津(1964) p.242-243
  10. ^ 高津(1964) p.250-251
  11. ^ 高津(1964) pp.256-257
  12. ^ 高津(1964) pp.261-263
  13. ^ Fox (2013) pp.97-98
  14. ^ 高津(1964) pp.251-256
  15. ^ Fox (2013) p.224-225
  16. ^ Fox (2013) pp.228-229
  17. ^ Fox (2013) pp.231-240
  18. ^ 高津(1964) pp.264-265
  19. ^ Fox (2013) pp.247-248
  20. ^ Fox (2013) pp.249-250
  21. ^ 高津(1964) pp.271-275
  22. ^ 高津(1964) p.275
  23. ^ Fox (2013) p.249
  24. ^ 高津(1964) pp.276-280
  25. ^ Fox (2013) pp.251-255
  26. ^ Unicode 4.0.0, Unicode, Inc, (2003), http://www.unicode.org/versions/Unicode4.0.0/ 


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