白雪姫 (1937年の映画)
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概要
グリム兄弟による童話『白雪姫』が原作。 ディズニーの長編映画第1作目であり、歴史に残る名作にするべく、莫大な労力と金額が費やされ、4年の歳月と170万ドル(当時の金額)の巨費を投じて制作された大作である。世界初のカラー長編でありながらフルアニメであり、作成されたセル画の枚数は25万枚にも上る(白雪姫から遥か後の時代に緻密な描画で有名となったスタジオジブリ作品でも、『崖の上のポニョ』の17万枚が最多である)。結果として質感すらも感じさせるキャラクターの動きが実現されている。まだアニメーションといえば実写映画の合間に子供向けに上映される短編を指していた時代であり、成功を危ぶむ声も多く、「ディズニーの道楽」と言われていたが、ふたを開けてみれば6,100万ドルの収益を上げる桁外れの大ヒットを記録した。
挿入歌の『いつか王子様が』(Someday My Prince Will Come)は、ジャズやポピュラー音楽のスタンダードナンバーとして多くのアーティストによってカバーされている。また、小人のマーチ『ハイ・ホー』(Heigh-Ho)も有名である。
あらすじ
むかしある城に白雪姫という美しい王女が住んでいた。幼い頃に両親を亡くしていた白雪姫は継母である女王とともに暮らしていた。しかし女王は大変恐ろしい魔女で、白雪姫を下働きのように扱っていた。そして魔法の鏡に「この世で一番美しい女は誰?」と聞くのが日課になっており、魔法の鏡が女王だと答えるのを聞いて満足していた。
ある日、いつものように白雪姫が働いていると、偶然通りかかった王子と出会い恋に落ちる。同じ日に、女王がいつものように魔法の鏡に声を掛けると、魔法の鏡は「世界で一番美しいのは白雪姫です」と答えてしまう。怒り心頭の女王は、手下の狩人に白雪姫を殺し彼女の心臓を持ち帰るよう命令する。哀れに思った狩人は彼女に女王の陰謀を教えて森の奥へと逃し、代わりに豚の心臓を持ち帰って女王を欺く。
一方の白雪姫は、森で迷った末に動物達に導かれて小さな家を発見し、中が汚れているのを見て掃除を始める。その家は七人の小人たちが住む家であった。やがて鉱山での仕事から戻って来た小人たちに挨拶をすると、小人たちは白雪姫を歓迎して家事全般を引き受けることを条件に匿い、白雪姫は小人たちと共に楽しい一夜を過ごす。
一方で、白雪姫が生きていることを知った女王は、白雪姫を自ら手にかけることを決心。魔法の薬を飲んで醜い老婆に変身し、毒リンゴを作って小人たちの家に向かう。その際、「毒リンゴの呪いは恋人の初めてのキスで解ける」ことを知ったが、「死んだと思い込んだ小人たちが生きたまま埋めるだろう」と本気にしなかった。
翌朝。小人たちが仕事に出た後、白雪姫は彼らに留守の間は誰も入れるなと忠告を受けていたが、家にやってきた怪しい物売りの老婆を家に招いてしまう。その老婆の正体は、白雪姫が生きていることを知り今度こそ亡き物にしようと魔法で化けた女王だった。異変を察知した動物たちの知らせで、白雪姫に危機が迫っていることを知った小人たちはすぐさま家に引き返し、老婆に化けた女王を追撃。崖に追い詰められた女王は巨石を落として小人たちを殺そうとするも、突然の落雷によって谷底へと落ちる。
しかし時既に遅く、白雪姫は女王が与えた毒リンゴを口にし息絶えていた。物言わぬ白雪姫の前で涙にくれる小人たちは、彼女の美しさを惜しみ、埋葬することなくガラスの柩に安置して片時も傍を離れようとしなかった。
時は流れて翌年の春、白雪姫の恋人で、彼女の行方を探し続けていた王子が白雪姫の柩を見つけ出し、静かにくちづけを交わす。すると、息絶えたはずの白雪姫が息を吹き返した。女王がリンゴに浸した毒は、口にしたものを殺すのではなく永遠の眠りに落とすというものであり、真実の愛のキスを受けて毒の魔法が打ち消されたのだった。
平和の訪れと王子との再会の喜びを胸に、小人たちに別れを告げた白雪姫は王子と共に旅立ち、王子の国で末永く幸せに暮らすのだった。
キャラクター
- 白雪姫(Snow White)
- 本作の主人公。14歳。とある国の王女で、とても美しく可憐な容姿と優しい心を持った美少女。
- その美貌のため、継母である女王の怒りを買い殺害を企てられるが、手下の狩人の助けもあり森の奥に逃れる。女王から召使い同然の扱いを受けていたため王女でありながら家事全般をこなしたり、小人達に食事前の手洗いやマナーを教えていたりと家庭的な一面も身についている。
- ディズニープリンセスの1人。
- 王子(The Prince)
- 白雪姫を救う王子。女王の城で歌っていた彼女を見て一目惚れをし、ずっと行方を探していた。ラストでは死んでいた白雪姫を発見し、彼女に口づけをして死の眠りから救い、自分の城に連れて行った。
- 女王(The Evil Queen)
- 本作のディズニー・ヴィランズで、白雪姫の継母。自惚れ屋で自分の美貌を世界一と思っており、それが他人に脅かされることを断じて許そうとしない高慢かつ残酷な性格の持ち主。
- 普段はかなり冷静な性格で、感情を表に出すことはないが、老婆になった後は感情が豊かになり、死体を蹴飛ばすなど残虐な面が強調される。一方、毒リンゴの毒は「恋人とのキスで解ける」ことを知っていながら「小人たちが生きたまま埋めるだろう」と言うなど、詰めが甘い部分もある。実は魔女でもある。
- 自分よりも美しい美貌の持ち主である白雪姫を殺害するため配下の狩人に命令するも、裏切られて欺かれたため自らの手で殺害を企て、自らみすぼらしく醜い物売りの老婆に変身しやって来る。その時小鳥たちに正体を感づかれてしまうも、襲われた事を逆手に取りわざと具合が悪くなったフリをしてまんまと家に入り込み、毒りんごで白雪姫を亡き者にする。直後に駆け付けた小人たちに追い詰められ、巨石を落として反撃しようとした瞬間に落雷で足元の崖が崩れ、醜い老婆の姿のまま転落死した。
- 7人の小人たち(The Seven Dwarfs)
- 森の奥の鉱山でダイアモンド掘りをしている小人(ドワーフ)たち。それぞれ性格に基づいて名前がついている。また、この順番で毎日仕事場への行き帰りをする。
- ドック/先生(Doc)
- 温和な性格で先生のように物知りなメガネをかけた小人。7人のリーダー的存在。少しでも慌てると言葉を言い間違えたりつっかえたりしてしまう。
- グランピー/おこりんぼ(Grumpy)
- 現実的で、感情的。いつも険しい顔をしている。かなりのツンデレで、当初はよそ者で女性である白雪姫に反発していたが、彼女にキスされたことがきっかけで好意を抱くようになり、危険が迫っていると知ると真っ先に飛び出すなど根は優しい。白雪姫が永遠の眠りについた際は悲しみをこらえて涙を流し、目覚めた彼女と別れる際に投げキッスを送った。また白雪姫も小人達の誰よりも彼と仲良くしようとする場面があった。
- ハッピー/ごきげん(Happy)
- いつもにこにこしている元気いっぱいのムードメーカー。七人のなかで唯一、白い眉毛をしている。
- スリーピー/ねぼすけ(Sleepy)
- いつも寝たそうな顔をしている。のんびりした性格。
- バッシュフル/てれすけ(Bashful)
- 照れ屋で、誰を見てもすぐに真っ赤になるほど純情。
- スニージー/くしゃみ(Sneezy)
- 花粉が苦手でアレルギーを持っているらしく、周囲の物が吹き飛ぶほどのくしゃみを連発する。本人や周囲の悩みの種でもある。
- ドーピー/おとぼけ(Dopey)
- なぜかしゃべらない。白雪姫の事が大好き。小人の中では唯一髭が無く、見た目も振る舞いも子供のようなあどけなさである。ごきげん曰くどもり屋らしい。白雪姫に何度も口でキスしようとするなどおませな部分もある。
- ウォルト・ディズニー自身によると、ドーピーが喋らない理由は、自分が「喋ろうと試みたこともないから」である(実際には、ドーピーのイメージにぴったりの声優が見つからなかったためといわれ、叫び声のみをエディ・コリンズが担当した[2])。また、サッカーブラジル代表チームの監督であるドゥンガの名前は彼にちなんでいる。
- 魔法の鏡(The Magic Mirror)
- 物知りの鏡。問いかけに対しては常に実直に答えるため、白雪姫を危機に陥れてしまう。
- ハウス・オブ・マウスでは店に飾られており、ミッキー達が悩みの相談をすることがあるが、融通が利かないことが多く、時には相談内容のバカバカしさに皮肉をぼやく事も。
- ミッキーマウスのワンダフルワールドではミッキーの大ファンで原作と異なり、「この世で一番美しいのは白雪姫ではなく、ミッキーだ」と言い、女王に殴られたり、ミッキーマウスマーチを歌うなど他の作品では見せなかったはっちゃけな一面を見せた。
- 狩人(Humbert/The Huntsman)
- 女王の手下として仕えている。女王の命令に従って白雪姫を森に連れていってナイフで殺害しようとするが彼女の美しさと純粋さで手を下せず、女王に殺害を依頼されたことを告白した上で彼女に森の奥に逃げて戻らないようにと念を押し、豚の心臓を彼女のものと偽って女王に献上することでごまかした。
注釈
出典
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)81頁
- ^ 火の鳥文庫『ディズニー』
- ^ 1959年公開時の「ピノキオ」映画パンフレット
- ^ 1980年リバイバル公開時の映画チラシ
- ^ 1958年公開時の「白雪姫」映画パンフレット
- ^ ウォルト・ディズニー映画「白雪姫」日本語版オリジナル・サウンドトラック『白雪姫~歌と音楽』/ビクター音楽産業 JBX-2003 (1980年)
- ^ 横田正夫、小出正志、池田宏『アニメーションの辞典』p.61、朝倉書店、2012年。
- ^ 「白雪姫は1万5千円」『朝日新聞』昭和26年10月6日
- ^ 世相風俗観察会『増補新版 現代世相風俗史年表 昭和20年(1945)-平成20年(2008)』河出書房新社、2003年11月7日、38頁。ISBN 9784309225043。
- ^ 公開時のチラシより
- ^ (英語) Catalog of Copyright Entries. Library of Congress. (1965)
- ^ “Animation - AFI: 10 Top 10” (英語). AFI.com. 2014年10月27日閲覧。
- ^ a b c d e 「映画・トピック・ジャーナル 『ディズニー映画日本市場に復帰』」『キネマ旬報』1980年1月上号、200頁。
- ^ a b c “東宝、東映、ディズニー映画を肩代わり配給―55年春以降、年間5本公開予定。”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社): p. 10. (1979年11月20日)
- ^ a b c d e “東宝・東映W・D映画配給 三年ぶり白雪姫他五作品”. 週刊映画ニュース (全国映画館新聞社): p. 1. (1979年11月24日)
- ^ 「ブエナ・ビスタ 『アラジン』220万本 『白雪姫』は180万本」『日経産業新聞』1995年1月23日付、7面。
- ^ 日経BP社技術研究部『進化するアニメ・ビジネス―世界に羽ばたく日本のアニメとキャラクター』日経BP社、2000年、42頁。ISBN 4-8222-2554-2(日本での出荷本数のみ記載)
- ^ “白雪姫|ブルーレイ・DVD・デジタル配信|ディズニー公式”. ディズニー公式. 2019年2月6日閲覧。
- ^ Rubin, Rebecca. “Disney Removes 'Star Wars' Spinoff 'Rogue Squadron' From Release Calendar, Sets Dates for 'Snow White,' 'Inside Out 2' and 'Lion King' Sequel” (英語). Variety. 2022年9月15日閲覧。
- ^ “ディズニー実写版『白雪姫』2024年3月に全米公開決定”. シネマトゥデイ. (2022年9月16日) 2022年9月23日閲覧。
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