棘皮動物 概説

棘皮動物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/06 01:28 UTC 版)

概説

棘皮動物に含まれる動物は、動物界全体から見ても特異な構造を持つ。体は五放射相称で、その軸を上下方向に据えたものが多く、そのため進行方向を決めるような前後の体軸は存在しない。例外はナマコで、口が前であり、明確な腹背があるものも多いが、これも五放射相称から二次的に導かれたことは明確である。また、頭部が存在せず、そこに存在するような分化した感覚器や中枢神経の分化も見られない。

体内では非常に広大な真体腔があるが、血管系の退化傾向が激しく、また独立した排出系も見られない。それに代わって発達しているのが水管系という構造で、これは体外から海水を取り込んで体内を流すというものである。これは幼生の体腔から発達したもので、体内に伸びて各部から管足という管を体外に伸ばす。これは運動や摂食に関わると同時に、その表面でガス交換や排出も行っている。

棘皮動物のもう一つの特徴は、体が殻や棘で覆われることで、それらは多数の部分に分かれ、運動が可能となっている。それらの一部は体表に露出するが、かなりの部分が皮膚の下にあり、内骨格を構成する。一見柔軟に見えるナマコでは、それらは細かな骨片として皮膚内に分散している。

他方で、その発生の初期は後口動物の標準的なものであり、多くの点から我々を含む脊椎動物と系統的に遠いものではないことが窺える。上記のような特殊性の一つは、この群が左右相称動物から固着性を経て、そこで放射相称の体制に変化し、現在のような体制を持つに至ったためと考えられる。

外部形態

棘皮動物各群の体制

基本的には五放射相称の形を取る。実際にはヒトデ類やクモヒトデでは成長するに連れて軸を増加させる例、分裂によって減少する例もある。この五つの対称軸は主に水管系の配置によって決まっている。五本の放射水管からは体外に管足が並び、この列のある位置を歩帯、それらの間を間歩帯という。棘皮動物は小さな骨片の集まった構造を持ち、その一部は体外にあって鱗や棘として配置するが、それらの配置もこの軸と密接に関連する。

口は体の一端にあり、これが歩帯の配置の中心となる。現生の多くの群では口を下にするが、ウミユリ類ではこれを上に向け、ナマコ類では前方を向く。肛門は口の反対側が多いが、ウミユリ類では同じ側に開く。

ウニとナマコ以外のものでは歩帯の伸びる五つの方向に胴体から細長く突出する部分が区別され、これを腕という。腕は胴体部からやや自由に動くことが出来て、運動や摂食の際に役立つ。これらの類では歩帯は胴体から腕の口側面にだけ伸びる。腕は二叉分枝するものもある。ウニ、ナマコでは腕はなく、歩帯は胴体に沿って口から肛門まで伸びる。

ナマコ以外の類では体軸がごく短くなっており、頭部として見なせる構造は存在しない。また、感覚器官は目立つものではなく、その配置も全体に広がっている。体には進行方向を示すものはない。ナマコでは口側が進行方向と見なせる例が多く、また全身の形も左右相称的であるが、やはり頭部は区別できない。

内部構造

体壁には骨片が埋もれている。骨片はウニでは互いにつながって殻を構成し、それ以外のものでは関節的につながって柔軟な動きを可能にする。ナマコではさらに細かくなって分散的である。また、ウニでは口の部分によく発達した骨質の顎がある。

体内は広大な真体腔があるのが普通で、その中を消化管がとぐろを巻く。消化管は比較的単純なのが普通。


  1. ^ a b c d e f 藤田敏彦『動物の系統分類と進化』裳華房〈新・生命科学シリーズ〉、2010年4月28日。ISBN 978-4785358426  pp.169-172.






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