婚外子国籍訴訟 婚外子国籍訴訟の概要

婚外子国籍訴訟

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 07:26 UTC 版)

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最高裁判所判例
事件名 (A)退去強制令書発付処分取消等請求事件、(B)国籍確認請求事件
事件番号 (A)平成18年(行ツ)第135号、(B)平成19年(行ツ)第164号
2008年(平成20年)6月4日
判例集 (A)民集第62巻6号1367頁、(B)集民第228号101頁
裁判要旨
  1. 国籍法3条1項は、日本人の父と外国人の母から生まれた子で生後に認知をうけた場合のみでは日本国籍の取得を認めず、父母が婚姻して子が嫡出子たる身分を取得した場合に届出により取得できるのと比較して、国籍取得に関し著しく不合理な差別が生じており、憲法14条1項に違反する。
  2. 日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し、父から出生後に認知された子は、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したという部分を除いた国籍法3条1項所定の要件が満たされるときは、同項に基づいて日本国籍を取得することが認められる。
大法廷
裁判長 島田仁郎
陪席裁判官 横尾和子 藤田宙靖 甲斐中辰夫 泉徳治 才口千晴 津野修 今井功 中川了滋 堀籠幸男 古田佑紀 那須弘平 涌井紀夫 田原睦夫 近藤崇晴
意見
多数意見 島田仁郎 泉徳治 才口千晴 今井功 中川了滋 那須弘平 涌井紀夫 田原睦夫 近藤崇晴
意見 藤田宙靖
反対意見 横尾和子 津野修 古田佑紀(以上3名両方に反対) 甲斐中辰夫 堀籠幸男(以上2名2.に反対)
参照法条
日本国憲法第14条第81条、国籍法3条1項
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最高裁判所は、国籍法3条1項の規定は、日本国憲法第14条1項に違反すると判断し、現憲法下8例目の法令違憲判決となった。

訴訟経過

訴訟としては、異なる原告から提起された退去強制令書発付処分取消等請求事件(以下(A)事件という。)と国籍確認請求事件(以下(B)事件という。)の二つの事件であるが、最高裁で同日に同様の内容の判決が下された。

第一審東京地裁は、(A)事件(平成17年4月13日判決[1])、(B)事件(平成18年3月29日判決[2])ともに、国籍法3条1項のうち準正要件を定める部分のみを違憲無効として、原告らが日本国籍を有することを確認した。

これに対し、控訴審東京高裁は、(A)事件(平成18年2月28日判決[3])、(B)事件(平成19年2月27日判決[4])とも、国籍をいかなる者に認めるかは、立法府権限であり、裁判所が国籍法を違憲として規定に該当しない者に国籍を確認することは司法が立法行為をすることになり許されないとして、憲法判断をせずに、原告らの逆転敗訴を言い渡した。

原告らが、最高裁判所に上告したところ、2007年9月5日、事件が大法廷に回付されたことから、国籍法3条1項に対して何らかの憲法判断を下すのではないかと予想されていた。

2008年6月4日、最高裁は(A)事件[5]、(B)事件[6]ともに原判決を破棄し、本件区別については、これを生じさせた立法目的自体に合理的な根拠は認められるものの、立法目的との間における合理的関連性は、我が国の内外における社会的環境の変化によって失われており、今日において、国籍法3条1項の規定は、日本国籍の取得につき合理性を欠いた過剰な要件を課し、日本国民である父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子に対して、日本国籍の取得において著しく不利益な差別的取扱いを生じさせているといわざるを得ないとして、上告人(原告)の訴えを認めた。

主な争点

  1. 国籍法3条1項は憲法14条に違反しないか。
  2. 仮に、国籍法3条1項が違憲だとした場合、どの範囲で違憲とすることができるか。この場合、法律の規定がないのに、原告の日本国籍を裁判所が確認することは可能か。あるいは、一部規定違憲や合憲補充解釈などをすることができるか。






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