卵巣腫瘍
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/21 16:01 UTC 版)
診断
卵巣腫瘍はスクリーニング法が存在しないため、何らかの医療機関のフォローアップ中に偶然発見されることが多い。自覚症状が乏しいため、進行癌になった状態で発見されることも極めて多い。経腟超音波によって卵巣腫瘍と確認した後に、MRIにて局所進展評価、CTにて転移の評価、腫瘍マーカーにて組織型の評価を行う。良性腫瘍であれば妊娠可能な卵巣腫瘍核出術を選択することができる。しかし、悪性を否定できない場合は、必ず開腹手術が行われる。卵巣癌の進行期決定、および性質の決定はあくまで病理診断となるからである。以下にFIGOの進行期分類に基づく簡単な分類を示す。
病期(ステージ)
日産婦2014、FIGO2014[6] 国立がん研究センター[7] より引用
I 期 卵巣あるいは卵管内限局発育 | |
---|---|
IA期 | 腫瘍が片側の卵巣(被膜破綻※1がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤が認められないもの。腹水または洗浄液※2の細胞診にて悪性細胞の認められないもの |
IB期 | 腫瘍が両側の卵巣(被膜破綻がない)あるいは卵管に限局し、被膜表面への浸潤が認められないもの。腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められないもの |
IC期 | 腫瘍が片側または両側の卵巣あるいは卵管に限局するが、以下のいずれかが認められるもの |
IC1期 | 手術操作による被膜破綻 |
IC2期 | 自然被膜破綻あるいは被膜表面への浸潤 |
IC3期 | 腹水または腹腔洗浄細胞診に悪性細胞が認められるもの |
II期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、さらに骨盤内(小骨盤腔)への進展を認めるもの、あるいは原発性腹膜がん | |
IIA期 | 進展 ならびに/あるいは 転移が子宮 ならびに/あるいは 卵管 ならびに/あるいは 卵巣に及ぶもの |
IIB期 | 他の骨盤部腹腔内臓器に進展するもの |
III期:腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し、あるいは原発性腹膜がんで、細胞学的あるいは組織学的に確認された骨盤外の腹膜播種(はしゅ) ならびに/あるいは 後腹膜リンパ節転移を認めるもの | |
IIIA1期 | 後腹膜リンパ節転移陽性のみを認めるもの(細胞学的あるいは組織学的に確認) |
IIIA1(i)期 | 転移巣最大径10mm以下 |
IIIA1(ii)期 | 転移巣最大径10mmを超える |
IIIA2期 | 後腹膜リンパ節転移の有無関わらず、骨盤外に顕微鏡的播種を認めるもの |
IIIB期 | 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cm以下の腹腔内播種を認めるもの |
IIIC期 | 後腹膜リンパ節転移の有無に関わらず、最大径2cmを超える腹腔内播種を認めるもの(実質転移を伴わない肝臓および脾臓の被膜への進展を含む) |
IV期:腹膜播種を除く遠隔転移 | |
IVA期 | 胸水中に悪性細胞を認める |
IVB期 | 実質転移ならびに腹腔外臓器(鼠径リンパ節ならびに腹腔外リンパ節を含む)に転移を認めるもの |
※1:卵巣の表層をおおう膜が破れること。
※2:腹腔内に生理的食塩水を注入した後、腹腔内貯留液とともに回収したもの。
- ^ “WHO Disease and injury country estimates”. World Health Organization (2009年). 2009年11月11日閲覧。
- ^ W. C. ウィレット、M. J. スタンファー 著「ヘルシーな食事の新しい常識」、日経サイエンス編集部 編 『エイジング研究の最前線 心とからだの健康』〈別冊日経サイエンス 147〉日経サイエンス、2004年11月11日、116-125頁。ISBN 978-4-532-51147-0 。 Willett, Walter C.; Stampfer, Meir J. (2006). sp “Rebuilding the Food Pyramid”. Scientific American 16 (4): 12–21. doi:10.1038/scientificamerican1206-12sp . 該当個所は日本語123頁。
- ^ Salamon, Maureen (2023年1月1日). “A lethal cancer’s long reach” (英語). Harvard Health. 2022年12月21日閲覧。
- ^ 卵巣がん 基礎知識 国立がん研究センター
- ^ a b がんの知識 卵巣がん 初期症状 愛知県がんセンター中央病院
- ^ 卵巣癌、卵管癌、腹膜癌手術進行期分類への改訂についてのお知らせ (PDF) 日本産科婦人科学会 平成27年3月20日
- ^ a b 卵巣がん 治療 国立がん研究センター「卵巣がんの手術進行期分類(日産婦2014、FIGO2014)」
- ^ 山門實, 山本浩史, 新原温子 ほか、「【原著】新規がん検診としてのアミノインデックス®がんリスクスクリーニングの有用性に関する検討 第二報」 2014年 28巻 5号 p.763-767, doi:10.11320/ningendock.28.763
- ^ 安東敏彦、「血漿中アミノ酸プロファイルによるがんリスクスクリーニング(AICS)法」 日本分子腫瘍マーカー研究会誌 2014年 29巻 p.13, doi:10.11241/jsmtmr.29.13
- ^ 鈴木永純, 山田恭輔, 小林重光 ほか、「卵巣腫瘍良悪性診断においてCA19-9, SLXは真に有用か? -CA125との同時測定による科学的検証-」 日本分子腫瘍マーカー研究会誌 1999年 14巻 p.53, doi:10.11241/jsmtmr.14.53
- ^ リンパ節郭清は卵巣癌の生存期間を延長しない 日経メディカル 記事:2019年3月22日
- ^ “卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版” (日本語). 公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会. 2021年11月19日閲覧。
- ^ “卵巣がん新薬、異例のスピード承認 アストラゼネカ” (日本語). 日本経済新聞 電子版 2018年12月3日閲覧。
固有名詞の分類
- 卵巣腫瘍のページへのリンク