労働審判 労働審判委員会

労働審判

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/27 10:32 UTC 版)

労働審判委員会

労働審判では、労働審判官1人及び労働審判員2人で組織する労働審判委員会が、事案の審理・判断をする(労働審判法7条)。

労働審判官は、地方裁判所が当該地方裁判所の裁判官の中から指定する(同法8条)。指定の方法は、各地方裁判所の内規である事務分配規程に定められている。東京地方裁判所や大阪地方裁判所のような特大規模庁では、労働事件専門部が置かれており、その他の大規模庁でも労働事件集中部が置かれていて、その部所属の裁判官が労働審判官として指定される。

労働審判員候補者は、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者で原則として68歳未満のものの中から、最高裁判所によって任命され(同法9条2項、3項、労働審判員規則1条)、その所属する地方裁判所を定められている(同規則4条)。各地の労使の団体が、労働審判員候補者の選定に協力している。労働審判員候補者は非常勤の国家公務員であり、その任期は2年である(同法9条2項、同規則3条)。

労働審判員は、労働審判事件ごとに、当該事件を担当する労働審判官が、当該地方裁判所所属の労働審判員候補者の中から指定する(同法10条1項)。労働審判官は、「労働審判員〔候補者〕の有する知識経験その他の事情を総合的に勘案し、労働審判委員会における労働審判員の構成について適正を確保するように配慮し」て(同条2項)、労働審判員を指定しなければならない。実務上は、労働組合出身の労働審判員が1名、使用者団体出身の労働審判員が1名、それぞれ指定されている。[注 4]

労働審判員は、労働者側、使用者側といった特定の立場の利益代表ではなく、中立かつ公正な立場において、職務を行うべきものである(同法9条1項)。実際にも、労働審判員が、当事者に対して、労働審判期日で党派的な言動に及んだとの報告例はほとんど見当たらないことからすると、労働審判員は、中立・公正を相当強く意識していると考えられる。他方で、労働審判の当事者の多くは中小企業とその従業員とであるのに対し、労働審判員は労働組合(なお、日本では、産業別組合の組合員は少なく、労働組合に所属する者のほとんどは、企業別労働組合の組合員である)や人事業務専従者が存在するような大企業出身者が多く、中小企業における労働の実態を的確に理解できているのかという疑問もあり得るところである。


注釈

  1. ^ 同条1項は、労働審判委員会に対し、労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適さないと認めて、事件を終了させる権限を認めている。
  2. ^ 原告(又は申立人)が被告(又は相手方)に請求の趣旨(又は申立の趣旨)のとおりの要求をすることの根拠となる実体法上の権利を、訴訟物(そしょうぶつ)といい、訴訟物が発生するために必要となる事実を、請求原因事実(せいきゅうげんいんじじつ)という。
  3. ^ 裁判所の中には、労働審判委員会が手控えとするために、証拠書類の写しを更に数通提出するよう求める庁もある。
  4. ^ もっとも、労働審判員は、当事者に対して自らの出身母体を明らかにしないのが通例である。

出典

  1. ^ 東京地方裁判所・東京簡裁以外の都内の裁判所 > 裁判手続を利用する方へ > 手続案内


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