分数階微積分学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/22 01:08 UTC 版)
分数階微分作用素
このような理論の存在については、1832年からのリウヴィルの論文にその素地を見ることができる[2][3]。函数の階数 a の分数階微分は今日ではしばしばフーリエ変換あるいはメリン変換といった積分変換の意味で定義される。重要なことは、点 x における分数階微分というものが「局所的」な概念であるのは、a が整数値をとる場合に限られるという点である。つまり、非整数階の場合には、函数 f の点 x における分数階微分が x の極近くでの f のグラフのみに依存して決まるということができない(整数階微分であればこれが言える)。然るに、分数階微分作用素の理論においてはある種の境界条件や函数についてのさらなる情報が関わってくることが想定される。喩えるならば、分数階微分はある種の周辺視野を要求するのである[4]。
経験則
まず相応に自然な疑問は、半微分 (英: half-derivative) と呼ばれるべき、作用素 H で
函数 f(x) = x(青)とその半導函数(紫)、一階導函数(赤)。函数f(x)と一階導函数の中間の性質がある。 ここで函数 f(x) として
という形の単項式を考える。この一階導函数は周知の如く
で与えられる。また、この二階導函数は
で与えられる。微分を繰り返せば一般に
が成り立つものと考えることができる。そのため、たとえば x の半微分(二分の一階導函数)は
で与えられる。これをもう一回行うと、
が得られる。これはすなわち、そもそも成り立って欲しかった性質である
がきちんと満たされていることを意味している。ここで、上述のような微分作用素の拡張は、なにも実数冪のみに縛られるものではない。例えば (1 − i)-階導函数の (1 + i)-階導函数は二階微分を与えるものである。もちろん a が負の整数以外の負の値をとるならば適当な積分が与えられる(Γ(x+yi)の定義域はx>0)。
- ^ ここで積分作用素の J は integration の頭文字 I を用いるところ、I は恒等写像など他の意味に使われたり、I に似た字形の記号・文字がいろいろと使われたりすることによる混同を避けるためにしばしば使われる。
- ^ Liouville, Joseph (1832), “Mémoire sur quelques questions de géométrie et de mécanique, et sur un nouveau genre de calcul pour résoudre ces questions”, Journal de l'École Polytechnique (Paris) 13: 1-69.
- ^ Liouville, Joseph (1832), “Mémoire sur le calcul des différentielles à indices quelconques”, Journal de l'École Polytechnique (Paris) 13: 71-162.
- ^ この主題の歴史については、以下の修士論文(フランス語)Stéphane Dugowson, Les différentielles métaphysiques (histoire et philosophie de la généralisation de l'ordre de dérivation), Thèse, Université Paris Nord (1994) を参照。
- ^ Hadamard, J. (1892), “Essai sur l'étude des fonctions données par leur développement de Taylor”, Journal of pure and applied mathematics 4 (8): 101–186
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