レース旗 チェッカーフラッグ

レース旗

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/20 18:53 UTC 版)

チェッカーフラッグ

 
(上)現存するチェッカーフラッグ最古の写真。ニューヨークロングアイランドで行われた1906年ヴァンダービルト杯
(下)1906年に開催されたフランスGPレース終了の様子。振られている旗はチェッカーフラッグではない事に注目。

チェッカーフラッグ(: The Chequered Flag)とは、フィニッシュラインで振られる旗である。セッション(レース)が全て終了したことを示す意味で表示される。一般的にはこのレース旗は振って掲示されることが多くF1、NASCARでは1本のチェッカーフラッグを振り、インディカー・シリーズでは2本のチェッカーフラッグを振ってレースの終了を知らせる。又、「チェッカーフラッグを受ける」という表現(英語圏の "Driver to take the checkered flag.")は各国共通して「勝者」を表す比喩に使用される事も多い。

ドライバーはチェッカーフラッグを確認してフィニッシュラインを通過すると、安全速度に減速するように各レースシリーズのレギュレーションで法令化がされている。尚、この安全速度走行を「ウィニングラップ」や「ヴィクトリーラン」等と呼ぶ。チェッカーフラッグを受けたドライバーはウィニングラップ走行後、各シリーズのレギュレーションに応じた駐車場(※ : F1ではパルクフェルメ、SUPER GT等ではホームストレート上)や、パドックなどレースシリーズに応じた車両保管所に停車させなければならないという明確なルールになっている。

チェッカーフラッグのデザイン

典型的なチェッカーフラッグ。

チェッカーフラッグには標準的な設計がある。チェッカーフラッグは白と黒の正方形または長方形市松模様に配置交互に構成されている。この模様の構成はレースシリーズによってレース旗のサイズから、白/黒の四角形の数、サイズ、長さも幅も比率も異なるが、旗棒の竿頭に近い旗地最上部の四角形は必ず黒になるように定められている点では共通している。

F1などの国際自動車連盟(FIA)傘下の競技では旗について明確な規定があるため、市松模様のみの典型的なチェッカーフラッグであるが、NASCARにおいては2004年からチェッカーフラッグの中心部にユニオン76サンオコなど燃料サプライヤースポンサーのロゴが描かれたり、行われたレースの日付がチェッカーフラッグに縫い付けられたもの等、他のレースカテゴリーと違った特殊なチェッカーフラッグとなっている。又、NASCARにおいてはレースに使用されたチェッカーフラッグを優勝したチームに対してトロフィーと一緒に授与する。

NASCARにおいてステージ終了時に使用される緑と白のチェッカーフラッグ。

NASCARでは2017年シーズンから3ステージ制を採用。緑と白の配色のチェッカーフラッグが導入され、第1ステージおよび第2ステージ終了時に振動掲示されることとなった。ステージ終了時にはグリーンチェッカーが振られ、着順が固定されるとともにフルコースコーションとなり、次のグリーンフラッグによりレース再開(リスタート)となる。第3ステージ終了は即ちレース終了であるため、通常の白黒のチェッカーフラッグが用いられる。

日本のオートレースではレース終了時の合図に、模様こそ市松模様だが白と赤で塗り分けされたチェッカーフラッグが使用されている[14]

チェッカーフラッグの起源

チェッカーフラッグの起源についての説は様々なものがあるが、一般的に囁かれているのはアメリカ中西部開拓史時代で多くの人々を集めた催事を行い、食事の支度が終わるまでの間の催しの中にダービーが行われた。多くの人々がダービーに熱中する中、食事の準備が終わっても人々の注目はその馬のレースにあった為、そのレースの終わりを知らせる為に大きな布地を振って知らせるのが良いと考えた人が食卓に敷くテーブルクロスで振って知らせた。そのテーブルクロスの柄が市松模様だった為、これが現在のチェッカーフラッグの起源だとする説。

そして、もう1つの起源説は、19世紀フランスにおける自転車レースだといわれる。

いずれの説も検証するには歴史的にその資料が見当たらない為に失われてしまっているが、高い可能性として多くの群集、レースを行う当事者が黒と白などのコントラストの高い目立つものを表示することで視界にそれが映り、レースの終了を知らせるには効果的であったという認識がある。

チェッカーフラッグが確認できる最古の写真記録は1906年ニューヨークロングアイランドで行われたヴァンダービルトカップレースであり、レースの終了のために使用しているのが様子が写真として収められている。近年、写真のデジタル復元によって優勝車両が特定出来た事と、同ヴァンダービルトカップレースにて1904年と1905年のフィニッシュの様子を収めた写真が発見された為、チェッカーフラッグが収められた最古の写真は1906年であると断定された。

2006年にフレッド・エグロフによって書かれ出版された「The Origin of the Checker Flag - A Search for Racing's Holy Grail チェッカーフラッグの起源 - レースの「聖杯」を探索する」によると、ワトキンズ・グレン・インターナショナルに勤めるシドニー・ウォルドンとの会話の中で、それまでレースで使われていた「チェッキングステーション (Checking Station) =現在のチェックポイント (Check point)」がチェッカーフラッグの起源であり、その目印ということでパッカードモーターカンパニーが「Check」にちなんだレース旗を1906年に考案したと語られている。

尚、インディカー・シリーズで2本のチェッカーフラッグを振ってレースの終了を合図するようになったのは、1980年インディ500のスターターを務めたデュエイン・スウィーニーが起源となっている。それまでは1本のチェッカーフラッグを振ってレース終了を合図していたが、スウィーニーは2本のチェッカーフラッグを振ってレースの終了を知らせた。又、レースの開始に関してもスウィーニーは2本の緑旗を振ってスタートを知らせた。

モータースポーツ以外でのチェッカーフラッグ

シボレー・コルベットエンブレム

チェッカーフラッグはしばしばモータースポーツとは無関係なものに使用されるケースがある。

モータースポーツに由来

1つは「Finish(完了)」を表す意味でチェッカーフラッグが使用される。代表的な例として、いくつかのソフトウェアのインストールプログラムが、正常にインストールされると完了を表す為にチェッカーフラッグが表示される。又、アメリカ合衆国内において、1956年から1973年までヤンキー・スタジアムの各コーナーにやエンドゾーンにチェッカーフラッグが表示されていた。

2つは「勝者や一番のシンボル」としてチェッカーフラッグが使用される。モータースポーツにおけるレースでの最初にフィニッシュした者が「チェッカーフラッグを受ける」という意味からである。

他にはモータースポーツや速いという印象のデザイン(アイコン)としても用いられる。市販車においては、シボレー・コルベットエンブレムは旗が交差するようにデザインされ、その片側の旗はチェッカーフラッグをモチーフにされているものである。

それ以外

イギリスで行われる競馬障害競走)のグランドナショナルでは、レースが2周目に入った際に1周目で落馬した馬・騎手等が残っているなどの理由で障害飛越が危険だと判断される場合に、障害の前で係員がチェッカーフラッグを振って当該障害を迂回するように促すことがある(詳細はグランドナショナル#チェッカーフラッグを参照)。

日本においては、市松模様の若者向けファッションアイテムに関して、しばしば「チェッカーフラッグ柄」と表記される。欧米にも同様の柄のファッションアイテムは当然ながら存在するが、こちらでは「Checkerboard Pattern(チェッカー盤柄)」と呼ぶ。これはチェッカーフラッグが由来するものではなく、チェス盤が由来する為である。ほとんどがモータースポーツのチェッカーフラッグの意味は含まれないが、モータースポーツをテーマにしたデザインで市松模様が使われる場合がある。


  1. ^ JAF-国際モータースポーツ競技規則 付則H項 ロードの管制および緊急役務についての勧告(2014年4月24日発行版 日本語訳)2.4 信号 (PDF)
  2. ^ デジフラッグ…F1シンガポールGPで導入
  3. ^ “ARTICLE 4 - SIGNALLING”. Federation Internationale de l'Automobile(FIA 国際自動車連盟 公式ホームページ 一般公開用FIAレースルール第4条「シグナルについて」). http://www.fia.com/sport/regulations/common/appendix_h/article04.html 2010年7月29日閲覧。 
  4. ^ 2009年全日本選手権フォーミュラ・ニッポン統一規則 第30条 信号表示 (PDF)
  5. ^ JAF国内カート競技規則 (PDF)
  6. ^ JAF-国際モータースポーツ競技規則 付則H項 ロードの管制および緊急役務についての勧告(2014年4月24日発行版 日本語訳)2.4.4.1 競技長旗信号 及び 2.4.5.1 ポスト要員旗信号 (PDF)
  7. ^ NASCAR RACING FLAGS
  8. ^ 2014 INDYCAR OFFICIAL RULE BOOK 7.2. Flag Codes (“Flags”) (PDF)
  9. ^ “混乱を招いたセーフティカー・ルールの変更”. F1 Gate.com. (2010年5月17日). http://f1-gate.com/monaco_gp/f1_7606.html 2010年10月26日閲覧。 
  10. ^ “メルセデスGP、「F1の利益のため」控訴断念”. ESPN F1. (2010年5月18日). http://ja.espnf1.com/mercedes/motorsport/story/17641.html 2010年10月26日閲覧。 
  11. ^ 24 h Spa-Francorchamps touringcarracing.net.
  12. ^ “F1韓国GP、雨で赤旗中断”. F1 Gate.com. (2010年10月24日). http://f1-gate.com/korea_gp/f1_9683.html 2010年10月26日閲覧。 
  13. ^ ある意味見せしめ? ペレス、クビアトへのペナルティは青旗無視取り締まり強化の布石か”. motorsport.com (2020年8月18日). 2020年8月17日閲覧。
  14. ^ ルール - オートレース公式サイト
  15. ^ “デジフラッグ…F1シンガポールGPで導入”. レスポンス自動車ニュース. (2008年4月20日). http://response.jp/article/2008/04/20/108443.html 2011年2月16日閲覧。 
  16. ^ “DIGIFLAG® SYSTEM: TO SUPPLY TO PILOTS, THROUGH LIGHT DISPLAYS, THE SAME INFORMATION PROVIDED BY COLOURED FLAGS”. Valerio Maioli. http://www.digiflag.it/index.php/en/digiflag.html 2011年2月16日閲覧。 
  17. ^ JSAFとは2022年4月7日閲覧。
  18. ^ “レースで使用される信号旗(国際信号旗の用途と種類)”. NPO法人 湘南港マリンセンター公式ホームページ. http://www.npo-smc.org/EH08/flag.html 2010年7月28日閲覧。 





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