ドラえもん最終話同人誌問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/12 20:42 UTC 版)
同人誌業界の事情
コミックマーケット(コミケ)で売買されるような二次創作は多くが原作者に無断であり、原作者が訴えれば法的に著作権侵害となる事も有り得るが、長い間黙認されてきた[4]。
コミックマーケットなどが社会的イベントとして巨大化したことや、「同人誌委託販売サイト」「電子書籍販売サイト」などインターネットの普及に対して法律や業界対応が追い付いていないこと、模倣を重ねたアマチュアがプロとなって人気作家に成長する例があることから「人材供給源」となっていること……などといった事情もあった[4]。
作者サイドや出版社が「個別に同人作家に許諾を判断する」ことになると莫大に時間と手間がかかるため、一律に不許可にするか、現状のように黙認するかのどちらかしかない事も、同人業界がグレーゾーンとされている理由となっている。
有識者による見解
小学館の大亀哲郎・知的財産管理課長は今回の件を和解で収めたことについて、「今回はやりすぎだが、節度あるルールが守られている以上、(漫画文化のすそ野としての)同人誌そのものを全否定はしない」と、同人誌については一定の理解を示した[1]。
今回の件については、内容が直球過ぎであり、パロディと分かる発表をすべきだった(三崎尚人)という言及や、一定以上売れる同人誌については著作者に利益を還元されるルールを作るべきかもしれない(藤本由香里)といった提案があった[1]。
『ドラえもん』への敬意や愛を感じた人も少なくなかったようで、プロの漫画家から「絵だけではなく、テーマや展開も藤子・F・不二雄さんの思想を受け継いでいる」という声が出た[5]。漫画批評家の夏目房之介は、「最終話を読んで僕も泣いた。ドラえもんへの愛情にあふれる作品だ」と評価した[4]。
村上知彦は、改変作品を売ることの問題意識に欠落していたと指摘するとともに、「最終話」を読んでみたい読者の願望の強さをあぶりだしたとも指摘している[5]。
脚注
注釈
- ^ 主な著作として『アクア・ステップ・アップ』などがある。
- ^ もっとも、最終話のストーリー自体は、ネット上の書き込みにより同人誌執筆以前から知られており、それを芸能人がテレビなどで話題にしたため広く知れわたっていた。
出典
- ^ a b c d e f g h i j 「「ドラえもん」無断最終話 同人誌販売の男性謝罪 「本物と誤解した人も」」『読売新聞』東京朝刊、2007年6月5日、19頁。
- ^ 「TPP参加でアキバ文化が消える日」『サンデー毎日』、2013年4月7日号(2013年3月26日発売)、25-29頁。
- ^ a b c d e f g 「勝手に「ドラえもん」最終話、ごめんなさい 1万3千部売った「作者」本家に一部払う」『朝日新聞』東京朝刊、2007年5月29日、14頁。
- ^ a b c d 「【知はうごく 文化の衝突】第1部 著作権攻防(6)パロディーが生む文化」『産経新聞』東京朝刊、2007年2月1日、1頁。
- ^ a b c 「(観流)ドラえもん「最終話」 模倣、どこまで許される」『朝日新聞』東京朝刊、2007年6月9日、27頁。
- ^ a b c 『創』2006年12月号、小学館総務局知的財産管理課。
- ^ 「ネットで高騰…偽ドラえもん“最終話”の〈驚〉内容」(〈驚〉は○に驚)、『FLASH』2007年6月19日号(2007年6月5日発売)。
- ^ 「「ドラえもん最終話」無断掲載で謝罪」『読売新聞』東京朝刊、2007年6月7日、33頁。
固有名詞の分類
- ドラえもん最終話同人誌問題のページへのリンク