ティグレ州
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/24 03:23 UTC 版)
領土問題
エリトリア
北を接するエリトリアとは、バドメ周辺の国境未画定地域を巡る争いが行なわれていた。
アムハラ州
南を接するアムハラ州とは、1995年の州再編を発端とした2ヶ所(ウェルカイト地方、ラヤ地方)の領土問題を抱える[17]。
ウェルカイト地方(ミイラバウィ県)は、それまでアムハラ人が多く住むベゲムデル州に属していたが、1995年にベゲムデル州がアムハラ州へ改められた際に旧ベゲムデル州北部(現在のミイラバウィ県)のウェルカイト郡やツェゲデ郡といった地域はティグレ州へ移管された。この決定を現地のアムハラ人は非難し、アムハラ州への帰属を要求する活動を始めた。
ラヤ地方はティグレとアムハラに挟まれた地域で、ラヤ・アゼボ郡とラヤ・コボ郡からなる。1995年以前はアゼボ郡が旧ティグレ州、コボ郡はアムハラ人が多く住む旧ウォロ州に属していたが、1995年の州再編でアゼボ郡は全域が新ティグレ州に、コボ郡はティグレとアムハラの両州で分割することになった。旧コボ郡のうち、ティグレ州に帰属した地域は新アゼボ郡、アムハラ州に帰属した地域は新コボ郡となった。この旧コボ郡の分割によって州境は1995年以前よりも南に移動し、アムハラ人は領土を削られた格好になった。ティグレ州のラヤ地方では州政府による強制同化政策が行われたとされ、住民はアムハラ州への帰属を要求するようになった[18][19]。
この2地方はアムハラ人民族主義者によって「ティグレ人が不法に併合した地域」として奪還が呼びかけられた。そして2020年11月にティグレ戦争が始まると、アムハラ州の治安部隊はティグレ州に侵入しこれらの地域を支配下に置いた。占領地ではアムハラ州から来た公務員や治安維持部隊による統治が行われており、ティグレ州旗はアムハラ人の民族主義を表した旗に取り替えられ、県の創設を宣言するなど併合の既成事実化を進めている[20][21][22]。一方で占領地ではティグレ人住民に対して迫害が行なわれており、2021年3月10日にアメリカ合衆国国務長官のアントニー・ブリンケンはこれを「民族浄化」と呼びアムハラ州を非難した[23]。この発言に対して、エチオピア政府は3月13日に「根拠のない嘘」として否定する声明を出した[24]。アビィ・アハメド首相はアムハラ州の事実上の併合を認めた上で、連邦議会で承認されるまでの「暫定統治」としている[25]。
- ^ 2011 National Statistics Archived 2013年3月30日, at the Wayback Machine.
- ^ “Population and Housing Census - 2007”. FDRE Population Census Commission. 2016年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月6日閲覧。
- ^ 資源開発環境調査・エチオピア連邦民主共和国-独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構,{{{1}}} (PDF) ,P6,2011-02-08閲覧。
- ^ “エチオピアのティグライ州における人道的停戦(外務報道官談話)”. Ministry of Foreign Affairs of Japan. 2022年3月22日閲覧。
- ^ a b “エチオピアにおける最近の情勢について(外務報道官談話)”. 外務省 (2020年11月6日). 2020年11月14日閲覧。
- ^ “エチオピアの総選挙、野党ボイコットで治安悪化の懸念も”. 朝日新聞. (2021年6月19日) 2021年6月21日閲覧。
- ^ “エチオピア:北部ティグライ州における軍事衝突の発生に伴う注意喚起”. 外務省 (2020年11月4日). 2020年11月14日閲覧。
- ^ Skutsch, Carl (2013-11-07) (英語). Encyclopedia of the World's Minorities. Routledge. ISBN 978-1-135-19388-1
- ^ “国連平和維持活動”. 衆議院防衛指針特別委員会理事会. 2022年5月22日閲覧。
- ^ “Ethiopia's Tigray region defies PM Abiy with 'illegal' election”. France 24 (2020年9月9日). 2020年11月14日閲覧。
- ^ “エチオピア、戦闘で数百人死亡=関係筋”. ロイター (2020年11月10日). 2020年11月13日閲覧。
- ^ “エチオピア北部の紛争地で多数の市民虐殺か アムネスティ”. CNN (2020年11月13日). 2020年11月13日閲覧。
- ^ “エチオピア・ティグレから撤退を G7、エリトリア軍に要求”. AFP.BB.NEWS (2021年4月2日). 2021年10月13日閲覧。
- ^ “エチオピア人約2.5万人、戦闘逃れスーダンに流入”. AFP (2020年11月16日). 2020年11月22日閲覧。
- ^ “エチオピア・ティグレ州、飢饉で子ども3万人超が死亡する恐れ”. AFP.BB.NEWS (2021年6月12日). 2021年10月13日閲覧。
- ^ “【図解】人口の4割、極度の食料不足=国連が警告―エチオピア北部(時事通信)”. Yahoo!ニュース. 2022年2月20日閲覧。
- ^ “Tigray’s border conflicts explained”. Passport Party (2020年11月11日). 2021年3月31日閲覧。
- ^ “The Rayan people want an end to rule by Tigray”. Ethiopia Insight (2019年2月22日). 2021年3月31日閲覧。
- ^ “TPLF Accused of Engaging in Forced Assimilation of Raya People”. Ezega News (2020年9月4日). 2021年3月31日閲覧。
- ^ “Ethiopia's Tigray conflict revives bitter disputes over land”. フランス24 (2020年12月30日). 2021年3月31日閲覧。
- ^ “In Pictures: Inside Humera, a town scarred by Ethiopia’s war”. アルジャジーラ (2020年11月23日). 2021年3月31日閲覧。
- ^ “Ethiopia’s Tigray War Is Fueling Amhara Expansionism”. フォーリン・ポリシー (2021年4月28日). 2021年5月1日閲覧。
- ^ “Blinken: Acts of 'ethnic cleansing' committed in Western Tigray”. CNN (2021年3月10日). 2021年3月31日閲覧。
- ^ “Ethiopia rejects U.S. allegations of ethnic cleansing in Tigray”. ロイター (2021年3月13日). 2021年5月1日閲覧。
- ^ “Ethiopia’s Amhara Seizes Disputed Territory Amid Tigray War”. ブルームバーグ (2021年3月17日). 2021年5月1日閲覧。
- ^ City Population(閲覧日:2016年9月4日)
- ^ “Abeba Aregawi: a new champion in new colours” (2013年8月15日). 2013年12月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月12日閲覧。
固有名詞の分類
- ティグレ州のページへのリンク