ゼロ時間へ 作品の評価

ゼロ時間へ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/08 16:25 UTC 版)

作品の評価

1944年7月22日付のタイムズ・リテラリー・サプリメント紙に掲載されたモーリス・ウィルスン・ディシャーの書評は次のように圧倒的に肯定的であった。「クリスティを無条件に崇拝する者は、彼女が最高の状態にあるということを実感しそこねるだろう。もしこの主張が正しいなら本書はまさにそれである。海辺の町に住むある人物の幸福が、卓越したストーリーテリングによって、今この瞬間に世界の何よりも重要であると思わせる。精密な頭脳の持ち主は、犯人が警察を使って犯罪を「完成」させることに異議を唱えるかもしれないが、迷路に曖昧さがあるとしてもこの物語には心を掴まれる。読者は登場人物たちに感情移入し、彼らの最終的な運命を知るまで満足できない。どちらも几帳面で、饒舌で、ポーカーフェイスな二人の男が、実は決して似ていないと気づくとき、二人が生き生きとしていることが明らかになる。好きでも嫌いでもない妻と元妻もまた、創造力を発揮している。『ゼロ時間へ』は、現代的な人間模様の表現として、優れた探偵小説として評価されるよりも高い評価を受けるに値する。」[1]

1944年8月6日発行のオブザーバー紙でモーリス・リチャードソンは次のように述べた。「アガサ・クリスティの新作は、おいしい葉巻と赤い革靴のように都会的で居心地の良い、長くて凝った作り込みをしている。ポアロは出てこないが、彼の影響力によって敏腕警察官は慎重に仕組まれたハウスパーティーの悪巧みと、ポアロの事件と見紛うような巧妙な二重のはったりをくぐり抜けることができる。アガサ・クリスティが、昔ながらの古典的な犯人探しの旗を、これほどまでに誇らしげに掲げているのを見るのは、なんと嬉しいことだろう!」[2]

ロバート・バーナードの評は、以下の通り。「超一流。複雑なプロットで、異彩を放っている。殺人事件は後から起こり、殺人犯の陰謀の本当のクライマックスは最後になってからである。工夫を凝らすと奇想天外になるのは仕方がない。子供と弓矢の話(第2部第6章)が非常に効果的で、プレイボーイでスポーツマンの中心人物の性格付けも良い。ウィンブルドンでは、紳士的な振る舞いが求められる時代なのだ。」[3]

1971年に行われた日本全国のクリスティ・ファン80余名の投票による作者ベストテンでは、本書は9位に挙げられている[4]

1982年に行われた日本クリスティ・ファンクラブ員の投票による作者ベストテンでは、本書は7位に挙げられている[5]


  1. ^ The Times Literary Supplement, 22 July 1944 (p. 353)
  2. ^ The Observer, 6 August 1944 (p. 3)
  3. ^ Barnard, Robert. A Talent to Deceive – an appreciation of Agatha Christie (revised edition, p. 208). Fontana Books: 1990; ISBN 0-00-637474-3
  4. ^ 創元推理文庫ゴルフ場の殺人』1976年版の巻末解説参照。
  5. ^ 乱歩が選ぶ黄金時代ミステリーBEST10(6)『アクロイド殺害事件』(集英社文庫、1998年)巻末解説参照。


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