キューポラ 構造

キューポラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 09:03 UTC 版)

構造

キューポラの構造は、ボイラー鋼鈑などを数メートル-数十メートルの長さに末広がりの円筒形に加工した構造物を縦型に設置し、内側には耐熱煉瓦や耐火モルタル(パッチングモルタルなどのキューポラ用耐火物)が貼られている。

その他に、円筒形の中間までが末広がり型の形状で、その下部を逆に絞った形状(高炉に近い形状)の「ホワイティング型キューポラ」、日本人の開発した「坂川式熱風水冷キューポラ」もあったが、現在は数機現存するのみである。

キューポラ各部の役割、名称として、円筒型の上部から溶解材料を「底開きバケット」や「スキップ式ホイスト」などで挿入する「材料投入口」、コークスなどの燃焼で発生したガス(主にCOガス)を吸引する「ガスダクト」、挿入された材料を予熱する「予熱帯」、材料をコークスの燃焼熱で溶解する「溶解帯」、還元作用が行われる「還元帯」、溶けた鉄が一時的に炉内に溜まる「湯溜まり帯」、溶けた鉄が出てくる穴「出湯口」、炉の最下部で溶湯が漏れないように耐火物で施工してある「炉床」、溶解後に炉内残滓物や耐火物を排出するための「底扉(もしくはマンホール)」という構成である。

なお、古来からある日本独自の「こしき炉(甑炉)」は燃料に石炭木炭を使用したもので炉の原理は同じである[1]

キューポラは、時間あたり溶解量で大きさを表すのが通例であり、小型の物は毎時1-3トンから大型のものは毎時80-120トンのものまで使用されている。日本では5-30トンクラスが主流である。

分類

キューポラ形態の分類として、炉内全面に耐火物を施工する「ライニングキューポラ」と湯溜まり帯と炉床のみ耐火物を施工する「ノーライニングキューポラ」がある。

次に、炉内に溶湯を常に一定量溜めておく「ウエットボトム方式」と、炉内には溜めずに排出し炉体前部に設置されたサイフォンに溜める「ドライボトム方式」がある。

また、溶湯と一緒にキューポラのスラグ(溶融されたコークス等の残滓物)を炉内から排出し、キューポラ前部に取り付けられたスラグセパレーターにて分離する「フロントスラッギング方式」と、溶湯とスラグを別々の穴から排出する「リアスラッギング方式」という分類となる。

使用法

溶解方法としては、溶解帯まで積み上げられたコークス「初込めコークス」(ベッドコークスとも呼ばれる)に、溶解帯下部に取り付けられた「羽口(はぐち)」といわれる部分から送風機で空気を送りコークスを燃焼させ材料を溶解する。その時の燃焼温度は1,600℃にも達する。また、空気に純酸素を数%混ぜ溶解効率を上げる方法もある。

操業条件として最も重要なのは、送風の加減である。送風が過剰になると、固体地金の表面に厚い酸化皮膜ができ、材質劣化の原因になり、また、ベッドコークスの燃焼消耗が速まり、追い込めコークスの追従補充が間に合わなくなる。逆に送風過少の場合も、コークスの不完全燃焼によって発熱量が不足することになる。ゆえに、どちらも結果として出湯温度が低くなりすぎて品質が劣化する。適正な送風量は、炉の断面積1m2あたり100-110m3/秒とされている。また、送風される空気の温度と湿度も鋳鉄の品質に大きな影響を与える。

1970年以前は大気をそのまま炉内に送風した「冷風操業」が主であったが、燃焼効率が安定せず出湯温度が低いことと(酸化溶解となる)、大気中の水分量の増減に起因する品質不良(ガス欠陥、ザク巣欠陥など)が大きな問題となっていた。これを改善するため排ガス中のCOガスをキューポラに併設された燃焼室で700-1,000℃に燃焼させ、その高温のガス熱量を利用し炉内へ送風する大気を熱交換機で300-700℃まで加熱し送風する「熱風操業」が行われ、この方法が現在主流となっている。

熱風操業は品質を改善するばかりでなく、燃焼効率改善によるコークス使用量の低減にもつながる。


  1. ^ a b 菅野利猛. “世界文化遺産、韮山反射炉の10大ミステリーを解く”. 2020年5月15日閲覧。
  2. ^ 都道府県の教科書 編集部 編『埼玉の教科書』JTBパブリッシング、2021年11月30日、62頁。ISBN 9784533147111 


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