カンバーランド (メリーランド州) 歴史

カンバーランド (メリーランド州)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/26 02:18 UTC 版)

歴史

カンバーランドの名前はイギリスジョージ2世の息子カンバーランド公プリンス・ウィリアムから名付けられた。フレンチ・インディアン戦争のときにイギリス軍エドワード・ブラドック将軍が、フランス軍の要塞デュケーヌ砦(現在のピッツバーグがある場所)を攻撃するために出発した場所であるカンバーランド砦があった場所に町が建設された。

やはりフレンチ・インディアン戦争のときに、ジョージ・ワシントン大佐の前進基地でもあり、最初の作戦本部が築かれた。ワシントンは1794年に大統領としてこの地に戻り、ウィスキー税反乱を鎮めるために集められた軍隊を閲兵した。

ブラドックの軍事道路図

19世紀のカンバーランドは道路、鉄道、運河の重要な結節点であり、メリーランド州で2番目に大きな都市である時期もあった(港湾都市のボルチモアに次ぐ都市であり、そのことから「女王の都市」というニックネームがついた)[4]。周辺の丘陵からは、石炭、鉄鉱石、木材が産出され、産業革命を加速させた。さらに硝子、醸造、繊維、ブリキ板を製造して工業地帯の中心になった。しかし、第二次世界大戦後、工業での重要さがほとんど失われ始め、人口は1940年の39,483人から現在の22,000人足らずまで減少した[5][6]

地理

カンバーランドはアパラチア山脈のリッジ・アンド・バレー地形の中にあって、座標では北緯39度38分52秒 西経78度45分46秒 / 北緯39.647687度 西経78.762869度 / 39.647687; -78.762869 (39.647687, −78.762869)[7]ポトマック川の北支流とウィルス・クリークが合流する地点に位置している。州間高速道路68号線が市内を東西に走り、アメリカ国道40号線代替路や旧ナショナル道路(カンバーランド道路)も同様である。アメリカ国道220号線は南北に走っている。市内の土地の大半は2つの河川が合流することで生まれたバレーの中にある。ウィルス山、ヘイスタック山、シュライバー尾根の一部も市域内にある。

チェサピーク・アンド・オハイオ運河の終点。高架橋は州間高速道路68号線のもの。運河博物館は橋の背後の煉瓦造り建物

廃棄されたチェサピーク・アンド・オハイオ運河、現在はチェサピーク・アンド・オハイオ運河国定歴史公園はその西端がカンバーランドにある[4]。この運河の曳舟道は現在も維持されており、徒歩や自転車でカンバーランドからワシントンD.C.の間、距離にして約185マイル (298 km) を通行できる。近年、グレート・アリゲイニー・パッセージと呼ばれる別の道が開発され、ピッツバーグをその西端とすることになる。この合わせて300マイル以上の道の中でピッツバーグとワシントンD.C.を除けば、カンバーランドが唯一人口2万人以上の都市になる。

アメリカ合衆国国勢調査局に拠れば、市域全面積は10.15平方マイル (26.29 km2)であり、このうち陸地10.08平方マイル (26.11 km2)、水域は0.07平方マイル (0.18 km2)で水域率は0.68%である[1]

カンバーランドはカンバーランド道路の始点であり、その名前の元になった。この道路は1811年に始まって西のオハイオ川ホイーリングまで伸ばされたものであり、最終的にオハイオ州インディアナ州イリノイ州まで伸びたナショナル道路の最初の部分だった[4]

カンバーランド・ナローズ

カンバーランド・ナローズ、カンバーランド市の西、ウィルス・クリーク沿いにある。左はヘイスタック山、右はウィルス山。岩がちなウィルス山背斜をこの水路を使って容易に超えることができた。ウェスタン・メリーランド景観鉄道(左)、旧ナショナル道路(アメリカ国道40号線代替路、中央、クリークの左)、CSXトランスポーテーション線(右)が通る

カンバーランド市はカンバーランド・ナローズの東側入口に位置している。これはウィルス・クリーク沿いの水路であり、北のウィルス山と南のヘイスタック山の間の低い標高で、ウィルス山背斜の中央尾根を抜けている。2つの山のタスカローラ層珪岩キャップロックでできた崖と崖錐がナローズの中でも目立っている。これら地質的性状がカンバーランドの西に2つの山の背景とそれらの狭い隙間という景観を与えている。

カンバーランド・ナローズはカンバーランド市から西のアパラチア高原オハイオ川バレーに進む入口になっている。旧ナショナル道路、現在のアメリカ国道40号線代替路がナローズを抜け、また元ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道の本線、現在はCSXトランスポーテーション線の一部になっている線が通り、さらに元ウェスタン・メリーランド鉄道線、現在は蒸気機関とディーゼル機関によるウェスタン・メリーランド景観鉄道の観光列車も運行されている。

カンバーランド・ナローズのウィルス山南端に露出する岩は、ラバーズリープと呼ばれている。

気候

カンバーランドは、温暖湿潤気候ケッペンの気候区分 Cfa)から湿潤大陸性気候(Dfa)への遷移が始まる所にあり、メリーランド州の中部や東部よりも気温が著しく低くなることがある。その多くは低気圧夜間低温という形態である。四季がはっきりしており、暑く湿気た夏と温暖な冬がある。周辺の町に比較すると冬は温暖であり、雪も少ない。月別日間平均気温は1月31.9°F (-0.1 ℃) のから7月の76.8°F (24.9 ℃) まで変化する。気温が90°F (32 ℃) を超えるのは年間34.5日、冬に10°F (-12 ℃) を下回るのは年間7日ある。年間平均降雪量は30.3インチ (77 cm) である。過去最高気温は1936年7月と1918年8月に記録された1098°F (43 ℃) であり、どちらも州内最高記録になっている。過去最低気温は1899年2月に記録された-178°F (-27 ℃) である。

カンバーランド(1981年-2010年平均)の気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
平均最高気温 °F°C 41.4
(5.2)
45.6
(7.6)
55.8
(13.2)
68.0
(20)
76.5
(24.7)
84.7
(29.3)
88.7
(31.5)
87.5
(30.8)
80.0
(26.7)
69.0
(20.6)
56.6
(13.7)
44.7
(7.1)
66.6
(19.2)
平均最低気温 °F°C 22.4
(−5.3)
23.9
(−4.5)
31.6
(−0.2)
41.1
(5.1)
51.1
(10.6)
60.4
(15.8)
64.8
(18.2)
63.3
(17.4)
54.8
(12.7)
43.0
(6.1)
34.2
(1.2)
26.5
(−3.1)
43.2
(6.2)
降水量 inch (mm) 2.66
(67.6)
2.37
(60.2)
3.37
(85.6)
3.30
(83.8)
4.02
(102.1)
3.28
(83.3)
3.56
(90.4)
3.17
(80.5)
3.23
(82)
2.57
(65.3)
2.98
(75.7)
2.85
(72.4)
37.36
(948.9)
降雪量 inch (cm) 10.2
(25.9)
8.3
(21.1)
5.3
(13.5)
.2
(0.5)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
0
(0)
.9
(2.3)
5.4
(13.7)
30.3
(77)
平均降水日数 (≥0.01 in) 11.6 9.9 11.2 11.6 13.3 11.1 10.6 9.5 9.2 8.6 9.6 10.6 126.8
平均降雪日数 (≥0.1 in) 3.7 3.1 2.0 .1 0 0 0 0 0 0 .4 1.9 11.2
出典:NOAA[8][9]

政治

カンバーランド市では投票の際に民主党を選ぶ傾向にあるが、政治そのものはブルードッグ民主党、すなわち概して保守的であり、社会問題については中道である。アリゲイニー郡全体では共和党支持が強い。


  1. ^ a b US Gazetteer files 2010”. United States Census Bureau. 2013年1月25日閲覧。
  2. ^ Quickfacts.census.gov”. 2023年11月25日閲覧。
  3. ^ a b Dataplace: Cumberland, MD-WV MAS
  4. ^ a b c Bird's Eye View of Cumberland, Maryland 1906”. World Digital Library (1906年). 2013年7月22日閲覧。
  5. ^ Cumberland History”. National Park Service. 2014年2月19日閲覧。
  6. ^ Parts of this article are copied from the Cumberland History, a National Park Service website whose contents are in the public domain.
  7. ^ US Gazetteer files: 2010, 2000, and 1990, United States Census Bureau, (2011-02-12), http://www.census.gov/geo/www/gazetteer/gazette.html 2011年4月23日閲覧。 
  8. ^ Station Name: MD CUMBERLAND 2”. National Oceanic and Atmospheric Administration. 2013年3月14日閲覧。
  9. ^ NowData - NOAA Online Weather Data”. National Oceanic and Atmospheric Administration. 2012年12月17日閲覧。
  10. ^ Special Report: Best Places For Business And Careers, Forbes, April 2007.
  11. ^ The Baltimore Sun, 29 June 2007
  12. ^ Washington Post Real Estate section, 14 July 2007
  13. ^ American FactFinder”. United States Census Bureau. 2013年1月25日閲覧。
  14. ^ All Aboard For Cumberland: Washington Street
  15. ^ Cumberland Establishes Sister City In Estonia”. Cumberland Times-News (2013年6月20日). 2013年6月21日閲覧。





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