オールウェザー (競馬)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/05 14:04 UTC 版)
素材の種類
オールウェザーとして使用される素材には、その配合や製造するメーカーによってさまざまな名称がある。
- エクイトラック
- 砂にワックスを混合した素材。冬季に凍結することはないが、馬の足に油が付いて汚れたり、塊になって蹄の裏に付着するなどの欠点があったため、使用されなくなった。
- ファイバーサンド
- 人工の繊維と砂を混合した素材。繊維と砂の比重が違うため、使用しているうちに分離してしまう欠点があった。エポキシ樹脂を混合することによって均一にすることが可能だが、樹脂に費用がかかる。現在、英国のサゾル競馬場で使用されている。
- また、繊維を固めた状態で砂を入れることによってクッション性と水はけを両立した改良型である「ファイバーマット」が、東京競馬場のダートコースの水はけの悪い部分の路盤として使用されている。
- スタロック
- アメリカのスタビライザー・レーシングサーフィシズ社が製造している素材。フランスやトルコなどで使用されている。
現在の北米では、以下の4つの素材が主要な素材とされる[13]。
- ポリトラック
- 砂に、海底ケーブルの廃材として出る電線の被覆材、合成ゴムの破片などとワックスを混合した素材。イギリスのポリトラック社が製造している。ポリトラック開発のきっかけは障害馬術の馬場の改良で、障害馬術選手のマーティン・コリンズがはじめ電話線に被覆するポリ素材を使用したポリトラックを考案した。
- ポリトラックを使用した競馬場では悪天候による開催中止が少なく、馬の故障も減少。芝やダートのように定期的に入れ替える必要がほとんどなく、コストダウンが可能といったさまざまな利点から、オールウェザーの導入が進むきっかけとなった素材。競馬場には1987年にイギリスで初めて導入された。
- しかし、電線の被覆材の長さやワックスの配合によっては塊になって馬の蹄の裏に付いたり、競馬の際に馬が蹴り上げる量が多くなるなどの欠点があったため、その後改良が加えられて「ニューポリトラック」(現在の「ポリトラックエリート」)となった。
- ポリトラックエリート
- ポリトラックの欠点を解消するため、電線の被覆材の長さを短くしたり、ワックスの混合比率を変えるなどの改良を行ってできた素材。現在のポリトラック社の中心素材。イギリスのリングフィールド競馬場や、アメリカのアーリントンパーク競馬場、カナダのウッドバイン競馬場などで使用されている。被覆材の配合量を変えた「ポリトラックプレミアム」も存在する。キーンランド競馬場も一時期導入していたが2014年秋にダート馬場に変更された[14]。
- ポリトラッククラシック
- ポリトラックやニューポリトラックで使用されていた電線の被覆材が足りなくなったため、絨毯のくずなどを使用して作られた素材。かつてはエコトラックと呼ばれた。アメリカのターフウェイパーク競馬場などで使用されている。
- クッショントラック
- 二酸化ケイ素を主成分とする砂に、ゴムのくず、化学繊維、特殊なワックスを混合した素材。クッショントラック・フッティングス社が製造している。ハリウッドパーク競馬場(廃止)などで使用されている。サンタアニタパーク競馬場も一時期導入していたが水はけの問題が生じ、使用を中止した。
- プロライド
- オーストラリアのプロライド社が製造している。ほかの合成素材と違い、ワックスを混入していないことを特徴とする。サンタアニタパーク競馬場が2008年にクッショントラックからプロライドに切り替えたが、またしても水はけの問題が解決できず、2011年にダートへ戻している。
- タペタ
- 「タペタ」はラテン語でカーペットの意味。調教師のマイケル・ディッキンソンが考案した素材。アメリカのタペタ・フッティングス社が製造している。ディッキンソンの管理馬であるダホスがこの素材で調教され、脚部不安を克服して2年間の休養から復活したことで名を上げた。アメリカのゴールデンゲートフィールズ競馬場で使用されている。ドバイワールドカップが開催されるメイダン競馬場では開場から2014年まで導入していたが、同年にダートに変更された[8]。
- ^ “人工馬場の予後不良事故率は 低いとの調査結果”. 財団法人ジャパン・スタッドブック・インターナショナル 海外競馬ニュース. (2011年1月20日)
- ^ 岡田大『凱旋門賞とは何か』〈宝島社新書〉2013年、24-25頁。
- ^ “Breeders' Cup Classic (Gr. 1)” (英語). Equibase. 2016年11月24日閲覧。
- ^ オールウェザー馬場で行われた2009年のブリーダーズカップ・クラシックでは、ゼニヤッタが牝馬として同レース史上初の勝利を挙げた。一方、ダートコースで行われた2010年の同レースでは、同馬が競走生活で唯一の敗戦を喫し、同馬の連勝記録も19でストップした。同馬の戦績はオールウェザー馬場17戦17勝(内G1は11勝)、ダートコース3戦2勝(いずれもG1)であった。
- ^ “Report: Gulfstream to Add Tapeta Near Outer Turf Course” (英語). bloodhorse.com (2021年3月5日). 2021年3月8日閲覧。
- ^ “What are Gulfstream's plans for new Tapeta surface?” (英語). horseracingnation.com (2021年6月10日). 2021年6月11日閲覧。
- ^ “米国調教馬なしで問われるドバイワールドカップの国際性(ドバイ)”. ジャパン・スタッドブック・インターナショナル (2014年4月20日). 2017年8月27日閲覧。
- ^ a b “メイダン競馬場、タペタを撤去しダート馬場に転換(ドバイ))”. ジャパン・スタッドブック・インターナショナル (2014年5月15日). 2017年8月27日閲覧。
- ^ 『優駿』(日本中央競馬会) 2008年2月号
- ^ 平成21年度事業計画書 日本中央競馬会
- ^ 小林分厩舎新調教コース坂路(ニューポリトラック)の完成について
- ^ 特別区競馬組合小林牧場調教用坂路の利用について
- ^ “ダート馬場と人工馬場、どちらがより安全か(アメリカ)”. 財団法人競馬国際交流協会 海外競馬ニュース. (2009年6月19日)
- ^ “キーンランド競馬場、ポリトラックをダートに転換(アメリカ)【開催・運営】”. ジャパン・スタッドブック・インターナショナル 2014年10月10日閲覧。
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