J検定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/02 21:24 UTC 版)
モーメント条件の数がパラメーターベクトルの次元より大きい時、そのモデルは過剰識別されている(英: over-identified)と言う。過剰識別ならば、そのモデルのモーメント条件がデータと適合するかどうかを調べることが出来る。 概念的に、モデルがデータによくフィットしているかは、 m ^ ( θ ^ ) {\displaystyle {\hat {m}}({\hat {\theta }})} が十分0に近いかどうかで調べることが出来る。一般化モーメント法は方程式 m ^ ( θ ) = 0 {\displaystyle {\hat {m}}(\theta )=0} を解く問題、つまり θ {\displaystyle \theta } が制約を確かに満たすように選ぶという問題を最小化計算に置き換えている。この最小化は m ( θ 0 ) = 0 {\displaystyle m(\theta _{0})=0} を満たすような θ 0 {\displaystyle \theta _{0}} が存在しないとしても、常に実行可能である。J検定はこの制約が成立しているかを確かめることができる。J検定は過剰識別制約についての検定とも呼ばれる。 以下の統計的仮説を考えよう。 H 0 : m ( θ 0 ) = 0 {\displaystyle H_{0}:\ m(\theta _{0})=0} (モデルが妥当であるという帰無仮説) H 1 : m ( θ ) ≠ 0 , ∀ θ ∈ Θ {\displaystyle H_{1}:\ m(\theta )\neq 0,\ \forall \theta \in \Theta } (モデルが妥当でないという対立仮説。データは制約を満たすほど近づかない。) 仮説 H 0 {\displaystyle H_{0}} の下で以下のJ検定統計量は漸近的に自由度 k-l のカイ2乗分布に従う。 J ≡ T ⋅ ( 1 T ∑ t = 1 T g ( Y t , θ ^ ) ) ′ W ^ T ( 1 T ∑ t = 1 T g ( Y t , θ ^ ) ) → d χ k − ℓ 2 {\displaystyle J\equiv T\cdot {\bigg (}{\frac {1}{T}}\sum _{t=1}^{T}g(Y_{t},{\hat {\theta }}){\bigg )}'{\hat {W}}_{T}{\bigg (}{\frac {1}{T}}\sum _{t=1}^{T}g(Y_{t},{\hat {\theta }}){\bigg )}\ {\xrightarrow {d}}\ \chi _{k-\ell }^{2}} under H 0 , {\displaystyle H_{0},} ここで θ ^ {\displaystyle {\hat {\theta }}} はパラメーター θ 0 {\displaystyle \theta _{0}} の一般化モーメント法による推定量、k はモーメント条件の数(ベクトル g の次元)、l は推定パラメーターの数(ベクトル θ の次元)である。行列 W ^ T {\displaystyle {\hat {W}}_{T}} は Ω − 1 {\displaystyle \Omega ^{-1}} に確率収束しなくてはならない。 Ω − 1 {\displaystyle \Omega ^{-1}} は効率的な加重行列である(以前、推定量が効率的であるためには、W は Ω − 1 {\displaystyle \Omega ^{-1}} に比例することだけが必要だった。しかし、J検定を行うには、W は Ω − 1 {\displaystyle \Omega ^{-1}} と一致せねばならず、単純に比例するだけではいけない)。 対立仮説 H 1 {\displaystyle H_{1}} の下で、J検定等計量は漸近的に非有界である。 J → p ∞ {\displaystyle J\ {\xrightarrow {p}}\ \infty } under H 1 {\displaystyle H_{1}} 検定を行う為に、データから J の値を計算しなくてはならない。J は非負である。J を(例えば) χ k − ℓ 2 {\displaystyle \chi _{k-\ell }^{2}} 分布の95%分位点と比較する。 もし J > q 0.95 χ k − ℓ 2 {\displaystyle J>q_{0.95}^{\chi _{k-\ell }^{2}}} ならば、帰無仮説 H 0 {\displaystyle H_{0}} は有意水準5%で棄却される。 もし J < q 0.95 χ k − ℓ 2 {\displaystyle J<q_{0.95}^{\chi _{k-\ell }^{2}}} ならば、帰無仮説 H 0 {\displaystyle H_{0}} は有意水準5%で棄却できない。
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