21世紀のサイケデリック・ルネッサンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/14 07:33 UTC 版)
「幻覚剤」の記事における「21世紀のサイケデリック・ルネッサンス」の解説
薬物規制分類のスケジュールIとは、医学的検証のない薬物の規制分類であり、1960年代のムードでは幻覚を生じさせるというだけで医学的研究を行わないままに、幻覚剤はこのような分類に押し込まれた。このことは、医学的な潜在価値があるのにもかかわらず研究に著しい制限をかけて妨げてきた。 21世紀に入り、既存の精神科の薬の治療効果の限界から再び幻覚剤に注目が集まって研究が行われており、サイケデリック・ルネッサンスと呼ばれている。 課題は資金であった。治験のための近代的なランダム化比較試験 (RCT) を実施するには、数百万ドルの費用を要し、本来は実施するためには特許による市場独占(製薬会社などによる開発)が必要であり、さらには国際的な規制がこれをさらに高額にする。しかし、LSDやシロシビンでは特許が失効しており臨床試験は実施しがたいと思われていたが、社会的情勢の変化(禁止政策麻薬戦争の失敗など)を反映してアメリカや欧州の団体は研究資金を提供しはじめ、このような運動は大衆の想像力を駆り立てる幻覚剤の魅力とソーシャルメディアとが組み合わさって進展してきた。こうして現代的な手法(RCT)で有効性と安全性を実証すれば、規制の再分類が続くと考えられる。 アメリカのリック・ドブリン率いる幻覚剤研究学際協会(英語版) (MAPS)、イギリスのアマンダ・フィールディング率いるベックリー財団は、情報提供とコミュニティの形成を通じて、こうした研究のための資金集めを行い、実際に研究を実施してきた。 2019年4月にイギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンに世界初のサイケデリック研究センターが設置され(350万ドルの資金調達)、9月にはアメリカでは幻覚剤に関する臨床試験を行ってきたジョンズ・ホプキンズ大学医学部に幻覚剤意識研究センター (Center for Psychedelic & Consciousness Research) が設置される(1700万ドル調達)。2020年9月、カリフォルニア大学バークレー校がサイケデリック研究センターを開設し、幻覚剤を心理療法に組み込む既存の臨床試験の進行を追いかけ、また神学研究所と合同で幻覚剤とスピリチュアリティに関する研究、また研究に足りていない体験の補助要員を育成する。また2021年には、ニューヨークのマウントサイナイ医科大学にサイケデリックス研究センターが設置され、2019年の2機関より研究領域は狭いが今後展開される幻覚剤による治療法のための教育施設としても機能する。 デヴィッド・アール・ニコルズは幻覚剤の研究者で、灰色市場(英語版)のデザイナードラッグの生産者はニコルズの著作物が新しいデザイナードラッグを生み出すのに「特に有用な」手引きだと形容した。25I-NBOMe(英語版)は、彼が生み出し、新型のLSDとして2010年代に規制されたもののひとつである。実際に強い効果を生じる量よりも少ない、ごく少量を摂取する幻覚剤のマイクロドージングは、2010年代の流行である。
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