龍樹の空理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/15 18:19 UTC 版)
この「空」の理論の大成は、龍樹の『中論』などの著作によって果たされた。なお、伝統的に龍樹の著作とされるもののうち、『中論(頌)』以外に近代仏教学において龍樹の真作であるとの見解の一致が得られている作品はない。 龍樹は、存在という現象も含めて、あらゆる現象はそれぞれの因果関係の上に成り立っていることを論証している。この因果関係を釈迦は「縁起」として説明している。(龍樹は、釈迦が縁起を説いたことを『中論』の最初の帰敬偈において、賛嘆している。) さらに、因果関係によって現象が現れているのであるから、それ自身で存在するという「独立した不変の実体」(=自性)はないことを明かしている。これによって、すべての存在は無自性であり、「空」であると論証している。このことから、龍樹の「空」は「無自性空」とも呼ばれる。 この空の思想は、真理を 概念を離れた真実の世界(第一義諦、paramārtha satya)と、 言語や概念によって認識された仮定の世界(世俗諦 、saṃvṛti-satya) という二つの真理に分ける。言葉では表現できないこの世のありのままの姿は、第一義諦であり、概念でとらえられた世界や、言葉で表現された釈迦の教えなどは、世俗諦であるとするため、この説は二諦説と呼ばれる。
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