顔面把手付深鉢形土器
主名称: | 顔面把手付深鉢形土器 |
指定番号: | 449 |
枝番: | 00 |
指定年月日: | 1989.06.12(平成1.06.12) |
国宝重文区分: | 重要文化財 |
部門・種別: | 考古資料 |
ト書: | 長野県岡谷市小尾口海戸遺跡出土 |
員数: | 1箇 |
時代区分: | 縄文 |
年代: | |
検索年代: | |
解説文: | 海戸遺跡は諏訪湖【すわこ】に向かって突出する岬状の台地先端部に立地している。明治年間から知られていた遺跡であるが、昭和四十一・四十二年の発掘調査によって、縄文時代~平安時代の六三棟の住居跡を検出し、継続期間の長い集落であることが判明した。 本遺品はこの調査の結果、第三号住居跡中央付近から顔面を下向きにして出土したものである。強く内湾する口縁部【こうえんぶ】と瓢単形【ひようたんがた】に括【くび】れた屈折底【くつせつぞこ】をもつ胴部からなる。口縁部の一端を大きく占める顔面把手は外向きに作られ、丸くあけられた口、切れ長につり上がった目、やや上向きの小さな鼻、肉彫り風の眉などで顔面を造形している。顔面周辺には円形三孔を穿ち、沈線・V字形の切り込み等の装飾によって結髪【けつぱつ】状態を表現している。口縁の他の一端には蛇を抽象化したと考えられるような装飾がある。屈折底を除く胴部は縄文によって充填され、顔面把手および他の一端の抽象化した装飾から垂下【すいか】する三条の隆帯が胴部中央まで認められる。なお、胴部下半はその大半を欠失しているが、小片をもとに器形復元されている。 顔面把手付深鉢形土器は、中部高地の縄文時代中期中葉に稀にみうけられるが、器形復元された例は極めて少ない。そのほとんどは深鉢の内側に向いて顔面が付けられ、本遺品のように外向きのものは稀有である。また、器形全体に対し、顔面部の比率が極めて大きいことも特徴的である。 本遺品は補修等も多いが、旧規をよくうかがうことができる。なかでも本器を特徴づけている顔面把手はよく遺存し、その造形は中部地方縄文時代中期にみられる典型例である。外向き顔面把手の稀少性と相まって、その学術的価値は高い。 |
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