鎖状だが強鎖状ではない環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/13 12:45 UTC 版)
強鎖状ではないネーター環の例を作るのは簡単ではない。最初の例は永田雅宜が見つけた、鎖状だが強鎖状ではない2次元ネーター局所整域である。 永田の例は次のようなものである。k を体、S を k 上の形式的ベキ級数環とし、その不定元を x とする。形式的ベキ級数 z = Σi > 0 ai xi を z と x が代数的独立になるものとする。 z1 = z, zi+1 = zi / x – ai と置く。 R を x と全ての zi で生成される(非ネーター)環とする。 m をイデアル (x)、n を x – 1 と全ての zi で生成されるイデアルとする。どちらも R の極大イデアルで、剰余体は k と同型である。局所環 Rm は1次元の正則局所環で、局所環 Rn は2次元のネーター正則局所環である(このことの証明には z と x が代数的独立であることを使う)。 B を m か n に入らない要素全体についての R の局所化とする。B は、2つの極大イデアル mB(高さ1)と nB(高さ2)を持つ2次元のネーター半局所環になる。 I を B のジャコブソン根基とし、A = k + I と置く。環 A は、I を極大イデアルとする2次元の局所整域になっていて、2次元の局所整域は全て鎖状なので、鎖状である。環 A は、B がネーターかつ有限 A 加群なので、ネーターである。しかし A は強鎖状ではない。もし強鎖状であれば、強鎖状環についての次元公式から B のイデアル mB は mB ∩ A と同じ高さを持つはずであるが、後者のイデアルの高さは dim(A) = 2 と等しいからである。 永田の例は準優秀環(英語版)にもなっているので、優秀環(英語版)ではない準優秀環の例にもなっている。
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