錯体 [編集]
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/05/21 01:16 UTC 版)
ウラニルイオンは硬いアクセプターとして振る舞い、水酸化物イオン、炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンのような酸化物イオンまたはフッ化物イオンドナー配位子より、窒素ドナー配位子と弱い錯体を形成する。エカトリアル位には4〜6つのドナー原子が存在する。例えば硝酸ウラニル [UO2(NO3)2]•2H2O では、エカトリアル平面内に二座ニトラト配位子からの4つと水分子からの2つ、合計6つのドナー原子がある。この構造は六角両錐であると表される。他の酸素ドナー原子にはホスフィンオキシドやリン酸エステルがある。 硝酸ウラニルは水溶液からジエチルエーテル中に抽出することができる。抽出された錯体は電荷をもたず、ウラニルイオンと結合した2つのニトラト配位子をもっている。水分子はエーテル配位子と置換され、錯体全体に顕著な疎水性を与える。電気的中性であることは、錯体を有機溶媒に溶かすための最も重要な要因である。硝酸イオンは、遷移金属イオンやランタノイドイオンよりもずっと強固なウラニル錯体を形成する。このため、ウラニルイオンとプルトニルイオン PuO22+ のような他のアクチニルイオンのみを他のイオンを含む混合物から抽出することができる。水溶液中でウラニルイオンと結合している水分子を代わりの疎水性配位子で置換することは、電気的中性な錯体の有機溶媒に対する可溶性を増加させる。これはシナジー作用と呼ばれる。 水溶液中のウラニルイオン錯体は、鉱石からのウランの抽出においても、そして核燃料の再処理においてもともに重要である。工業的には硝酸ウラニルの抽出は、好ましい代替配位子にリン酸トリブチル (TBP)、有機溶媒にケロシンを用いて行われる。このプロセスの後、これを硝酸で処理することによって有機溶媒から分離される。ウランは水相においてより溶解度の高い [UO2(NO3)4]2- のような錯体を形成する。この溶液を蒸発させることによって硝酸ウラニルが再生される。
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