距離ベクトル型としての分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/28 07:41 UTC 版)
「EIGRP」の記事における「距離ベクトル型としての分類」の解説
従来、EIGRPはシスコのマーケティング資料では平衡型ハイブリッドルーティングプロトコルだと説明されていた。ハイブリッドとは、リンクステート型と距離ベクトル型のプロトコルの長所を組み合わせたものと説明されていた。しかし、このような説明は本質的には正しくない。定義によれば、 距離ベクトル型ルーティングプロトコルは、分散型のベルマン-フォード法に基づいて最短経路を求める。ノード間で既知の全送信先についての距離ベクトルを交換しあう。それ以上のトポロジー情報は交換しない。これによって、各ノードはネットワーク内の全送信先を知り、各隣接ノード経由でのそれぞれの送信先への距離を知ることができる。しかし、ノードは実際のネットワークトポロジーを知らないし、それを必要としない。 リンクステート型ルーティングプロトコルは、グラフ理論の最短経路を求めるアルゴリズム(ダイクストラ法がよく使われる)に基づいている。ノード間でノードの接続関係の情報を交換する(基本的には、ノードの隣接関係情報をネットワーク全体に通知する)。したがって、各ノードは正確なネットワークトポロジーを知っており、ネットワークをグラフとして表現できる。このグラフを使い、各送信先への最短経路を求める。 EIGRPルーターは帯域幅、遅延、負荷、信頼性、経路のMTUといった情報を相互にやり取りしている。それぞれのルーターは送信先への距離を計算するためにそれらのパラメータを使用する。メッセージにはそれ以上のトポロジー的情報は存在しない。このような動作原理はまさしく距離ベクトル型プロトコルである。したがって、EIGRPは基本的には距離ベクトル型プロトコルに分類できる。 EIGRPが素朴な距離ベクトル型プロトコルにはない技法をいくつか使っていることは事実である。例えば、以下のようなものがある。 ルーター間の隣接関係を発見し保守する目的で hello パケットを明示的に使用する。 ルーティング更新情報の送信に信頼性のあるプロトコルを使用する。 ループフリーな経路を選択するためにフィージビリティコンディションを使う。 ネットワークの経路に障害や変更が発生したとき、新たな最短経路を計算するための拡散計算を使用する。 これらの技法はEIGRPの基本的動作原理に影響を与えるものではなく、しかも他の距離ベクトル型プロトコルでも似たような技法を使っているものがある(例えばAODVとDSDV)。EIGRPは拡張された距離ベクトル型ルーティングプロトコルだが、ハイブリッドプロトコルではない。 真のハイブリッドのルーティングプロトコルとしてはマルチエリアの Open Shortest Path First (OSPF) プロトコルがある。OSPFはエリア内ではリンクステート型であり、エリア内の正確なトポロジーを使っている。エリア間のルーティングには距離ベクトル型の手法を使っている。
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