緑のダム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/27 03:30 UTC 版)
緑のダム(みどりのダム)とは、広義には、森林の持つ多面的な機能のうち、洪水緩和、渇水緩和、水質保全の3つの機能(特に洪水緩和と渇水緩和の機能)をダムに例えた表現[1]。ただし、学術的な用語ではなく、後述のように使う人や使われた時代によって必ずしも一定ではない[1]。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 蔵治光一郎. “森林の「緑のダム」機能の実態と将来展望”. 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林. 2021年6月4日閲覧。
- ^ “Q19.「森林は緑のダム」と言われるのはなぜですか?”. 北海道森林管理局. 2021年6月23日閲覧。
- ^ 蔵治光一郎+保屋野初子編 『緑のダム――森林・河川・水循環・防災』 築地書館、2004年、iii頁、252頁
- ^ 住 博『自然をケアする仕事がしたい!―現場の本音を聞いて資格と仕事を選ぶ本』 (オフサイド・ブックス) 彩流社 ISBN 978-4882026280、2003年
- ^ a b 虫明功臣 太田猛彦『ダムと緑のダム 狂暴化する水災害に挑む流域マネジメント』日経BP、2019年12月9日、46-52頁。
- ^ 日本学術会議 (2001). 地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について(答申): 91頁.
緑のダム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/13 09:52 UTC 版)
森林の持つ保水機能・水源涵養機能を十分に発揮することにより、ダムと同等の機能を備えることができるという意見がある。「緑のダム」と呼ばれるものがこれに当たり、ダム反対派が推奨している。 森林の有用性とは降雨を土壌に浸透させて水を蓄え、過剰な土砂の流失を防止して洪水調節をすると共に水分を涵養することで水源としての役割を果たす。実際一日の降水量が50mm以下の通常の降雨量であれば、その効力は最大限に発揮される。然し土壌が非浸透性の土質である場合や、一日100mmを超えるような豪雨の場合だと土壌中水分が飽和状態となり、地表を流下する。また、降雨初期の水分は浸透させることが可能だが、降り続くと同様に土壌中の水分が飽和状態となって地表を雨水が流下する。いわゆる「地盤が緩む」状態となる。従って梅雨末期の豪雨や台風時の大雨では洪水調節機能を発揮できないばかりか、がけ崩れや流倒木被害を生み出す恐れがある。1953年(昭和28年)の紀州大水害では流倒木によって日高川の橋梁のほぼ全てが流失する等被害は甚大であった。この流倒木に対しダムは堤体でブロックし下流への被害を抑える効果があり、二風谷ダム(沙流川)や下筌ダム(津江川)等でそれは証明されている。 一方渇水期においては森林の保水力が逆に仇になる。樹木からの水分蒸散促進に伴い土壌中の水分も浸透が促進される。従って適度な水量が河川に流入しなくなり、結果として河川の正常な流量維持が図られなくなる。ダムは貯水している水を定量放流することによって(河川維持用水)下流の水量を維持する。だが、極端な水不足に陥った場合は現状として有効な手立てはなく、新規利水によって水資源を確保する他ないのが現在の状況である。 日本は国土の約70%が森林であり、北欧に匹敵する。だがこれ以上森林面積を拡大することは事実上不可能であり、森林整備に頼る他はない。だが森林整備も過疎化に伴い整備するだけの人員が絶対的に不足しており、長野県のように公共事業が減った建設業者を救済するための森林整備策等限定的なものでしかない。 近年では宮崎県が60年の長期計画で森林の整備を行い治水に役立てたり、国土交通省も「緑のダム」に関する検討を諮問機関に行わせる等、行政も少しずつ動き始めている。 現状では有効性に関する確固たるエビデンスが未知数であるため「緑のダム」に治水・利水を一任するのは難しいとも言われ、一方で今日ではダムのみの整備だけでも困難とされ、寧ろ森林事業とダム等河川総合整備と河川流域整備の連携が求められている。連携なしには本来の機能を果たせない事は、戦後森林不足により招いた洪水の多発が物語っている。
※この「緑のダム」の解説は、「ダムの代替案」の解説の一部です。
「緑のダム」を含む「ダムの代替案」の記事については、「ダムの代替案」の概要を参照ください。
- 緑のダムのページへのリンク