経営破綻とその背景
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2001年11月22日、更生特例法の適用を東京地方裁判所に申請し、受理された。米同時テロなどによる保険金の支払見込額が744億円に膨らみ、9月末時点で398億円の債務超過に陥った。戦後の損害保険会社の破綻は2000年5月に金融監督庁(現・金融庁)から業務停止命令を受けた第一火災海上保険に続いて2社目、損害保険会社の更生特例法の申請は初めてで、大成火災の負債総額は4131億円。 経営破綻に至った経緯は、米同時テロを受け保険会社同士で保険を掛け合う「再保険」取引に数百億円規模の損失が発生したためだ。巨額損失の裏側には、複雑な再保険制度の中でハイリスク・ハイリターンな取引に傾注した姿が浮かぶ。再保険は顧客から預かった保険料の一部を他の保険会社に回し、保険金の支払リスクを肩代わりしてもらう制度。再保険を引き受けた保険会社がさらに別の会社に保険料を回していくこと(再々保険)で、多くの会社間で支払リスクを分散させる仕組みだ。大成火災、日産火災、あいおい損害保険の3社は、再保険取引を専門に手がける米保険代理店フォートレス・リーと組み、他の損害保険会社から保険リスクを引きうける再保険事業を共同で実施していた。事業を始めた1970年代には引き受けリスクをきちんと再々保険に出し、安定的な取引をしていたという。1980年代以降、様相が変わり始めた。世界各地で大規模な自然災害が頻発したことで再保険市場の保険料が高騰、他社から引き受けたリスクを再々保険に回すことが難しくなった。大成火災は「このままでは事業が成立しなくなる」と危機感を募らせた。そこでフォートレス・リーとともに考え出したのが、再々保険料を極端に割安にしてもらう代わりに、万一、事故が起きたときにはその損失を3社が負担する仕組みだった。リスクを外に転嫁するのではなく、自分で丸ごとかぶることにしたわけだ。この時点で保険リスクを複数の保険会社で分散するという再保険の機能は失われた。ただ、そのままでは大きな事故が起きた場合、3社は保険金を支払いきれなくなる恐れがある。このため3社は保険金支払を5年間にわたって分割できるような再々保険を出す保険会社と結んだ。万一、事故が起きても支払負担を5年に分散すれば問題ないと考えたためだ。つまり、3社が考案した仕組みは、リスクを外に出すのではなく自分で抱えたうえで、支払負担を複数年度に分けることで事故を乗り切ろうという狙いだったわけだ。3社にとって支払う保険料が大幅に安くなる一方で、他の保険会社から受け取る再保険料は変わらないため、その利ザヤが大幅に広がって高利回りな取引になる。しかし、事故が起きれば保険金支払負担は丸ごと3社がかぶる。その落とし穴が米同時テロという史上最悪の事故で一気に露呈し、大成火災の破綻という結末に至った。
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