相対的効力の原則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/31 21:25 UTC 版)
債権者と一人の連帯債務者間に一定の事由が生じた場合の債権者と他の連帯債務者との関係(対内的効力)については、連帯債務は同一の内容の債務をその目的とするが、その契約は各債務者ごとにそれぞれ独立のものであるから、各債務者に生ずる法的効果は原則として相対的効力(相対効)しか生じない(441条(旧440条)。相対的効力の原則、債務者独立の原則)。 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で請求、免除、時効完成が相対効となった。 連帯債務者の一人に対する請求を絶対的効力とする旧434条は削除され、相対的効力に変更された。連帯債務者間であっても法令の規定により連帯債務関係が生じた場合には人的関係や協働関係が希薄な場合が多く、他の連帯債務者が全く知らない間に連帯債務の一人に対する請求によって履行遅滞などの効果が生じるのは他の連帯債務者にとって酷であるためである。 連帯債務者の一人に対する免除を絶対的効力とする旧437条は削除され、相対的効力に変更された。2017年の改正前の民法では債権者が連帯債務者の一人に対しその債務を免除した場合にも、その連帯債務者の負担部分の限りで、他の連帯債務者にもその効力が及ぶとされていた(旧437条)。この規定の趣旨としては求償の循環を防ぐことなどが挙げられていた。旧法では、90万円の連帯債務の場合、連帯債務者A・B・C(負担割合が平等の場合)のうちAが債権者Dから免除を受けたときには、Aは免責されるが、Aの負担割合である30万円の限度でBやCも債務を免れる(BとCは残りの60万円を連帯して履行する)とされていた。しかし、連帯債務者の一人に対する免除は、あくまで免除をした連帯債務者に対するもので、債権者が他の連帯債務者の責任を軽減させる意思まで有しているとは限らないと批判されていた。 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では免除と求償を区分して規律し連帯債務の担保的機能の強化が図られた。新法では免除が相対的効力となり、90万円の連帯債務の場合、連帯債務者A・B・C(負担割合が平等の場合)のうちAが債権者Dから免除を受けたときには、Aは免責されるが、BやCは引き続き90万円全額の債務を負うことになる(ただし求償関係についてはBが90万円を弁済すれば新設された445条により免除を受けたAに対して30万円求償できる)。 連帯債務者の一人に対する時効完成を絶対的効力とする旧439条は削除され、相対的効力に変更された。2017年の改正前の民法では連帯債務者の一人のために時効が完成したときは、その連帯債務者の負担部分については、他の連帯債務者にもその効力が及ぶとされていた(旧437条)。この規定の趣旨としては求償の循環を防ぎ決済を簡便に済ませることなどが挙げられていた。しかし、時効の完成に絶対的効力を認めると、債権者は全ての連帯債務者との関係で消滅時効の完成を阻止しない限り債権を保全することができず債権者に酷であると批判されていた。 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では時効完成を相対的効力とし担保的機能の強化が図られ、求償関係については新設された445条により他の連帯債務者は時効が完成した連帯債務者に対し求償権を行使することができるとされた。 なお、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従うとされており、債権者と連帯債務者の特約があれば他の連帯債務者に生じた事由についても効力を及ぼす絶対的効力(絶対効)にすることが認められている(441条ただし書)。
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