旋光
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/19 01:10 UTC 版)
旋光(せんこう、英: optical rotation)とは、直線偏光がある物質中を通過した際に回転する現象である。この性質を示す物質や化合物は旋光性あるいは光学活性を持つ、と言われる。右に回転させることを右旋性、左に回転させることを左旋性と言う。不斉な分子(糖など)の溶液や、偏極面を持つ結晶(水晶)などの固体、偏極したスピンをもつ気体原子・分子で起こる。糖化学ではシロップの濃度を求めるのに、光学では偏光[注釈 1]の操作に、化学では溶液中の基質の性質を検討するのに、医学においては糖尿病患者の血中糖濃度を測定するのに用いられる。
注釈
- ^ 光は、進行方向に対し互いに直交する2つの面内を電場と磁場が同位相で正弦曲線を描いて進行している。今電場のみを考えると、自然光線では電場の進行波が進行方向を含むあらゆる方向の面に対称的に分布している。もし分布が対称的でない場合には、その光は偏光しているという。
- ^ 進行方向が時間に依存しない偏光
- ^ 平面偏光は電場の振幅が右回りの螺旋状に変化しながら進行する光(右円偏光)と、それと同じ振幅を有する左回りの螺旋状に進行する光(左円偏光)で構成されていると見て扱うことができる。
- ^ 光のベクトルは電場ベクトルと磁場ベクトルの外積であるが、偏光の方向は電場の方向で表現される。このページでは光の進行方向と磁場ベクトルを含む面を偏光面、電場ベクトルを含む面を振動面と呼ぶ。
- ^ 位相に差があるとき、偏光面は入射前に比べて左右いずれかに傾く。2つの円偏光の位相が異になるとは、それぞれの進行速度に差があるということである。左右の円偏光が媒質中を等しい速度で進行するときは、2つの円偏光は(入射前の進行方向と重なる直線、円変更の図での上に向かって伸びる矢印上の任意の点から)等しい距離を進行する。その結果、媒質を通過後の2つの円偏光は位相が同じで、それらを合成して得られる平面偏光は媒質に入射する前の面と一致している。
- ^ 入射前の偏光において、測定媒質通過後に偏光が左または右に傾いたなら、その測定媒質をそれぞれ左旋光性、右旋光性と呼ぶ。左旋光性と右旋光性の化合物を区別するときは、右旋光性化合物名の前に (+) あるいは d 、左旋光製化合物の前に (-) あるいは l をおく。
- ^ 実際には旋光計が測っているのは透過光の強度が最小の時の暗位置である。それに90度加えることで実測旋光度を明らかにする。
- ^ 実験対象である光学活性物質を溶媒に混ぜて、その混合物に平面偏光を照射して旋光度の測定を行う(もちろん純物質で扱うこともある)。試料セルはその混合物の入れ物であり、偏光子を通った平面偏光以外の光を遮断している。
- ^ 要するに、試料セル内での光の進行経路の距離
- ^ 旋光度の測定実験において、光源の発した光は偏光子を通ってから試料セルに入射するので試料セルを通ろうとする平面偏光を入射光とも言える。
- ^ Dとは、ナトリウム蒸気灯の橙色のD発光線(通常、単にD線と呼ばれる)であり、一般に旋光度の測定に用いられる。波長 589 nm
出典
- ^ ボルハルトショアー現代有機化学(第4版)[上] (曽根良助 2004年4月発刊)、P.193
比旋光度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 22:34 UTC 版)
旋光の由来は核や結合に存在する電子の電場への干渉である。そのため物質の構造に旋光度は影響を受け、事実旋光度は試料セルの長さ l {\displaystyle \,l} と溶媒とその濃度 c {\displaystyle \,c} 、入射光の波長 λ {\displaystyle \,\lambda } 及び温度 t {\displaystyle \,t} を一定にして物質ごとに測定すると、そのときの実測旋光度(observed optical rotation) α {\displaystyle \,\alpha } は各物質ごとに定められていることが分かる。とはいえ実測旋光度は上で述べた種々の要素に依存するため、混乱を避けるために標準の旋光度すなわち比旋光度(specific rotation) [ α ] {\displaystyle [\alpha ]} は下のように定義されている。 [ α ] λ t = α l ⋅ c {\displaystyle \,[\alpha ]_{\lambda }^{t}={\frac {\alpha }{l\cdot c}}} 比旋光度の次元は L2/M で、単位は(l = 0.1 m = 1 dm = 10 cm, c = 1 g/cm3 なので) 10-1 deg cm2/g である。実測旋光度は度単位で表すのに対し、比旋光度の単位は長くて複雑なので、通常 [ α ] {\displaystyle [\alpha ]} を無単位で表すことが多い。また、溶解度に関する実際的な理由により c {\displaystyle \,c} を 100 mL 中の溶質のグラム数で記載している文献もある。その場合、実測旋光度は100倍されている。 なお、比旋光度を記述する際には、溶媒の種類と濃度を明記する必要がある。例えば [ α ] D 20 + 8.00 ( c 1.00 , {\displaystyle \,[\,\alpha ]_{D}^{20}+8.00(c\,1.00,} エタノール ) {\displaystyle \,)} のように記述する。ところが上に書いたように、試料濃度を表す c {\displaystyle \,c} の単位に g/mL ではなく g/dL を用いる習慣もあるので、比旋光度の式は [ α ] λ t = 100 α l ⋅ c ′ {\displaystyle \,[\alpha ]_{\lambda }^{t}={\frac {100\alpha }{l\cdot c'}}} と表されることもある。このとき c ′ {\displaystyle \,c'} の単位は g/dL である。また、試料セルの長さを表す l {\displaystyle \,l} の単位に dm ではなく mm を用いる習慣もあるので、比旋光度の式は [ α ] λ t = 100 α l ′ ⋅ c {\displaystyle \,[\alpha ]_{\lambda }^{t}={\frac {100\alpha }{l'\cdot c}}} と表されることもあり、式の形としては、上記の式と似ている。このとき l ′ {\displaystyle \,l'} の単位は mm である。試料セルの中身が純液体の場合は試料の密度 ρ {\displaystyle \,\rho } [g/cm3] を用いて [ α ] λ t = α l ⋅ ρ {\displaystyle \,[\alpha ]_{\lambda }^{t}={\frac {\alpha }{l\cdot \rho }}} で表す。 以下に光学活性体の比旋光度 [ α ] D 25 {\displaystyle [\,\alpha ]_{D}^{25}} を示す。ハロアルカンは純液状態で、カルボン酸は水溶液中で測定した値である。 (-)-2-ブロモブタン:-23.1 (+)-2-ブロモブタン:+23.1 (+)-2-アミノプロパン酸((+)-アラニン):+8.5 (-)-2-ヒドロキシプロパン酸((-)-乳酸):+3.8
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