更紗の語源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 03:08 UTC 版)
「さらさ」の語源については諸説あり、決定的な説はない。インド北西部の港であるスラト(Surat)が語源であるとする説が古くからあるが、「スラト」と「サラサ」の音韻には差が大きく、この説は現代ではあまり支持されていない。ポルトガル語のsaraçaが語源であるとする説もある。また、16世紀末のオランダ人、リンス・ホーテンの『東方案内記』に、綿布の名としてsarasoあるいはsarassesという名称が見え、これが語源であるとする説もある。 「更紗」という漢字表記が定着するのは江戸時代末期のことで、それ以前には「佐良佐」「紗良紗」など様々に表記されていた。1713年(正徳3年)刊の『和漢三才図会』では「華布」と書いて「さらさ」と読ませている。この「華布」とは「文様のある布」の意である。また、江戸時代には「更紗」に相当する染織品を「しゃむろ染」とも称し、「紗羅染」「砂室染」などの字をあてている。たとえば、1638年(寛永15年)に刊行された『毛吹草』には「紗羅染」の表記が見られる。シャム(タイ国)方面を経由してもたらされた染物という意味合いで「しゃむろ染」と称されたものであるが、現存遺品を見る限り、こうした染物の大部分はインド製である。
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