旧石器時代資料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/30 14:25 UTC 版)
旧石器時代資料は、弥生時代集落が発見された調査地点の東側で発見されている。地蔵田遺跡の旧石器時代資料は、東北地方における後期旧石器時代前半期の石器群の代表的な例として、研究者の間で注目をされてきた。発掘調査後の調査報告書では概要のみしか報告されなかったが、平成22年度に秋田市教育委員会により再整理事業が行われ、2011年(平成23年)3月に正式報告書『地蔵田遺跡-旧石器時代編-』が刊行された。なお、本報告書は秋田市教育委員会文化振興室ホームページで全文がPDF等で公開されている。 報告書によれば、旧石器資料の総数は4,447点、32,286.615gであり、器種別の内訳は、石斧(局部磨製石斧)4点、ナイフ形石器5点、ペン先形ナイフ形石器22点、台形様石器39点(接合して38点)、サイドスクレイパー8点、エンドスクレイパー4点、ノッチ5点(接合して4点)、鋸歯縁石器7点、二次加工のある剥片18点、石核71点(接合して70点)、礫器9点(接合して8点)、剥片1,555点、チップ2,700点となっている。これらの石材は、約99%が珪質頁岩であり、その他の石材が約1%である。珪質頁岩以外の石材は、石斧・礫器に限られている。 これらの石器から、多数の母岩別資料・接合資料が得られ、剥片生産技術の詳細が判明しており、当該石器群には、明確な石刃技法はみられず、横長・幅広剥片生産技術が主体であることが判明している。 また、石器は14箇所の集中部(ブロック)が認められ、これの集中部(ブロック)が環状に分布し、いわゆる「環状ブロック群」を呈している。地蔵田遺跡の「環状ブロック群」は、直径約30mで、全国的にみると中規模なものといえる。 以上のような特徴から、地蔵田遺跡の旧石器時代資料は後期旧石器時代前半期のものと考えられる。 。また、石器ともに出土した炭化物片3点の放射性炭素年代測定から、次のような年代が得られている。 地蔵田遺跡旧石器資料放射性炭素年代測定値測定資料名C14年代(yrBP)暦年較正年代(1σ)(calBP)暦年較正年代(2σ)(calBP)C-1【IAAA-103442】(ブロック3出土)29,720±130yrBP 34,722~34,450calBP(61.0%) 34,277~34,193calBP(7.2%) 34,776~33,978calBP(95.4%) C-65【IAAA-103443】(ブロック4出土)30,110±140yrBP 34,859~34,626calBP(68.2%) 35,021~34,545calBP(95.4%) C-25【IAAA-103243】(ブロック7出土)28,080±120yrBP 32,611~31,950calBP(68.2%) 32,859~31,685calBP(95.4%) ※暦年較正年代については、Intcal09データーベースとOxCalv4.1較正プログラムを使用 C-1およびC-65の試料によるC14年代で約30,000yrBPという値が、石器の年代を示すものと考えられ、暦年較正年代で約34,000~35,000年前と考えられる。 ブロック別に石器器種の組成では、ナイフ形石器・ペン先形ナイフ形石器・台形様石器が環状ブロック群の中央部に集中し、石斧・礫器は環状ブロック群の周辺部に分布している。また、3箇所の石器集中部では、被熱を受けた石器と炭化物片の集中地点もみられ、火の使用があったことが推定されている。
※この「旧石器時代資料」の解説は、「地蔵田遺跡」の解説の一部です。
「旧石器時代資料」を含む「地蔵田遺跡」の記事については、「地蔵田遺跡」の概要を参照ください。
- 旧石器時代資料のページへのリンク