対英払戻措置と共通農業政策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/05 02:19 UTC 版)
「共通農業政策」の記事における「対英払戻措置と共通農業政策」の解説
本来イギリスは、マーガレット・サッチャー政権が1984年に導入に漕ぎ着けたイギリスへの毎年の払戻制度がなければ、当時加盟国の中でも3番目に貧しい国だったにもかかわらずEC予算において最大の純拠出国となっていたはずだった。対英払戻制度が導入されたことによって、フランスは払戻金の31%を支払うことになり、この割合は加盟国の中で最大で、ついでイタリアの24%、スペインの14%と続く。 共通農業政策関連支出の格差はイギリスの不満を招いている。2004年には、国別の共通農業政策関連支出先の割合においてイギリスが9%である一方で、フランスは22%となっている。これは額に直すと、フランスはイギリスに比べて63億7000万ユーロ多く受け取っていることになる。これはフランスの面積がイギリスに比べて2倍以上であることを反映したものである。これに対して対英払戻金は2005年度でおよそ55億ユーロとなった。イギリスでは、共通農業政策が改革されずに対英払戻金だけが削減されていれば、イギリスは非効率的なフランスの農業を支えるために拠出金を払うことになっていたという見方が一般的となっており、イギリス国民の多くは著しく不公平なものであると考えている。そのため対英払戻金にかんしてフランスが「結束」と「わがまま」というような議論を作り出そうとしていることは、イギリスにおいてはフランスがきわめて利己的であるというように映っている。 仮に共通農業政策が変更されずに対英払戻措置だけが廃止された場合、2003年度の予算で試算するとイギリスの純拠出額はフランスのおよそ30倍となっていた。対英払戻制度があった場合でのイギリスの純拠出額は27億6300万ユーロであるが、払戻制度がなかった場合は79億4800万ユーロで、このときのフランスの純拠出額は2億6900万ユーロとなるのである。 2005年12月、イギリスは2007年から2013年のEU予算期間において対英払戻金を約20%削減することに合意した。このときイギリスは、削減された払戻金は共通農業政策関連予算に充てず新規加盟国の発展に使うこと、他国の拠出額と比較してイギリスの拠出額が調整されることを条件に挙げている。このとき共通農業政策関連支出は従来どおりに行うことが合意されており、全体としてみると共通農業政策関連支出がEU予算に占める割合は小さくなった。あわせて欧州委員会がEUの支出を見直すということも合意された。
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