密度演算子の時間発展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 07:30 UTC 版)
詳細は「密度行列」を参照 NMRの観測は磁化ベクトルの変化を検出することによって行なう。磁化ベクトルは試料内の個々の核スピンから生じる磁気双極子モーメントの総和である。よってNMRは理論的には核スピンの集団の磁場に対する応答として記述される。このような集団の状態は量子力学では密度演算子によって記述される。 密度演算子の時間発展を表す方程式はリウヴィル=フォン・ノイマン方程式である。この方程式には注目しているスピン系とその周囲の環境(格子と呼ばれる)全体を記述する密度演算子が含まれている。しかし、通常NMRの挙動を解析するためには注目しているスピン系の情報さえ分かれば充分である。そこで次のような、スピン系のみの簡約化された密度演算子に対する変形したリウヴィル=フォン・ノイマン方程式が用いられる(なお、ここでは式はNMR分野での慣用に従い、ディラック定数を省略してエネルギーを角周波数単位で表す方法を用いている)。 d d t ρ = − i [ H , ρ ] − Γ { ρ − ρ 0 } . {\displaystyle {\frac {d}{dt}}\rho =-i\left[H,\rho \right]-\Gamma \left\{\rho -\rho _{0}\right\}.} ここで、ρ はスピン系の密度演算子、H はスピン系のハミルトニアン、Γ は緩和を表す演算子、ρ0 は熱平衡状態のスピン系の密度演算子である。スピンの x 成分、y 成分、z 成分の統計的期待値は、Ix, Iy, Iz をそれぞれスピンの x, y, z 成分の演算子とすると、それぞれ ρ⋅Ix, ρ⋅Iy, ρ⋅Iz の行列表現のトレースに等しい。 ⟨ I x ⟩ = Tr { ρ I x } , ⟨ I y ⟩ = Tr { ρ I y } , ⟨ I z ⟩ = Tr { ρ I z } . {\displaystyle {\begin{aligned}\langle I_{x}\rangle &=\operatorname {Tr} \{\rho I_{x}\},\\\langle I_{y}\rangle &=\operatorname {Tr} \{\rho I_{y}\},\\\langle I_{z}\rangle &=\operatorname {Tr} \{\rho I_{z}\}.\\\end{aligned}}} スピンにより生じる磁気双極子モーメントはスピンの期待値ベクトルと γ(h/2π) の積となる。さらに磁化ベクトルは磁気双極子モーメントと系内の核スピンの個数の積となる。
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