子供好きのルース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 03:38 UTC 版)
ルースは私生活でも派手好きで粗暴な性格ではあったが、その反面、子供が大好きで、ファンサービスに熱心だったことでも知られている。ルースの打ったファウルボールがファンの少年の抱いていた子犬に当たって、あとでその子犬を見舞いに行ったことがあった。 また、ジョニー・シルベスター(英語版)という野球好きの少年が落馬し、それが原因で瀕死の状態であった。両親が、ジョニーが好きだったルースに励ましてもらおうと、無理を承知でヤンキースに連絡をとると、ワールドシリーズの最中に、ヤンキースのメンバーのサインボールと、ルースが「水曜日の試合で君のためにホームランを打つ」と書いたボールが送られて来た。結果、3本塁打を放っている。このエピソードは「約束のホームラン」か、それに類するタイトルで、ほぼすべてのルースの伝記で取り上げられている。映画では直接会いに行ったことになっているが、それは史実とは異なる。もっとも、翌年のシーズン終盤にジョニー少年の叔父と名乗る老紳士が、その後のジョニーが順調に回復していることを報告して礼を述べた際に、ルースは「それは良かった」と喜んでみせたものの、紳士が帰った後にそばにいたチームメイトに「ジョニー・シルベスターって、聞いたことのある名前だけど誰だい?」と尋ね、呆れたチームメイトが「君が去年見舞って約束のホームランを打った少年じゃないか。」と教えると、「そういや、そんなこともあったっけな。」と平然としていたという話が残っている。その後、ジョニーとルースが再会したのは、ルースが晩年に病気のために入院していたときで、かつての病弱な少年はたくましく成長し、海軍に入隊するまでになっていた。 ルースが子供たちに優しかったのは、貧しい下町の不良少年だった彼自身の生い立ちと深い関係があり、彼はファンの子供たちを幼い頃の自分と重ねて見ていたといわれる。実際、ルース見たさにヤンキー・スタジアムへ来るものの、お金がなくて入場券を買うことができず、外に立ち尽くしている貧しい子供たちの姿を見て、ルースは彼らを気の毒に思い、係員に札束を渡して、「これであの子たちに入場券を買ってやれ」と促したこともあった。また、友人と共にゴルフ場に行ったときには、入口付近でルースを見つめる2、3人の子供の姿を見て、「君らも来いよ。今日はいいプレイができそうだぞ」と誘い、子供たちと談笑しながらラウンドを回り、休憩時にはお菓子とジュースを振る舞ったという。 ルースはいかなる有名人に対しても頭を下げず、むしろ挑戦的・尊大な態度を示していたが、子供たちの話題には弱かった。ルースが暴飲暴食、不規則な生活で練習を怠け、成績不振の状態が続いていた1922年の11月、そんなルースを励ますパーティーの席上で一人の議員(後にニューヨーク市長になったジミー・ウォーカー)から「国中の子供たちがラジオに耳を押し付けて、君を英雄のように思いながら君のプレイを楽しみにしているんだ。その英雄がこんな体たらくで、子供たちを失望させていいのか」と詰問されたときには、ルースは涙を流して反省し、それまでの生活態度を改めて再び練習に打ち込むようになったという。
※この「子供好きのルース」の解説は、「ベーブ・ルース」の解説の一部です。
「子供好きのルース」を含む「ベーブ・ルース」の記事については、「ベーブ・ルース」の概要を参照ください。
- 子供好きのルースのページへのリンク