可積分概複素構造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/08/23 13:12 UTC 版)
複素多様体はすべて概複素多様体である。局所正則座標 において、次の写像を定義できるからである。 この写像が概複素構造を定義することは容易にチェックできる。このように、多様体上の任意の複素構造は概複素構造を定義し、この概複素構造を複素構造によって「引き起こされた」といい、複素構造を概複素構造と「整合性を持っている」と言う。 逆の質問になるが、概複素構造が複素構造の存在を意味するかどうかは、全く自明なことではなく、一般には正しくない。任意の概複素構造の上で、概複素構造が上記の標準形式を任意の与えられた点 p でもつような座標を見つけることができる。しかし一般には、J が p の完全な近傍で標準形式をとるような座標を見出すことが不可能である。そのような座標は、もし存在するとしたら、「J の局所正則座標」と呼ぶ。M がすべての点で J の局所正則座標を持つようであれば、これらを貼り合わせて M に複素構造を与え、さらに J を引き起こすような正則貼り合わせ写像(英語版)を形成する。よって J は可積分(英語版)(integrable)という。J が複素構造によって引き起こされたのであれば、唯一の複素構造によってのみ J が引き起こされる。 M の各々の接空間上に任意の線型写像 A が与えられると、つまり、A はランク (1, 1) のテンソル場であるとすると、ナイエンハンステンソル(Nijenhuis tensor)はランク (1,2) のテンソル場で、次の式で与えられる。 ベクトル場のリー括弧を一般化したフローリッヒ・ナイエンハンスの括弧(英語版)(Frölicher–Nijenhuis bracket)の項で、ナイエンハンステンソル NA はちょうど [A, A] の半分である。 ニューランダー・ニレンベルグの定理(Newlander–Nirenberg theorem)は、概複素構造 J が可積分であることと、NJ = 0 であることは同値であることを言っている。上で議論したように、整合性のある複素構造は一意である。可積分な概複素構造の存在と、複素構造の存在は同値であるので、これは複素構造の定義に使われるときもある。 ナイエンハウステンソルがゼロになること、従ってこれと同値ないくつかの他の基準も存在していて、概複素構造の可積分性をチェックする方法が確立している(実際、これらのそれぞれは文献の中にあります)。 2つの (1, 0)-ベクトル場のリーの括弧は、再び、タイプ (1, 0) である これらの条件は、一意に整合性を持つ複素構造の存在を意味する。 概複素構造の存在は、トポロジカルな問題であり、上記の議論したように比較的答えやすい。一方、可積分な概複素構造の存在は、非常に難しい解析的な問題である。例えば、S6 は概複素構造をもつことが知られているが、しかしいまだに、可積分な概複素構造を持つか否かは知られていない。滑らかであることは重要である。実解析的な J に対し、ニューレンダー・ニレンベルグの定理はフロベニウスの定理(英語版)(Frobenius theorem)から従う。C∞ (で、少なくとも滑らかんな) J が解析では要求される(テクニカルなより難しい要求としては、正規性仮説により弱めることができる)。
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