出版の経緯と物語の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/24 09:15 UTC 版)
「農夫ジャイルズの冒険」の記事における「出版の経緯と物語の特徴」の解説
この作品は『ホビットの冒険』や『仔犬のローヴァーの冒険』と同様に、トールキンが自分の子供達へ聞かせた物語を元に書かれたものの一つである。第一稿の文体や表現手法から初めて書き下されたのは『仔犬のローヴァーの冒険』とほぼ同時期の1927年後期と推測され、その内容は出版された本著に比べて短く、また平易で子供向けな内容であった。1937年に出版された『ホビットの冒険』の成功を受けて、出版元のアレン・アンド・アンウィン社はその続編の執筆を打診してきた。トールキンとしてはむしろ自分の創造神話である『シルマリルの物語』の出版を望んでいたが内容が「子供向け」ではなく、出版元や読者の要望を満たすものではなかった。トールキンは期待に応えるべく『新ホビット』(後の『指輪物語』)の執筆に着手するものの、目標としていた1938年末までに出版出来る目処が立たなくなり、代替として出版元へ提示したものがこの物語であった。改稿と加筆を進めるうちに『ホビットの冒険』の改稿時に行ったように、トールキンは読者へ問いかけるような「子供向け」の表現を排除していき、登場人物や重要な武器に対する言語学者である彼らしい言葉遊びを使った命名や、いかにもまことしやかなウソ学説を散りばめて、風刺の効いた中世英雄物語のパロディーとして仕上げた。また作中の日付も「何月何日」ではなく、昔の物語である雰囲気を出す為に聖人の祭日が用いられている(但し日本語訳では聖人の日が定着していないため日付が付け加えられている)。本自体も中表紙も「短い表題→ラテン語の長い表題→英語の長い表題」と、上から下に下るにつれて古い字体から新しい字体へ変えて行く写本の手法を取り入れてみたり、ポーリン・ベインズの挿絵を写本風に配置するなど遊び心に溢れており、「大人にも楽しめる物語」になっている。
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