ワクシニアE3Lタンパク質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/10 07:53 UTC 版)
「Z-DNA」の記事における「ワクシニアE3Lタンパク質」の解説
Z-DNAの研究が進むにつれ、Z-DNA構造はロンドン分散力と水素結合によってZ-DNA結合タンパク質と結合することが発見された。Z-DNA結合タンパク質の例としては、ワクシニアウイルスのE3Lタンパク質がある。このタンパク質はE3L遺伝子の産物で、Z-DNAに結合する哺乳類タンパク質を模倣する。E3Lタンパク質はZ-DNAに対する親和性を有するだけなく、マウスではワクシニアウイルスのビルレンス強度にも関係していることが示されている。E3LのN末端領域はZαドメインに類似した配列から構成されており、アデノシンデアミナーゼZαドメイン(英語版)とも呼ばれる。一方C末端領域は二本鎖RNA結合モチーフから構成される。MITのKimらによる研究によって、E3LのN末端をADAR1のZαドメインへの置換は、マウスにおけるウイルスのビルレンスにほぼ影響を与えないことが示された。この置換によって約50アミノ酸が変化したが、Z-DNA結合残基を含む14残基は同一であった。一方、E3LのN末端の83残基全てを欠失させると、ビルレンスは低下した。これらのことは、E3LのN末端とZαドメインの類似したZ-DNA結合残基はワクシニアウイルスのビルレンスを決定する最も重要な構造的因子である一方、Z-DNAの結合に関与していないアミノ酸残基はほぼ影響がないことを示している。またこれらは、ワクシニアウイルスを含むワクチン中のE3LのZ-DNAへの結合を低下させることで、ウイルスに対する有害反応の最小化を行える可能性を示唆している。 さらにアレクサンダー・リッチとJin-Ah Kwonは、E3LがヒトのIL-6、NFAT、p53遺伝子のトランス活性化(英語版)因子として機能することを発見した。彼らは、E3Lを含むHeLa細胞ではIL-6、NFAT、p53遺伝子の発現が増大し、特定のZ-DNA結合残基の点変異や欠失によってその発現が低下することを示した。特にTyr48とPro63の変異では、E3LとZ-DNAとの間の水素結合とロンドン分散力の喪失によってトランス活性化が低下することが判明した。これらの結果は、Z-DNAとZ-DNA結合タンパク質の間の結合や相互作用の減少によってビルレンスと遺伝子発現の双方が低下することを示しており、これらの結合の重要性を示している。
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