ラッセルとムーア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/06 20:04 UTC 版)
20世紀初頭、フレーゲの論理学に基づく数学基礎論に批判を加え、新たな数理哲学を展開したバートランド・ラッセル(Bertrand Russell 英)は、さらに「確定記述 (definite description)」について、それを分析する。確定記述とは、「the present king of France(現在のフランス王)」 のように記述の形をとりながら事実上固有名詞のように唯一の存在を名指す機能をもつ語法のことである。ラッセルは「指示について 'On Denoting'」において、「現在のフランス王は禿げである」という命題は現時点でフランス王が存在しないので真とも偽ともいえないように思われるので問題であるが、「Xがフランス王であり、かつXが禿げである、そのようなXが存在し、しかもただ一人存在する」という諸命題の連言として解釈することによって、一応の解決をもたらした。 この瞬間、哲学上の問題を言語分析により解消するという分析哲学の基礎が打ち立てられたといえる。また同時期、ラッセルのケンブリッジにおける同僚ジョージ・エドワード・ムーア(George Moore 英)は「倫理学原理 "Principia Etica"」において、「良い (good)」という語の使用法の詳細な分析を行い、当時英国で英国経験論者を中心に信奉されていた考えと違い、「良い」という倫理的価値語は「益がある・好ましい (preferable)」などの自然的記述語には還元できないと論じた(自然主義的誤謬の項参照)。それにより、日常言語の使用法の記述による哲学的問題の解決を行った。 なお、ラッセルが展開した数理哲学については、『プリンキピア・マテマティカ』 (『数学原理』、"Principia Mathematica") を参照。この本は、アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド(Alfred North Whitehead 英)との共著。
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