プロセニアム・アーチの影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/08 08:03 UTC 版)
「プロセニアム・アーチ」の記事における「プロセニアム・アーチの影響」の解説
プロセニアム・アーチの存在はそこで上演される演劇に多大な影響を与えた。舞台装置の面では、アーチにとりつけられる幕が、大掛かりな舞台転換を容易にするなど様々な効果をもたらした。多幕ものの戯曲が書かれるようになったのも、劇場に幕が登場してからだという説がある。また、アーチの裏側の左右に副舞台が設けられ、大きな舞台装置を隠すことも可能になった。さらにプロセニアム・アーチは舞台上部にとりつけられた照明装置や、上から吊り下げる舞台装置などを隠す役割も果たした。これにより、それまで簡素なものが中心だった舞台装置はより華美になっていった。 演技の面では、プロセニアム・アーチに囲まれた垂直面(舞台前面)が、舞台と客席とをはっきりと区切る「第四の壁」として意識される。観客は、奥の壁と左右の壁に囲まれた舞台という閉じた空間で行われていることを、透明な第四の壁を通して見ることになる。このような演技空間では、俳優は観客があたかも存在しないかのようにふるまう。観客も、舞台の上で行われている演劇に対し、別の世界で起こっている出来事を覗き見しているものと考えて物語に没入するようになり、いちいちこれは俳優が演じるお芝居であると意識したり、こんな出来事はありえないと現実の感覚を持ち込んだりすることをやめるようになる(不信の宙づり(英語版))。 プロセニアム・アーチの出現によって、演技の質はもちろん戯曲や演出、そして観劇体験の質も大きく変わっていった。 プロセニアム・アーチは舞台と観客を区切るものである。プロセニアム・アーチのない舞台では、観客と俳優は同空間に位置しており、観客は俳優の演劇をより身近なものとして味わうことができる。また、舞台上の劇世界は観客と俳優によって共有され、なんらかの相互作用が生まれやすい。 これに対しプロセニアム・アーチのある舞台では、観客と俳優はそれぞれ異なる空間に位置していると言える。全ての観客は基本的に一方から、プロセニアム・アーチという額縁を通して劇を見る。座る位置による見栄えはそれほど変わらず、それ故にアーチのない劇場よりも遙かに多くの観客席をつくることが可能となる。また舞台上の劇世界は、プロセニアム・アーチという額縁を通した絵画的・客観的なものとして提示される傾向が強まる。
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