三省堂 大辞林 |
えんぎ 1 【演技】
(1)俳優などが舞台で芸を演じて見せること。また、そのわざ。
「悪女役を巧みに―する」
(2)スポーツや競技で、一定の方式にしたがって、選手が演じる技。
「模範―」
(3)いかにもそれらしく振る舞うこと。いつわりの態度。
「彼女の涙は―だった」
物語要素事典 |
演技
★1.道化を演じる。
『人間失格』(太宰治)「第一の手記」~「第二の手記」 人間の営みがわからない、空腹感すら理解できない「自分(大庭葉蔵)」は、自らの異質性を隠蔽するために幼い頃から道化を演じ、家族や級友を笑わせていた。ところが中学校の体操の授業で、「自分」が鉄棒につかまりそこねて砂地に落ち、皆を笑わせた時、竹一という低能の級友が「ワザ、ワザ」と囁いて、それが演技であることを見抜いた。
『十訓抄』第10-77 白河院の時、九重塔の金物に牛の皮を使ったとの噂が立ち、修理担当の定綱朝臣が問責されそうになった。院が、噂の実否を確かめるため仏師を塔に登らせると、仏師はおびえ、塔の半ばから返り降りてしまった。院は笑い、定綱問責の件も沙汰止みになったが、実はこれは、仏師がわざと臆病なふりをして定綱を懲罰から救ったのだった。
『黄金伝説』55「聖アンブロシウス」 裁判官アンブロシウスは、町の人々から司教になるよう請われる。彼は人々の考えを変えさせるため、大勢を拷問にかけたり異教徒のふりをしたり、果ては、娼婦を公然と家に入れるなどのことをする。
『閑居の友』上-12 近江国石塔の中年僧が、ある後家の宅を常に訪れ、女犯の噂がたって寺房を追い出される。実は、人との交わりを避けて念仏・観想に専心するため、ことさら破戒僧のごとくふるまったのだった。
『撰集抄』巻2-4 師大納言経信のもとを六十歳ほどの僧が訪れて物を乞い、「女と関係して寺を追われた」と述べて去る。この僧は花林院の永玄僧正で、遁世の志深く、官主にされそうになったのを嫌い、寺を出て流浪していたのだった。
『発心集』巻1-11 老年の聖が四十歳ほどの後家を妻に迎え、六年後に死ぬ。その間夫婦の交わりはなく、法門を談じ念仏を唱えて、臨終時には仏像の手に五色の糸をかけ、眠るごとき最期であった。
『発心集』巻1-12 美作守顕能のもとを僧が訪れ、愛人が懐妊して産み月にあたるので、と述べ食物を請う。深谷の庵に帰った僧は「仏のお助けで安居の間の食料を得た」と独り言して、夜もすがら法華経を読む〔*『古事談』巻3-104に同話〕。
『仮名手本忠臣蔵』9段目「山科閑居」 加古川本蔵は、塩冶判官が殿中で高師直を斬ろうとするところを、抱きとめた。そのことで塩冶の家来たちは本蔵を恨み、大星由良之助の息子・力弥と、本蔵の娘・小浪との婚約が破棄された。雪の日、本蔵は山科の由良之助を訪れて、ことさらな悪口雑言を吐き、怒った力弥の槍にわざと刺される。本蔵は、「私が死ぬことで、これまでの恨みを捨て、娘・小浪を力弥の嫁として受け入れてほしい」と請う。
『源平布引滝』3段目「実盛物語」 源氏の白旗を守る小まんは、琵琶湖で、旗を握る片腕を斬り落とされて死ぬ。引き上げられた小まんの遺骸を、平家方の瀬尾十郎が足蹴にし、小まんの子太郎吉にわざと討たれる。瀬尾は小まんの実の父であり、孫にあたる太郎吉に初手柄を立てさせようとしたのであった。
『摂州合邦辻』「合邦内」 俊徳丸殺害の陰謀を知った継母玉手御前は、彼を救うために、偽りの恋をしかけ毒酒を飲ませて、癩病にさせる。 玉手は父親の眼前で俊徳丸に迫り、父の刃にわざと刺される。寅の年寅の月寅の日寅の刻に誕生した玉手の血を用いれば、俊徳丸の病気は本復するからである。
『南総里見八犬伝』第4輯巻之3第36回~巻之4第37回 指名手配中の犬塚信乃を、犬田小文吾がかくまう。小文吾の義弟にあたる山林房八が「役所へ訴え出る」と言い、小文吾に斬りかかる。しかし房八は、逆に小文吾に斬られて倒れる。それは房八が望んだことであり、彼は命を捨てて信乃を救うつもりだった。房八は小文吾に、「こうでもせねば、お前はおれを斬るまい。おれの顔は信乃に似ているから、おれの首を信乃だといつわって差し出せ」と言い残し、死ぬ。
『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』(河竹黙阿弥)「浜松屋」 娘姿の弁天小僧と供侍の南郷力丸が浜松屋をゆすっている場へ、日本駄右衛門が現れて、二人の正体をあばき店から追い払う。しかし、駄右衛門・弁天・南郷は皆盗賊の一味で、浜松屋に駄右衛門を信用させるために芝居をしたのだった。
『大鏡』「時平伝」 過差(=贅沢)の制の厳しい折、左大臣藤原時平が禁制を破った華やかな装束で参内する。醍醐帝がこれを見咎め、「退出せよ」と命じ、時平は恐懼して一ヵ月ほど謹慎する。これは世間の過差を鎮めるため、時平と帝が心を合わせてしたことだった〔*『心中宵庚申』(近松門左衛門)上之巻「城主饗応」に類似の物語がある〕。
『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)「発端」 弥次郎兵衛と女房おふつの家を、駿河武士とその妹が訪れる。武士は「妹と弥次郎兵衛はかつて国元で密かに通じていたゆえ、是非二人を夫婦にさせる」と言うが、弥次郎兵衛は「女房おふつを捨てて新たに妻を持つことなど、できぬ」とはねつける。二人のやりとりを聞いたおふつは、自ら身を引く決心をし、去り状を取って出て行く。実は武士も妹も弥次郎兵衛の仲間で、おふつを離縁するために、三人で一芝居打ったのだった。
『不連続殺人事件』(坂口安吾) 歌川一馬の山邸に、文学者・画家・女優など十余名が呼び寄せられる。画家土居光一は、一馬の妻あやかと同棲していたことがあるが、今では光一とあやかは犬猿の仲で、罵りあい派手な喧嘩をする。しかしそれは人々の目を欺く演技であり、二人は共謀して連続殺人を犯す。その最終目的は、一馬を殺して財産を二人のものにすることだった。
『義経千本桜』2段目「渡海屋」 義経一行が渡海屋銀平のもとに身を寄せ、船出の日和待ちをする。北条の武士が来て「義経征討のため船を貸せ」と言うが、銀平は「先客もあるゆえそれはできぬ」と断り、争った末、武士を追い払う。実は銀平は平知盛、北条武士はその手下で、彼らは芝居をして、義経が銀平を味方と思うよう仕組んだのだった。
『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』第5話 免罪符売りが村人たちに免罪符を頒布しようとすると、彼の仲間である警吏が「その免罪符は偽物だ」と非難する。免罪符売りは「あの男に天罰を与え給え」と神に祈り、警吏は泡をふいて倒れる。免罪符を頭の上に置かれて警吏はようやく回復し、これを芝居とは知らぬ善男善女は、こぞって免罪符を買い求める。
*友達どうしである赤おにと青おにが、けんかのふりをする→〔鬼〕8の『泣いた赤おに』(浜田広介)。
『ぐるでだます』(昔話) 旅の男が、雄の三毛猫を買いたいと言って、金持ちの婆に手付金十両を渡す。翌日、男の仲間が、雄の三毛猫を婆に四十両で売りつける。
『耳袋』巻之9「多欲の人かたりに逢ひし事」 男が菓子商人の店で饅頭二百文を買い求め、「代金を忘れたので取って来る」と言って、脇差しをカタに置いて去る。その後に侍が菓子折を注文しに来てその脇差に目を止め、「これは百両もする名刀だ」と商人に教える。商人は欲にかられ、代金を持って来た男に三十両を支払って脇差しを買い取る。実は男と侍は仲間で、安価な脇差しを高く売りつけるべく芝居をしたのだった〔*『半七捕物帳』(岡本綺堂)「仮面(めん)」が、道具屋の古面を巡って、途中までこれと同様の展開をする〕。
『裏切り者と英雄のテーマ』(ボルヘス) 革命の指導者キルパトリックが裏切り行為をして、同志たちから死刑を宣告される。しかしキルパトリックの卑劣さが外部に知られると、革命運動そのものが挫折するので、「英雄キルパトリックが暗殺者の銃弾に倒れる」という筋書きを作り、大勢がそれを演じる。キルパトリックも、自らの死を栄光あるものにするため熱心に演技し、筋書きどおりに殺される。
『オリエント急行殺人事件』(クリスティ) 極悪人カセティがアームストロング家の幼女を誘拐して殺し、その両親をも死にいたらしめるが、証拠不十分で釈放される。アームストロング家の縁者十二人が復讐を誓い、名前を偽り職業を変えて、カセティが乗るオリエント急行の寝台車に偶然乗り合わせたようによそおう。十二人は短剣でカセティを一刺しずつ刺して殺し、互いのアリバイを証明し合う。
★7a.茶番。仲間同士が示し合わせ、大勢の人がいる所で仇討ちや身投げなどの騒ぎを起こし、最後にオチをつけて、「何だ。芝居だったのか」と皆を驚かせ面白がらせる趣向。江戸時代後期に流行した。
『花暦八笑人』(瀧亭鯉丈)初篇1~2 遊び人たちが、人殺しの浪人・仇討ちの巡礼・旅の六部(=修行者)などの扮装をして、花見客でにぎわう飛鳥山へ行く。浪人と巡礼が斬り合い、そこへ六部が仲裁に入って、笈の中から酒や肴を出す。皆は仲良く酒盛りをして花見客を驚かす、という趣向である。ところが六部の来るのが遅れ、おまけに本物の武士が現れて巡礼に助太刀する。浪人も巡礼も逃げ出し、茶番は失敗に終わる。
『花見の仇討ち』(落語) 遊び仲間たちが上野の花見に繰り出して、仇討ちの茶番を演じる。ところが仲裁の六部が来る前に、本物の武士が現れて助太刀を申し出るので、敵(かたき)役の浪人はもとより、仇を討つはずの巡礼も、こわがって逃げる。武士が巡礼に「逃げるには及ばぬ。勝負は五分(ごぶ)と見えたぞ」と呼びかけると、巡礼は「肝心の六部が見えませぬ」。
『銭形平次捕物控』(野村胡堂)「花見の仇討」 商家の若主人と仲間たちが、花見時の飛鳥山で仇討ちの茶番(*→〔演技〕7a)を演じる。若主人に恨みを抱く者がこれを利用し、敵(かたき)役の虚無僧姿になり、天蓋で顔を隠して、巡礼役の若主人を斬り殺す。犯人は茶店の娘で、犯行後、父親の茶店に身を隠して着替えた。
*素人芝居を利用して、人を殺す→〔芝居〕5の『半七捕物帳』(岡本綺堂)「勘平の死」。
★8.いつわりの恋。
『戯れに恋はすまじ』(ミュッセ) 男爵の一人息子ペルディカンは、従妹カミーユの気をひくために、カミーユの乳姉妹である村娘ロゼットに恋をしかける。ロゼットはペルディカンとの結婚を夢見るが、ペルディカンの求婚が一時的な気まぐれに過ぎなかったことを知って自殺する。
『藤十郎の恋』(菊池寛) 傾城買狂言の名手坂田藤十郎は新たな芸境を拓くべく、人妻と命がけの不義をする茂右衛門役に挑む。演技の工夫のつかめぬ藤十郎は、茶屋の一室で人妻お梶にいつわりの恋をしかける。しかし、お梶が覚悟を決めて行燈の灯を消すと、藤十郎は逃げ去る。興行が始まって藤十郎の芸は大評判をとり、お梶は縊死する。
ウィキペディア |
演技
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2010/04/16 00:44 UTC 版)
演技(えんぎ)とは、それを見る者がいる前提において、身体による技術を見せ、何かを表現する行為。
- 1 演技とは
- 2 演技の概要
品詞の分類
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- 演技と演出 (講談社現代新書) 平田 オリザ 講談社
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