ウイルスによる病原菌の弱体化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/22 00:24 UTC 版)
「クリ胴枯病」の記事における「ウイルスによる病原菌の弱体化」の解説
1950年代、イタリアにおいて奇妙なヨーロッパグリ(強感受性種)が発見されたことがイタリア人学者Antonio Biraghiによって報告された。萌芽更新した芽も5年もしないうちに菌に再感染して枯死を繰り返すような胴枯病激害地であるにも関わらず、その個体には胴枯病の典型的症状がほとんど見られないばかりか病気が治癒した痕跡さえ残っていた。フランス人菌類学者Grenteらがこの個体からサンプルが採取し分析した結果、このクリの病原菌はある種のウイルスに感染しており弱体化していたことが報告された。この弱体化現象はhypovirulence(病原性の低下)、ウイルスはCryphonectria hypovirus(通称CHV、以下この名称を使用)と名付けられた。 CHVをはじめとした菌類に感染するウイルスは「マイコウイルス」と呼ばれ、基礎・応用問わず各分野での研究が進んでいる。。CHVは著名な病害の特効薬であるという点以外にも他のウイルスに比べ、宿主・ウイルス共にゲノム解読済み、生活環が短い、感染すると宿主菌に可視的な変化が出るなどいくつかの利点があり、マイコウイルス分野でのモデル生物として活用されている。 CHVの応用利用についても研究がすすめられ、強病原性菌に感染したクリに対してCHV陽性(感染済み)の弱病原性菌を接種してやるとCHVが強病原性菌に感染し弱病原性菌に変化、結果としてクリの症状が緩和され治癒するなどの方法が実用化されている。しかし、逆にCHV陽性弱病原性菌を事前接種することでクリに免疫をつけようというワクチンのような試みは上手くいっていない。 1977年にはアメリカにおいても弱病原性菌が発見され、鑑定の結果ヨーロッパのものとは違う系統だと判明した。
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