『悲しみの歌』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 08:06 UTC 版)
追放中のトミスにて詠まれた『悲しみの歌』(Tristia、トリスティア)は全五巻である。第一巻は11歌を収める。第1歌は詩人がこの詩集自体に向けて語るかたちで、ローマに着いたらどのように振舞うべきかを述べる内容である。第3歌は詩人のローマにおける最後の夜のことを描写する。第2歌と第10歌はトミスへの旅がどのようなものであったか、第8歌はある友人の裏切りについて、第5歌と第6歌は誠直な友人たちと妻について述べる。第11歌で詩人は詩集全体にこだまする悲嘆により読者が暗い気持ちになれば申し訳ないとわびる。 第二巻は詩人の自己弁護の長詩で構成される。先人を引用して自作を正当化し、アウグストゥス帝に寛恕を請う。第三巻はトミスにおける詩人の生活に焦点を当てた14歌を収める。第1歌は詩集がローマに到着するがオウィディウスの作品が発禁となっているさまを描き出す。第10, 12, 13歌はトミスにて過ごす年月を詠い、第9歌はトミスの由来を詠う。第2, 3, 11歌で詩人は深い嘆きと望郷の念を詠う。最終第14歌で詩人は再び詩集の暗さを読者にわびる。 第四巻は主に友に宛てた10歌を収める。第1歌は詩人の「詩」への愛と「詩」がもたらす慰めを詠う。第2歌はティベリウスを讃える歌であるが、第3, 4, 5歌は友人たちに宛てた歌である。詩人は第7歌で返事の便りがほしいと歌い、第10歌で自分の来し方を振り返る。 『悲しみの歌』の最終巻は詩人の妻や友人たちに焦点を絞った14歌を収める。第4, 5, 11, 14歌は妻に宛てられたもので、第2, 3歌はアウグストゥス帝とバッコス神への祈りを捧げる歌である。第4, 6歌は友人たちに、第8歌は敵に宛てた歌である。第13歌では返信を所望するが、第1, 12歌ではやはり、本作のまずさを読者にわびる。
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