L3 バリエーション

L3

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/06 09:12 UTC 版)

バリエーション

C.V.29
カーデン・ロイド Mk.VIの輸入車とノックダウン生産車に与えられた型式。Mk.VIは元は水冷式のヴィッカース重機関銃を装備していたが、イタリアで空冷式のフィアット重機関銃に換装。航空機用=空冷式のフィアット レベリM1914重機関銃 1挺を車体右側に装備。主に評価試験と訓練に使用された。試験から得られた改善点は次の「アンサルド試作軽戦車」に組み込まれた。輸入21両+ノックダウン4両の計25両。追加で100両をライセンス生産する予定もあったが、発展型が開発されたので中止となった。
  • [2] - ヴィッカース重機関銃装備型 C.V.29(カーデン・ロイド Mk.VI 豆戦車)。
アンサルド試作軽戦車 1930年型(Ansaldo light tank prototype 1930)
アンサルド社で1930年に開発された試作豆戦車。C.V.29=Mk.VIの発展型。戦闘室天板とサスペンションを改良。下部シャーシはリベット接合組み立てで、上部構造物は溶接組み立てであった。下部転輪は2個一組を3対。前方起動輪(スプロケットホイール)の後方に工具箱あり。車体後部に、側面にグリルが付いた、天板が平らな、エンジン室が設けられている。エンジンは前方トランスミッションとドライブシャフトで繋がっている。水冷式のフィアット レベリM1914重機関銃 1挺を車体左側前面の大型湾曲シールドマウントに装備。水冷式機関銃の射角は、左右20度ずつ、俯仰-12度~+18度。車長兼機銃手は車体左側配置。操縦手はその隣の車体右側配置。C.V.29=Mk.VIとは武装と乗員配置が左右逆。不採用。製造数1両のみ。
アンサルド試作軽戦車 1931年型(Ansaldo light tank prototype 1931)
1930年型と同一の個体。ゆえに製造数1両のみ。1930年型の主に足回りを改修した改良型。新型サスペンションに変更。下部転輪は2-1-1-2配置。後方誘導輪(アイドラーホイール)に補助転輪を追加。車体後部に、側面にグリルが付いた、天板が切妻屋根の、エンジン室が設けられている。後に量産車に採用されたのと同じ、フィアットCV3-005 4気筒ガソリンエンジン 43 hpを搭載していた可能性が高い。インテリアのレイアウトは1930年型から1931年型にかけて変更されず。本車の設計に若干のマイナーチェンジを加えて、「C.V.33」として制式化された。
アンサルド試作軽牽引車(Ansaldo light tractor prototype)
アンサルド試作軽戦車のバリエーション車両。イタリア陸軍はMk.V*を牽引車にしようと考えていたが、不向きなことが判明した。そこで代わりに開発されたのが本車である。試作軽戦車とほとんどの部品を共用する。足回りは1931年型と同じ。誘導輪の補助転輪をもう1個追加したこともあった。左右にフェンダー(マッドガード)を取り付けたこともあった。車体後部に、側面にグリルが付いた、天板が切妻屋根の、エンジン室が設けられている。戦闘室に相当する上部構造物はオープントップで、上方の開口部に近いほど広がっていく。車長は車体左側配置。操縦手はその隣の車体右側配置。非武装。1931年型には付いている、車体前面のリベット留めされた装甲板が、軽牽引車には無く、最大装甲厚は8mm程度に減少。履帯式のトレーラーを牽引可能。豆戦車でも牽引車として使えたため、非武装で豆戦車としては使えない牽引専用の本車は不採用。製造数1両のみ。
  • [7] - カーデン・ロイドMk.V* 豆戦車
  • [8] - 向かって右がアンサルド試作軽戦車 1931年型、向かって左がアンサルド試作軽牽引車。
  • [9] - 向かって右がアンサルド試作軽戦車 1931年型、向かって左がアンサルド試作軽牽引車。
  • [10] - 装軌式トレーラーを牽引するアンサルド試作軽牽引車。
C.V.33 先行生産型
1932年発注。アンサルド試作軽戦車 1931年型の改良型。機関銃(1挺のみ)を水冷式から空冷式に再び変更。大型湾曲シールド撤去。機関銃マウントの形状変更。空冷式機関銃の射角は、左右20度ずつ、俯仰-12度~+18度。戦闘室両側面にグリルを設置。製造数4両のみ。
L3/33(C.V.33、L33)
L3系列の最初の量産型。車体上部の後部左右の三角コーナーと天井部分が電気溶接、その他は沈頭鋲と金属パテによる電気溶接風化粧加工。最初の生産ロットのセリエIはフィアット レベリM1914 6.5mm重機関銃1挺装備、セリエII からは 8mm重機関銃2挺装備。セリエIの6.5 mm単装機関銃は、左右20度ずつ、俯仰-12度~+18度と、射角が広く、弾薬が小さいため、車内に3,800発を搭載できたが、セリエIIの8 mm連装機関銃は、左右12度ずつ、俯仰-12度~+15度と、射角が狭くなり、また、弾薬が大きくなったため、車内に2,320発と、搭載量が少なくなった。
ロッシーニ CV.3 試作軽戦車(‘Rossini’ CV.3 Light Tank Prototype)
C.V.33 セリエIを基に、車体中央の戦闘室の上面左側に、全周旋回可能な銃塔を一つ設けた試作車両。武装は銃塔のSAFAT社製のM26(M1891 6.5 mm)もしくはM28(.303ブリティッシュ弾(7.7 mm、しばしば8 mmと誇張表現される))空冷機関銃1挺のみ。この機関銃は銃塔前面の銃架から引き抜いて、後方に天板を開放した砲塔上面開口部に高仰角で据え付けて、対空機関銃としても使用することができた。2名の乗員は車体中央の戦闘室に並列配置で、右側に操縦手、左側の銃塔に車長兼機銃手。足回りも改良され、リーフスプリングで支えられた片側4個の中型転輪、片側2個の支持輪となる。装甲厚8-14 mm。重量3.4 t。エンジンはフィアットCV3-005 43 hp。最高速度は路上40 km/h、不整地14 km/h。ジュゼッペ・ロッシーニによる開発。正確な開発時期は不明だが、車体が溶接であることから、1932年から1935年の間のいつかと推測されている。製造数1両のみ。不採用。
  • [13]
  • [14]
  • [15] - 機関銃を引き抜いて、対空機関銃とした状態
L3/35(C.V.35、L35)
L3系列の2番目の量産型。電気溶接と装甲表面化粧加工の工程を省略、以降リベット接合構造。8mm重機関銃2挺装備。
L3 増加装甲型
現地改修。
L3火炎放射戦車
L3 Lf(L3 火炎放射戦車)
L3/33、L3/35をベースに、通常型の機銃を撤去し、代わりに火炎放射器を装備した火炎放射戦車。「Lf」は「Lancia fiamme(ランチァ・フィアンメ、火炎放射器)」を示す。火炎放射戦車としては最も初期のものとされる。
小型の車両のため車内に放射用燃料や放射用圧縮ガス(炭酸ガスもしくは圧縮空気)は収容できず、車体後部に専用の装甲トレーラー(燃料500Lと圧縮ガスを収容)を牽引、2本のホースで燃料・ガスを供給した。L3/38をベースに、車内に放射用燃料(60L)や放射用圧縮ガスを収容した、後期型も存在した。
1941年、北アフリカで連合軍に鹵獲されたL3 cc(前方の1両)
L3 cc(L3 対戦車型)
L3/35をベースに、8mm重機関銃2挺を撤去し、代わりにゾロターン S-18/1100 もしくは S-18/1000 20mm対戦車ライフル1門を装備した火力強化型。「cc」は「contro carro(コントロ・カルロ、対戦車)」を示す。1940年北アフリカ戦線で、おそらく現地改修で少数(約82輌説あり)が改装されて使用された。
  • Breda-SAFAT 12.7mm重機関銃1挺を装備したcc型もいくらか改装製造された。
  • スペイン内乱で使用された車両で、L3/33をベースに車体前方左側にブレダM35 20mm機関砲1門を装備した「Trubia トルビア」と呼ばれる改造車輌が存在している。
L3 自走迫撃砲
L3/35をベースに、ブリクシア45mm軽迫撃砲を戦闘室上面前方左側に架装したモーターキャリア。おそらく現地改修で少数が改装されて使用された。
L3 r(L3 無線指揮車)
L3ベースの無線指揮車。「r」は「radio」を示す。武装を撤去し、無線機と地図机を装備。戦闘室上面から機関室後端にかけて大きな半円形のループアンテナを装備。
L3 空挺戦車
L3ベースの空挺戦車サヴォイア・マルケッティ SM.82を母機(SM.82 Carro armato)とし、その胴体中央下の窪みに埋め込まれる形で懸吊され(北および東アフリカへ)空挺輸送される。10輌のL3と数機のSM.82が改造された。
L3 対空戦車
L3ベースの対空戦車
L3 回収戦車
L3ベースの回収戦車(戦車回収車)。
L3 無線誘導戦車
L3ベースの無人ラジコン車。爆破作業用。
L3 Passerella(パッセレッラ) もしくは L3 Gettaponte(ジェッタポンテ)
L3ベースの架橋戦車。車体前方にブリッジ、車体上面にウインチとアームを装備した工兵用車輌。数輌が改装された。
セモヴェンテ L3 da 47/32
1939年から1940年にかけて開発された、L3/35をベースに、戦闘室の上部構造物を撤去し、32口径47 mm砲を搭載した、歩兵支援用の自走砲。少なくとも1両が製造された。装填手が追加されて乗員3名となった。同砲を搭載・操作するには車体が小さすぎ、前面の防盾の他は、乗員を守る装甲も無かったために、試作のみに終わった。同砲が搭載された自走砲としては、L6ベースのセモヴェンテ da 47/32が量産された。なお、ベルギー軍も、カーデンロイド Mk.VI 豆戦車に47 mm対戦車砲を搭載するという、似たような試みを行っている。
L3/38(C.V.38、L38)
L3系列の最終型。本来ブラジルへの輸出向けに開発されたもので、ブラジル分の生産の後は、1942年から1943年のイタリア休戦まで生産された。少数がシチリア島防衛戦で使用された他は、ほとんどがドイツ国防軍に鹵獲されて使用された。片側4個の転輪を2個ずつの2組にしてトーションバーで懸架。第4転輪と誘導輪の間に張度調整用ローラーが片側1個。上部支持輪は片側2個。履帯も新型になっている。武装はマドセン7mm機関銃2挺(ブラジル輸出向け)もしくはブレダM31 13.2 mm重機関銃1挺もしくはセモヴェンテ形式でブレダM35 20mm機関砲1門とされる。
C.C.I. Tipo 1937 もしくは カルロ・アルマート L3軽戦車(L3 Tank)
スペイン内戦時の1937年に、反乱軍側によってスペインのセスタオ(Sestao)のSECN(Sociedad Española de Construcción Naval)の工廠(元・海軍工廠)で開発された試作車輌。「C.C.I. Tipo 1937」とは「1937年型歩兵戦車」の意味。C.C.I.は「Carro de Combate de Infanteria」(歩兵戦車)の略。歩兵支援(対戦車戦闘含む)が目的であったことから。
スペインで開発された試作車輌だが、足回りがL3の流用なので、「カルロ・アルマート L3軽戦車」(L3 Tank)という名称で、イタリアで開発された試作車輌として、間違って扱われていることがある。ただ、本車の開発にはイタリア人技術将校の協力があったとされる。
L3(L3/35)の足回り(転輪の位置や間隔などは下げて広げるなど、L3とは違う)を流用し、新造された車体(上部・下部)と砲塔を持つ軽戦車で、キューポラ付きの旋回砲塔にブレダM35 20mm機関砲1門(312発)、車体前面右側にブレダM38車載機関銃2挺(2,170発)を装備していた。乗員2名(3名説あり)。キューポラハッチの他、車体両側面に両開き式の乗降扉があった。全長3,150mm。全幅1,500mm。全高1,650mm。クリアランス190mm。戦闘重量4t。MAN社製100馬力ディーゼルエンジンを搭載(試作車は暫定的にMAN社製70馬力6気筒空冷ディーゼルエンジン「D0530」搭載の可能性あり)。最高速度36km/h(試作車)。航続距離200km。装甲はニッケルクロム鋼で装甲厚5~15mm。30輌(25輌・35輌説あり)が発注されたが、7.92mm徹甲弾に耐えられないことから試作車1輌のみで量産はされなかった。
  • [25] - C.C.I. Tipo 1937
外観は、前年に共和国側によってセスタオのSECNの工廠で開発された「1936年型トルビア軽戦車」(Carro de Combate Ligero Trubia Modelo 1936)、別名「トルビア ナヴァル」(Trubia-Naval)とやや似ていた。車体後面の台形のルーバー(「トルビア ナヴァル」のエンジンは「D0530」)や、車体側面の乗降扉や、全体の傾斜装甲など、「トルビア ナヴァル」と「C.C.I. Tipo 1937」には、多くの類似点がある。「トルビア ナヴァル」は16輌が完成し、戦闘で生き残った9輌が反乱軍側に鹵獲された。セスタオのSECNの工廠は反乱軍側に占領され、反乱軍側によって「トルビア ナヴァル」の後継車輌の早急の開発が命じられ、開発されたのが本車である。「トルビア ナヴァル」の方がやや大きく、足回りは全く不整地走行に向いていなかった。「C.C.I. Tipo 1937」が足回りをL3から流用したのはそのためかもしれない。
  • [26] - トルビア ナヴァル
M50戦車(Carro de Combate M50)
1938年に、反乱軍側が共和国派のT-26BT戦車に対抗するために、C.C.I. Tipo 1937の砲塔と戦闘室を取り払ったシャーシに、ソ連製の20K 45 mm戦車砲(防盾無し)をオープントップ型式で搭載した、戦車とは名ばかりの試作自走砲。乗員は車長、操縦手、砲手の3名。防御力が欠如していたことと、共和国派から鹵獲したT-26の運用が始まっていたため、開発は中止され、砲を取り外されて、砲兵トラクターとして運用された。

  1. ^ 被土著人徒手打敗的義大利坦克——CV33超輕型坦克” (中国語). 每日頭條 (2017年1月15日). 2019年8月16日閲覧。


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