ITER アメリカの誤算

ITER

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/01 22:55 UTC 版)

アメリカの誤算

1990年代初め、アメリカ合衆国は核融合の技術開発計画に関して2つの大きな選択肢を持っていた。1つは磁場閉じ込め方式であり、もう1つは慣性閉じ込め方式のひとつのレーザー核融合であった。当然これら2つは米国のみならず先進国の間では既知のアイデアであり、各国の核融合技術に関する研究者達も磁場閉じ込め方式のトカマク型がいいかヘリカル型がいいか、それとも慣性閉じ込め方式のレーザー核融合がいいかで検討がなされていたが、米国は1942年に始まる原子爆弾開発からの半世紀に渡る核物理学の研究実績の結果、水素爆弾の開発に関連した最高度の軍事機密であるコンピュータ・シミュレーションによって水素の核融合時の挙動を解き明かしたとの自負から、1990年半ばに他国に研究内容を一切明かさぬままローレンス・リバモア国立研究所内でレーザー核融合に関する実験施設の建設、つまり軍事研究としての性格を帯びたNIF計画(National Ignition Facility)を開始した。この秘密計画が順調に運んだため、米国は1999年にITER計画より離脱した。しかし、その年の末に設計上の大きな問題が隠蔽されていたことが判明し、必要予算は膨らみ、建設は大幅に遅れることが明らかとなり、計画は根本から見直されることとなった。全てをNIF計画に賭けていた米政府も、2003年2月にITER計画に復帰した[6]。 NIF計画は当初での建設費用は7億ドル以下であったが、1997年には21億ドルまで上昇し、2000年には33億ドルに増えて、完成予定も結局7年遅れる事となった。関連費用まで含めると50億ドルに届くとNIFの反対派は主張している。[7] この誤算以前は米国も磁場閉じ込め方式で世界のトップの位置を日仏と争っていたが、ITER計画に再加入した時点では大きく後れをとっており、計画の主導的地位には戻れそうにない。今もレーザー核融合のNIF計画は継続している。[8]


  1. ^ ITER職員公募プレエントリー”. なか国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST)日本国内機関窓口. 2023年8月2日閲覧。
  2. ^ http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2005/kettei/kettei051101.pdf (PDF)
  3. ^ “写真で振り返る2013年”. 電気新聞. (2013年12月27日). http://www.shimbun.denki.or.jp/news/special/20131227_01.html 2014年1月19日閲覧。 
  4. ^ JT-60SAの統合試験運転の中断と調査状況について - 量子科学技術研究開発機構”. www.qst.go.jp. 2023年7月5日閲覧。
  5. ^ JT-60SA 統合試験運転の再開について ~今年秋の初プラズマ達成に向けて~ - 量子科学技術研究開発機構”. www.qst.go.jp. 2023年7月5日閲覧。
  6. ^ w:en:National Ignition Facility
  7. ^ http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20050530306.html
  8. ^ ブルーバックス 新核融合への挑戦 狐崎晶雄 吉川庄一 ISBN 4-06-257404-7
  9. ^ 核融合実験炉用の300トン巨大コイル初号機完成 三菱重工が初公開”. 毎日新聞 (2020年1月30日). 2020年1月30日閲覧。
  10. ^ ITER(国際熱核融合実験炉)向け超電導ケーブルを受注|2014|ニュースリリース|古河電気工業株式会社”. www.furukawa.co.jp. 2021年1月4日閲覧。
  11. ^ https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/iter/021/005.htm
  12. ^ a b c Approved! Council gives project green light to proceed”. ITER & Beyond. The Phases of ITER.. ITER (2012年9月). 2012年9月12日閲覧。
  13. ^ ITER建設サイト(サン・ポール・レ・デュランス)について”. 2016年1月16日閲覧。
  14. ^ ITER計画の状況 | 核融合実験炉ITER日本国内機関・QST”. www.fusion.qst.go.jp. 2023年7月5日閲覧。
  15. ^ 대덕 시험용 핵융합로 ‘KSTAR’ 가동 『중앙 데일리 뉴스』2011.04.02
  16. ^ http://www.greenpeace.org/international/press/releases/ITERprojectFrance
  17. ^ http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A38236-2005Mar15.html
  18. ^ http://www.dw-world.de/dw/article/0,1564,1631650,00.html
  19. ^ http://ieeexplore.ieee.org/iel5/6866/18462/00849850.pdf (PDF)
  20. ^ http://www.euractiv.com/Article?tcmuri=tcm:29-141693-16&type=News
  21. ^ http://www.stpnoc.com/FYI.htm 1/3 の核燃料棒は18ヶ月ごとに交換される
  22. ^ http://www.eia.doe.gov/cneaf/electricity/chg_str_fuel/html/frontintr.html
  23. ^ http://www.findarticles.com/p/articles/mi_qa3650/is_200207/ai_n9093799
  24. ^ http://www.nndc.bnl.gov/proceedings/2004csewgusndp/tuesday/mbphysics/09_DSmith.pdf (PDF)
  25. ^ http://www.eia.doe.gov/cneaf/nuclear/page/at_a_glance/states/statesaz.html





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