CHEER UP! THE SUMMER
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解説
配信限定リリースされた竹内まりやとのデュエット曲「Let It Be Me」[注釈 1]を挟み、前作「光と君へのレクイエム」から約3年ぶりとなるリリースとなる本作は、2016年7月21日 スタートの松嶋菜々子主演ドラマ『営業部長 吉良奈津子』[注釈 2]への主題歌として書き下ろされた新曲。松嶋主演ドラマで山下が主題歌を担当するのは1996年4月 期放送のNHK連続テレビ小説「ひまわり」[注釈 3]に提供された「DREAMING GIRL」以来、約20年ぶりとなる[4]。この曲は、2017年8月 にリリースされたコンピレーション・アルバム『COME ALONG 3』に収録。後に、2022年 リリースのアルバム『SOFTLY』にも収録された[5]。
ドラマのタイアップの話があったのはツアー「PERFORMANCE 2015-2016」が終わった頃で、かなり急だったという。そして、当初はドラマのストーリーに合わせ、最初はもっと孤独感のあるようなアーバンな雰囲気の曲を書いたが、制作サイドからの“もっと明るい曲にしてほしい”という要望があり、リクエストに沿って明るめの曲に書き換えられた。しかし、あまり突き抜け過ぎるとドラマに合わない気がしたので、ドラマと解離しないように、少しだけ抑制を効かせたという。歌詞については「ドラマの主人公は40代。アラフォーやアラフィフになると、いろんな意味で若いころとはまた違った不安が出てきて、単純に人生を礼賛するスタンスはだんだんと失われていきます。今回の歌は、そういう世代への応援歌みたいなものだけど、だからといって、特に大上段なテーマがあるわけではないんですよ。不安を抱えている世代へのチアアップソングを目指しはしましたが、なるべく具体性のない歌詞にしたいと思ったんです」「もともと言葉がメロディーに勝っているのが好きじゃないんです。抽象的な言葉が乗ると、音楽もそれにともなって、ある種のイリュージョンが起こる。今回は非常に洋楽的なメロディーなので、歌詞が具体的になるほど、どうしても違和感が出てしまう。好きな言葉の語感というのが昔からあって、いつもあまり変わらないんです。そこがちょっとでもズレるとすごく気持ちが悪い。なので、歌っていて気持ちのいい言葉を並べたいという。だから本当に抽象的で、何を歌っているというわけではない曲なんですよ」と話している。さらに山下は「<CHEER UP! THE SUMMER>は完全に80年代のリバーブの感じです。昔はよく使っていたやり方なんですけど、2000年 代に入ってから、技術的な問題でこういうエコー感がなかなか出せなかった。今は他でもこういうリバーブはなかなかないと思うんだけど、昔の感じを出せるノウハウがようやくついてきたのでね。このリバーブを入れることで、あの頃のサウンドに近付くんです。それがどう受け止められるかはわからないけど、“山下達郎の夏が感じられる曲にしてほしい”というオーダーを受けて今の僕がやるとこういう感じになるっていう。さすがにもう、<RIDE ON TIME>を作った時の27歳ではないですから。27歳の時に作った夏の歌は今でも歌えるけど、同じものはもう作れない。となると、“60代の夏の歌って一体どういうものなんだろう”って思う。そう考えていくと、行き着くところは音のなかのイリュージョンなんですよ」[6]とし、「僕の音楽は、基本的なコンセプトがイリュージョンですから。実際の海って、そんなにキレイなわけじゃないでしょ。イメージのなかにある、静謐でキレイな海を体験したかったら、海外のプライベートビーチにでも行くしかない。でも、普通の人にはそんなところに行く余裕も時間もないですから。そこに今も僕の初期衝動があるんです。四畳半で二人で暮らしている歌を作りたいと思ったことはまったくなくて。夢・幻の歌、フィクションというより妄想ですね。そういう意味で、<CHEER UP! THE SUMMER>の場合も、“心のなかの夏”を表現している。季節って、人生とリンクしている部分があるでしょ。僕の世代は、もう人生の夕方に近い。でも、まだまだ自分の人生にしがみつく想いもある。だからこそ、“僕らの夏は終わらない”。せめて歌の世界では、まだまだ輝かせておきたいなっていう考えです」[7]と答えている。
カップリングには、フランキー・ヴァリが1967年 に発表した「CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU 〜君の瞳に恋してる」のカバーを、ツアー「PERFORMANCE 2015-2016」のライブ音源として収録[8]。今回収録した理由を山下は「あくまでライブに来てくれた人へのサービス音源」[7]とし、その経緯については「以前もシングルのカップリングにライブ音源を入れたことはありますが、ここまで早いスパンで音源化したのは初めてです。理由は簡単で、前回のツアーで一番評判がよかったから。僕はこれまでもずっと、自分の好きな曲のカバーをライブで演奏してきたけれど、ここまでウケたカバーはなかったんですよ。挙句、自分の曲より<CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU>のほうが盛り上がったりして、だんだんシャクにさわってきた」[7]と話している。また、実際に演奏した感想については「ある意味シャレでやった曲だけど、意外と色々難しかった。普段の僕のステージではあまりない光景なんだけど、サビの“I LOVE YOU BABY〜”の部分でお客さんを指差したら“キャ〜ッ”っていう声が起こったりする。こっちもおもしろいことに、歌い回しが毎回違う。お客さんの様子を見ながら無意識のうちに段取りを考えながら歌ってるから、どこで声を回すとかひっくり返すとか、その時の会場によって全然違う。サビ前の掛け声も違って、“Here We Go”もあれば“Let's Go”や“Keep On”、“Go On”と、いろんなパターンがあった。自分では毎回同じことを言ってるつもりだったんだけどね。今回、ライブテイクをシングルに入れるにあたり、録音していた音源を全部聞いたんだけど、それはおもしろかった。そのなかで一番良かった1月28日の大阪フェスティバルホールのテイクを採用しました」[7]と答えている。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g “山下達郎「CHEER UP! THE SUMMER - Single」” (日本語). www.apple.com. Apple Inc. (2016年9月14日). 2016年9月14日閲覧。
- ^ “CHEER UP! THE SUMMER | 山下達郎”. ORICON NEWS. オリコン株式会社. 2016年9月26日閲覧。
- ^ “Billboard Japan Hot 100 | Charts”. Billboard JAPAN. 株式会社阪神コンテンツリンク. 2016年9月26日閲覧。
- ^ “山下達郎、松嶋菜々子ドラマに主題歌書き下ろし”. ナタリー. 株式会社ナターシャ (2016年7月12日). 2016年7月12日閲覧。
- ^ a b “山下達郎が11年ぶりオリジナルアルバム発売「音楽シーンの中で私に出来ることを再確認」”. 音楽ナタリー. 株式会社ナターシャ (2022年4月1日). 2022年4月2日閲覧。
- ^ “山下達郎『CHEER UP! THE SUMMER』リリースインタビュー【前編】”. Billboard JAPAN. 株式会社阪神コンテンツリンク (2016年9月7日). 2016年9月7日閲覧。
- ^ a b c d “山下達郎『CHEER UP! THE SUMMER』リリースインタビュー【後編】”. Billboard JAPAN. 株式会社阪神コンテンツリンク (2016年9月7日). 2016年9月7日閲覧。
- ^ “山下達郎、新シングルc/wにライブ音源「君の瞳に恋してる」カバー”. ナタリー. 株式会社ナターシャ (2016年7月25日). 2016年7月25日閲覧。
- ^ a b “News – CHEER UP! THE SUMMER 先行配信決定! & ジャケ写公開!!”. ワーナーミュージック・オフィシャルサイト. 株式会社ワーナーミュージック・ジャパン (2016年8月14日). 2016年8月14日閲覧。
- ^ a b “News – 山下達郎ニューシングル「CHEER UP! THE SUMMER」発売記念キャンペーン!”. ワーナーミュージック・オフィシャルサイト. 株式会社ワーナーミュージック・ジャパン (2016年8月21日). 2016年8月21日閲覧。
- ^ “News – 「CHEER UP! THE SUMMER」のミュージックビデオに人気沸騰中の女優「阿部純子」が出演!”. ワーナーミュージック・オフィシャルサイト. 株式会社ワーナーミュージック・ジャパン (2016年9月2日). 2016年9月2日閲覧。
- ^ “News – NEW SINGLE「CHEER UP!THE SUMMER」のミュージックビデオのショートVerが、YouTubeでも期間限定公開!”. ワーナーミュージック・オフィシャルサイト. 株式会社ワーナーミュージック・ジャパン (2016年9月14日). 2016年9月14日閲覧。
- ^ “山下達郎の新曲MVにとと姉ちゃんの阿部純子、野球部員を「CHEER UP!」”. ナタリー. 株式会社ナターシャ (2016年9月2日). 2016年9月2日閲覧。
- ^ “CHEER UP! THE SUMMER/山下達郎”. mora. 株式会社レーベルゲート (2016年8月18日). 2016年8月18日閲覧。
- ^ “山下達郎「CHEER UP! THE SUMMER」”. music.jp. 株式会社エムティーアイ (2016年8月18日). 2016年8月18日閲覧。
- ^ “『CHEER UP! THE SUMMER』山下達郎”. レコチョク. 株式会社レコチョク (2016年8月18日). 2016年8月18日閲覧。
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- ^ “『CHEER UP! THE SUMMER』山下達郎”. レコチョク. 株式会社レコチョク. 2016年9月14日閲覧。
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