BALDR SKY システム

BALDR SKY

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/22 02:03 UTC 版)

システム

BALDRシリーズ特有のアドベンチャーゲーム+見下ろし型2Dアクションゲームという構成になっている。

アクションパートは前作「バルドフォース」のスタイルを継承発展。より3Dに近いシステム下で、前後左右だけでなく上下も加えた戦闘マップ上を縦横無尽に立ち回り、最大14種の射撃や近接攻撃を繋げながら多数の敵を次々と撃破してゆく、ハック&スラッシュ系のロボットアクションゲームに仕上げられている。

アドベンチャーパートについても主人公の過去・現在の二つの視点で物語が展開され、さらに、それぞれのパートでも現実世界での出来事とネット上の仮想空間の出来事が存在するという多層的な構造になっている。

Dive1、2ともに攻略ルートは固定されており、クリアデータを継承しながらレイン→菜ノ葉→千夏→(記憶遡行)→亜季→真→空の順にシナリオを進めてゆくこととなる。それぞれのルートには多数の伏線が存在し、シナリオ内でマスクされた情報や世界観を貫く謎は一時に明かされはせず、シナリオの進行や再プレイでの別選択によって徐々に解き明かされていく。最短でも最終シナリオである空ルートを二週した時点で全ての謎が詳らかになる作品構造となっている。 また、バルドフォースではエッセンスに過ぎなかった並行世界の概念が物語の根幹に組み込まれ、グレイ・グーやデザイナーズ・チャイルド、生体脳へのハッキングなどのガジェットを絡めた、よりSF性を高めた壮大なストーリーが展開される。

ストーリー

主人公の門倉甲は、桐島 レインの呼びかけで目覚める。 自分が仮想空間(バーチャルスペース)内にいることに戸惑いながらも、愛機であるシュミクラム「影狼(カゲロウ)」を操って訳もわからぬままなんとか死地を脱した甲はレインのサポートによって仮想空間から現実世界への離脱(ログアウト)に成功する。

彼は星修学園に通い、如月寮で義理の姉とも慕う再従姉妹の亜季、悪友の雅や千夏、幼なじみの菜ノ葉、そして空と真の姉妹達と楽しく過ごしていたことを覚えていたが、今の彼の目の前には、彼の知っている街並みとは似ても似つかぬ、病的に荒廃しきった都市「清城市」の姿が広がっていた。

また、記憶の混濁に苦しむ甲に突きつけられた「今」の現実は、彼はもはや学生ではなく数年後の世界におけるベテランの軍人であり、しかもかつての自分が忌み嫌っていた父親と同じ傭兵として、そして凄腕のシュミクラム乗りとして、「灰色のクリスマス」という事件の真相を追い、部下のレインと共に世界中の戦場を駆け巡っているというまったく理解し難い内容であった。

原因不明の記憶の損傷により、世界がこうなった理由も、己が戦場にいる理由もすべて忘却してしまった甲だったが、レインの導きと違法外科医・ノイの治療、そして避け得られぬ数々の戦いを通じて徐々に記憶の断片を取り戻し、自らの過去と現在に起こった出来事を思い出すとともに、やがて失われた記憶に秘められた、すべての真相へと近づいてゆく。

世界観・用語

シュミクラム
仮想空間で論理戦闘や障壁破壊・破壊工作・メンテナンス・システム防衛等を行うための大型有人ロボット型プログラミングツール。パイロットは「移行(シフト)」というプロセスを経て電子体をシュミクラムへと「変身」させ、身体操作そのままに操縦を行う。対義語は除装で、シュミクラムから電子体へと速やかに回帰する。一方で、性質上存在する必要のないコクピットブロックがあらゆるシュミクラムの内部に設定されており、これを通じて外部から強制除装を行うこともできる。
戦闘やトラップ等によりシュミクラムが重度の損傷を受けた場合、パイロットは強制的に除装される。さらにリミッターがかかっていない領域でシュミクラムが完全破壊された場合、電子体の場合と同様にパイロットは脳死する。
ウイルス
仮想空間上であらかじめ入力された命令に従って自立機動するロボットプログラムであり、シュミクラム同様メカニカルな外見を持たされている。今日のコンピュータウイルスとは異なり、自己増殖機能や感染機能は持っていない。破壊活動や電子撹乱のみならず、警備や護衛、シュミクラムの戦闘支援、拠点防衛等、ロボットとしての特性を生かして多種多様に運用されている。大抵のウイルスは電子体以上シュミクラム未満のサイズにとどまるものの、拠点防衛用のウイルスのように純粋に軍事兵器として特化した機体の場合、シュミクラムの数倍の巨体を誇るものもいる。
ドローン
パイロットなしで自律戦闘あるいは他者からの遠隔操作が可能な無人シュミクラムの総称。機能面ではウイルスに似るが、シュミクラムを利用している点で大きく異なる。無論、コクピットブロックには誰も存在していない。
電子体(でんしたい)
仮想空間上における身体。脳チップを通じて現実の姿と常にリンクしており、姿や名前を詐称することは出来ない。もしツールを用いたとしても、容易に本体の姿を認識することが出来る。AIが人を公正に観測して形成されるものであることから、複製や偽造も「本来は」不可能である。
ただし、作中に1名のみ、上記の原則を逸脱した電子体が存在する。
仮想空間において電子体が損傷を被った場合、実体にも影響が及ぶ。リミッターなしで負傷した場合はその規模に比例する幻肢痛が残る他、致命傷を受けた場合は脳死に至る。
逆流現象
没入中の肉体に損傷が生じた際、AIによる観測結果を反映して仮想空間での肉体にも脈絡なく同じダメージが及ぶ現象。
離脱(ログアウト)
没入(ダイブ)に対し、仮想空間から実体へと意識を戻すこと。本来は簡単なコマンドで行えるものの、仮想空間上に設定された離脱不能地帯や離脱を妨害する電子アイテム、あるいは妨害(ジャミング)等により、離脱が不能となる場合も存在する。離脱不能地帯を離れるか、電子アイテムを解除・破壊することが困難である場合、コンソールのシステムを通じた強制離脱(アボート)や肉体から物理的に接続端子を引き抜く回線切断(ディスコネクト)が必要となることもある。
リミッター
仮想空間上での感覚を実体にフィードバックさせるにあたってのリスク回避設定システム。座標規模によって制限が行われる。リミッターが下がるほど触覚や嗅覚・味覚といったネット上で経験する感覚はより現実へと近づく代わりに、痛みや肉体損傷などもより強くフィードバックされるリスクを負う。一般人を対象とした行楽地や都市部ではリミッターは強く設定され、会員制の都市など安全性の高い領域や無名都市のようにアンダーグラウンドな場所ではリミッターは排除される傾向が強い。また、一般利用を想定していない構造体内部ではもともとリミッター自体が存在しない。
電子体アイテム
仮想空間で利用できるガジェット。医薬品や衣類、アクセサリ、ナノ物質、銃火器、拘束具等、ありとあらゆるオブジェクトが存在する。現実世界での実体がそのまま持ち込めるものと、仮想空間上でのプログラムデータとしてのみ存在するものとの二種類に分かれる。
なお、アイテムリストに水着を常備しておくのは乙女としての常識であるらしい。
構造体
仮想空間上において種々の機器の制御システムを具象化させたもので、いわば建造物の電子体と呼ぶべき存在である。アーク本社構造体や星修学園構造体のように既存の建造物の写し身となっているものも存在するが、管理の関係などから本体は小型チップや電子回路・備え付けコンソールに過ぎないにもかかわらずゲーム中ではそのまま戦闘マップとなるほどの巨大な建造物の姿を取る構造体も存在する。内部には物理障壁や攻性防壁(ブラックアイス)といった防衛設備のほか、電子体専用の通路や居室、仮想的管理コンソールが備えられ、迷宮のごとき有様を示している。
AI
作中内にて、電脳世界を管理し、仮想空間をシミュレートし続ける存在。ごく一部の人間のみ、彼らと完全なコミュニケーションを図ることができる。
その実体は自己進化を続ける粘菌めいたバイオチップの集合体『生物学的AI』『有機AI』であり、世界各所に散在しつつ量子通信によってデータリンクを行っている。
進化の過程で偶発的に知性を獲得した後、恐竜的進化を遂げて遂には感覚質(クオリア)を獲得し、「異種知性体」と呼び習わすべき存在へと到達。人類に対する公平な観測者としての立場を守りながら、人類の友たるべく、主に情報処理分野において協力を行っている。
大規模な仮想システムの中に多数の人格を形成しており、それらが討議を行いながら時に人格消滅、時に新規人格発生を図り、常に発展を続けている。作中でも「マザー」や「イヴ」といった人格が登場するものの、彼らの本質は群体であり、個の概念が存在しないことから彼らの精神構造や価値観は人類とは大きく異なったものとなっている。
対して、『バルドル・マシン』を代表とする『機械的AI』、『無機AI』も存在するが、これらは有機AIと比較した時データ容量と処理速度こそ上回っていたものの、最終的に感覚質(クオリア)を獲得できなかったが故に機械の領域・哲学的ゾンビの制約を超克することが出来ず、学園時代の時点ですでに覇権を有機AIに明け渡している。また、今後も無機AIが感覚質を獲得し得ないことはすでに有機AIが拡張されたゲーデルの定理を用いて証明を済ませている。よって、作中でAIと言い表す時、それはほぼ全てが有機AIを指しており、一部のパロールでバルドルシステムを指す場合を除き、無機AIを指すことはない。
人類が初めて遭遇した異種知性体であることもあり人類社会からの彼らに対する反応・印象は統一がもたらされておらず、親AI派(蔑称:エイリアニスト)と反AI派(蔑称:パラノイア)の抗争が絶え間なく続いている状況にある。
仮想空間の奥には”エスの海”と呼ばれる、AIがまだ整理できていない莫大な観測情報が渦巻く領域が存在している。ここは、量子通信を介して無数に分岐する並行世界とも密かに繋がっており、極めて高度なスキルを備えた情報管理者ならば望むがままに情報を得ることができる一方、彼らをもってしても自我を侵食され狂気に陥るリスクを伴う、非常に危険な場所となっている。
バルドルマシン
地球統合政府が開発した無限のライブラリとデバイスを持つ自立成長型推論ネットワーク。作中では「バルドルシステム」とも呼称される。オリジナルは上海ハバロフスクフィラデルフィアコスタリカサウジアラビア、清城市に設置された。かつての統合戦争では主力だったが、現在では有機AIが主流となっているため、旧世代のシステムと見做されている。現代編時点では清城市の個体を含めた五台が現存している。
単体では有機AIを超える計算能力を持つが、無機AIであるため有機AIが有するクオリアを持たない。また、解を持たない問題の解を求めさせようとすると問題に解がないことを証明できずにフリーズしてしまう(「ゲーデルの不完全性定理」)ため、クオリア獲得に至り得ない致命的な構造的欠点を抱えている。
清城市のバルドルマシンはかつてDr.ノインツェーンがルネサンス計画時より専用機として使用していたものであるが、彼が死亡した後に内部データの回収及び破棄、再設定が行われ、現在ではアーコロジーの管理に再利用されている。
星修学園(せいしゅうがくえん)
主人公、甲が通う学園。州都の近郊に位置し、一帯はこの学園を中心とした学園都市となっている。
橘聖良により設立された学術機関であることからAI支持派が主流として受け入れられており、後述のセカンドも多数在学・在籍している。高度な研究者のみならず、AIに授業の講師を任せるなど先進的な教育を取り入れ、また一般人が受けられる授業も多数開講している。仮想空間上では星型の美しい構造物の姿をとっている。
星修学園都市は豊かな自然の残された都市であるが、若者が遊ぶようなところは少なく、デートや買い物となると電車を使って近隣の蔵浜市まで足を伸ばす必要がある。
「灰色のクリスマス」の際にグングニールによる砲撃で徹底して破壊され、ナノ物質による汚染リスクを防ぐために封鎖地区として指定を受ける。数年後の現在においても廃墟のまま厳重に監視されており、進入こそ不可能ではないものの、外部に退出する際にパトロールに見つかれば無警告で即時射殺され、遺体も速やかに焼却処分される。
セカンド
第二世代(セカンド)の脳チップを備えた、よりネット環境に適合した人間。首筋に神経挿入子(ニューロ・ジャック)が2つ備えられているのが特徴。旧世代の脳チップとは異なり、端末を使用しない無線での常時ネット接続、仮想世界への没入(ダイブ)が可能。また、防壁等といった様々な電脳機能も強化されている(ただし、安全のため、識者は没入する際には可能な限り有線(ワイアード)を用いることを推奨している)。
脳外科手術を用いて脳チップを移植する旧来の第一世代とは異なり、主に幼少期にナノマシンを注入することで脳内にバイオチップを代謝形成している。また、大半のセカンドは、後述のアーク・インダストリー社製のチップを保有している。現代ではまだ旧世代より数が少なく、その特性故に特別な扱いを受けている面がある。
鳳翔学園(ほうしょうがくえん)
全寮制で規律の厳しいエリート校で、反AI派の牙城とでも言うべき学園。
厳しい校則と保守的な気風が売り物であり、裕福な家庭の子供ばかり(これにはセカンドも含まれる)が在学している。また、少なからぬ数のデザイナーズ・チャイルドが在籍していることでも知られている。
上記の通り非常に閉鎖的であり、学園関係者以外が発見された場合は即刻つまみ出される。星修学園とは対照的な校風であり、尚且つ地理的にも近隣なだけあって犬猿の仲となっている。
やはり「灰色のクリスマス」での砲撃の結果、現在は消滅している。
デザイナーズ・チャイルド
『被造子』とも呼ばれる、受精時点で遺伝子操作を受けた人工改良人種。常人よりも高い身体能力や知能、美貌を持たせようとして遺伝子改良を受けて生み出された者、過去の人物を再生する目的でクローン的に生み出された者、あるいは特定の目的のため特殊な遺伝子を持たされた者等、様々なタイプが存在する。
遺伝子改良を受けたタイプは概してエリート意識が強く、ときにジルベルトの様に一般人を下等生物と見下す者もいる。しかしながら人格の破綻や精神異常等の問題が相次いだため、のちに遺伝子改良処置は禁止されることとなった。また、身体能力の高さの結果スポーツや学問で公平性を破壊したことから一般人からの反感もみられ、ミュータントやモンスターなどと揶揄されることもある。
電脳症(でんのうしょう)
正式名称は「電脳性自我境界線喪失症(Cybernetics Ego Boundary Disorder/CEBD)」。
仮想空間において、通常起こり得ない様々な症状を引き起こす原因不明の不治の病の総称。幻覚を見たり、人の思考やデータを読み取ったり、自分の思考が他人に伝わってしまったりと、その症状は個人により差異がある。
周りに影響を与えないように発症者をネットから分離してしまうと心理的、肉体的に過度の負荷が掛かり速やかな死にいたってしまい、逆にネットと繋がっていても徐々に症状のコントロールが出来なくなり、心身が擦り減っていってしまう。このダブルバインドを回避するために専門医による定期的な診察が患者に対しては必須となる。

 現実恐怖症世代(RPG)

「Reality Phobia Generation」の略で、所謂ネット引きこもり。すでに学園編の時点でも社会問題として懸念視されていた。端的に言えば、西野亜季がこれにあたる。対象者は数日~数年にわたり主体的に仮想空間に潜り続け、現実空間に回帰しようとしない。コンソールの発達が引き起こした弊害とも言える。
如月寮(きさらぎりょう)
甲や仲間たちが暮らしている寮(DiveXではレインも入居する)。
今の時代には珍しい、レトロな木造建築を模した外観をしている。
かつては多数のギーク的生徒で賑わっていたものの、過去に起こった事件から甲・雅・菜ノ葉が入学した際には亜季だけが入居していた。一方で、物語の進行に従い複数の学生が転居し、次第に賑やかになっていく。
ちなみに、玄関はこの時代では既に見られない引き戸であり、誰もが一度は自動ドアだと思い込み、顔面をぶつける。
清城市(すずしろし)
甲が目覚めた現代世界で主な舞台となる都市。また学園時代からレインが住んでいた街でもある。
天空までそびえたつ巨大なアーコロジー(環境建築)を中心とした超近代都市。
しかし、「灰色のクリスマス」以後の世界情勢の悪化から、都市の下層や周辺はスラム街と化しており、貧民層や犯罪者達の巣窟になっている。都市の外側には荒廃した街並みが広がっており、このスラム街を中心にAI派、反AI派のテロ活動が頻発している。
また、清城市の住人の7割が正式な市民権を持たず、社会保障も受けられていない。闇市も開かれており、各種武器弾薬や密造ナノなどを始め、多彩で危険極まりない代物が売買されている。
地下には旧世代の地下街に旧軍の軍事シェルター、遺棄された下水道や鉄道跡があり、市当局でも完全に把握し切れない魔窟と化している。
ミッド・スパイア
地上1000m超の巨大建造物で、清城市の中心に屹立する清城市のシンボル的存在。レインのかつての住居もこの中に存在する。
周囲とは隔絶されたアーコロジーとなっており、その中に調整された自然環境、外の世界では味わえない人工の陽光、豊かな物資、整った治安体制と、ある意味理想的な近未来都市である。清城市の人口の2割と富の70%が集約されている。
小さな都市がすっぽりと収まるくらいの大きさを誇り、一部の富裕層のみに居住権が与えられている。
この都市を管理しているのは地下に設置された、世界に5台しか存在しないオリジナルのバルドル・マシンのうち一台で、市当局の管理下にある。
一方で、ミッド・スパイア内ではニュース・ネット問わずで情報統制が行われ、仮想空間への没入さえ一部規制を受けている。
CDF(City Defending Force/都市自警軍)
清城市市長の管轄にある、都市を守る警察機構。
治安維持組織としてある程度の武装、人員、能力を有するが、上層部の腐敗もあって最低限の予算しか与えられておらず、また電脳刑事に貸与されるシュミクラム「晴嵐」は性能より乗員の安全性を重視した設計となっている。そのため、現場職員たちの職務意識こそ非常に高いものの、半ば代理戦争的に仮想空間での武力抗争が激化している昨今ではなかなか思うように仕事ができていない歯がゆい現実がある。
AIに対しての主義主張は特には無い。
地球統合政府(Gloval-Union、GU)
地球全域を統治する政府機関。作中では単に統合と呼ばれ、政府首脳部を統合中央と呼ぶことが多い。かつての国々が州(くに)として編入されている事から連邦制国家と思われる。
かつての反統合勢力との大戦時では地球の一部地域しか統治していない存在だったが、対地射撃衛星群グングニールにより反統合勢力を降伏させ、地球全域を統一した。この際、反統合が統合のAIネットワークに対抗するために生み出した装置「ノインツェーン」は統合政府に接収後、人権を与えられている。
大戦で疲弊した地球の再生を目的とし、Dr.ノインツェーンを責任者としてルネサンス計画を実施したが、ノインツェーンの歪んだ欲求もあり地球環境を回復させるには至らずに頓挫した。現状の地球統一も対地射撃衛星群グングニールの恐怖により成されたと考える向きが現在でも少なからず残っており、統合へ強い反発心を持つ武装組織や統合政府の将来的な分裂を見越した活動を行っている政治勢力、反統合勢力の邪悪な遺産を得て反旗を翻そうとするカルトも世界各地に蠢いており、紛争や内乱が絶えない。
GOAT(Global-union Observation Artificial-intelligence Team/統合軍対AI対策班)
AIの監視、且つ有事におけるその鎮圧を目的とした地球統合政府の軍組織。清城市の政情悪化に伴い、先遣部隊の後に主戦力が駐屯部隊として派遣された。物語時点での長官は桐島勲少将。
工作部隊、陸戦部隊、シュミクラム部隊を持つ他に、AIに依存することのない指揮系統や索敵方法を保持しているなど、その武装、人員、軍事能力は凄まじく、CDFとは比較にならない。
対AIの任務に従事する事から、反AI的な思考を支持する者が多い。
グングニール(対地射撃衛星群)
地球静止軌道上に展開している地球統合政府軍の防衛システムであり、先の大戦を終結に導く切り札ともなった統合軍の守り神(ピースメイカー)。
対地レーザー攻撃衛星群を中核として構成された、地球の全地域を攻撃可能な戦略兵器である。その全力射撃は核に匹敵すると言われており、核に替わる軍事抑制力となっている。現在の地球統合政府による世界統治を支えている存在である。
後述の「灰色のクリスマス」ではアセンブラ汚染地域に対してグングニールの斉射が行われ、住民ごと都市が焼き払われた。
『BALDR SKY ZERO』では地球統合政府と反統合勢力の前線だった東南アジア前線で『グングニール』の実戦投入が行われた事が語られている。
大戦
当時地球上の一部の地域しか支配していなかった地球統合政府と反統合勢力との全世界的な戦争。資源やAIの存在等技術面で有利な統合側の勝利が有力視されていたが、反統合連合が極秘試作兵器である『ノインツェーン』を投入し、統合の誇るAI網『バルドルシステム』と互角の情報戦を演じた事から戦況は膠着、最終的に『グングニール』による地上制圧によって学園編の10年前に反統合連合側が投降し人類が生存可能な環境の7割を汚染しながらもひとまず戦争は終結した。
この戦争によって宇宙開発計画をはじめ、人類のフロンティアパスファインドは全て中止に追い込まれ、仮想空間への依存が増大したともされている。
アーク・インダストリー
清城市の外れにある、仮想空間をビジネスとした商材によって莫大な利益を上げた新鋭企業(エッジ)。
その事業は幅広く、本丸のAI事業や仮想空間クリエイト事業、仮想空間を彩り豊かにするNPCやシュミクラム・ウイルスの開発、会員制の仮想都市の提供、更には大半のセカンドに埋め込まれている脳チップの開発、生産等をも手掛けている。
AI関連の事業をほぼ網羅していると言っても良い程であり、自社開発のシュミクラムによる強力な警備部門(保安組織)すら擁している。社長は甲の叔母でもある橘聖良。
仮想空間を生業にするだけに、AIを支持する思想が強い。また、最初期のAIの人格「イヴ」を所持しており、社屋中央のアイリスバルブは「ESの海」へと繋がっている。
フェンリル
PMC―いわゆる民間軍事会社。社員は歴戦の傭兵達で構成され情報戦や電脳戦にも極めて長けている。営利組織である以上、基本的には中立的存在なのだが、金次第でどの組織、陣営にも就くとの噂が強く、評判が悪い。
その悪名は広く知れ渡っており、入国時に“フェンリル”の名前を出すと入国拒否されてしまう可能性すらある為、表向きは“門倉運輸”という企業名を名乗り、実際に運輸業者として仮想・現実の双方で業務に勤しんでいる。なお、門倉運輸の評判は大変良い。
一介のPMCに過ぎず、規模も決して巨大とはいえないが所有する装備、機材、機体、そして人材は超一級品であり、限定戦ではGOATやドミニオンとも互角に渡り合えるほどの戦力を持つ。社長は甲の父親でもある門倉永二大佐。
ドミニオン
AIを神と崇拝する新興宗教団体。AI派の最右翼で、サイバーグノーシス主義を掲げ(「現実世界は悪しき偽りの神デミウルゴスに作られた誤った世界である」「AIこそ真の神である」「仮想空間は真実の世界に通じている」などといった)狂信的な思想を有する。晩年のDr.ノインツェーンが傾倒していたとも言われる。
以前は小規模な集団が点在していた状態だったが、十数年前に突如現れた一人の神父がそれらをまとめあげて規模は一気に拡大、巨大宗教組織となる。更に武装化まで行われ、CDFでも迂闊に手が出せない程の武力まで有している。
現在は清城市を活動拠点としており、教義に基づいた奇行や集団自殺といった異常行動に留まらず、反AI派に対してテロ活動やゲリラ戦までを実行するなど、危険極まりない反社会的カルト集団と化している。加えて、仮想空間上の拠点の座標は常時変化しており、GOATでさえも居場所を突き止めるのは困難となっている。
ドレクスラー機関
統合政府が設立したナノマシンの研究機関。
蔵浜市に研究所を置き、別々の役割を持つナノマシンが組織的に動作する「第二世代ナノマシン」における初の実用目的製品、環境浄化再生ナノマシン『アセンブラ』の開発研究を行っていた。
だが、聖誕祭の日にアセンブラが研究所外へ流出。自己増殖過程に致命的なバグを抱えていたアセンブラは大量殺戮兵器と化し、グレイ・グー『灰色のクリスマス』を発生させる。最終的に周辺市街ごとグングニールのレーザー斉射により焼き払われることで人類滅亡の危機こそ脱したものの、これによって生じた大規模な社会・環境破壊の結果、現在の世界情勢は末法的な状況を迎えるに至っている。
なお、「灰色のクリスマス」発生時に久利原直樹をはじめドレクスラー機関の研究員たちは研究所を離れており、やがて揃って失踪。事態の黒幕として疑われる声も強い中、生き延びた門倉甲は桐島レイン共々傭兵となり、真相を知るべく恩師の行方を追っていた。
アセンブラ(第二世代ナノマシン)
自己増殖能力と組織改編能力を兼ね備えた新世代ナノマシンの通称で、統合政府の環境再生計画に沿って進められていた。
ドレクスラー機関により研究、開発が進められており、開発指揮者は久利原直樹。目標を分子レベルで解体する改変者(アニメータ)、目標を分子レベルで再構成する製造者(クリエータ)、ナノマシン自体を生成・改造する複製者(レプリケータ)、それらのナノマシン群を統括する擬似知性ユニット・指揮者(コマンダー)の4種類のナノマシンにより構成され、状況に応じてナノマシンの構造を組み替えることにより、開発段階では他のナノマシンを含めた環境中のあらゆる汚染物質を自動的に無害化・あるいは有用な物質に再構成する能力が企図されていた。直樹曰く、「人類が夢見てきた、真に万能な機械」。
もっとも、その複雑な設計上、開発は直樹の想定通りには進まず、軍事転用などの危険性を指摘する声や政治的な思惑など様々な障害も重なり、特に最終デモンストレーションの際には桐島勲を始めとする識者から強い批判を受けていた。事実、レプリケータによる複製時に極めて低確率で突然変異体が生成されるというバグが排除できず、それを見越した「突然変異体を排除する」保護機能があってしても淘汰によってやがて保護機能に適応した突然変異体が発生するため、無制限・最大効率の増殖を想定した場合、14分49秒後には突然変異体が正常種を駆逐してグレイ・グー発生へと至ってしまう(もっとも、環境浄化のみを最終目的とする場合、どういう形であれそれは実現はする)。
一方、グレイ・グーに備えて、「アセンブラがいかなる状態にあろうとも、指揮者を上書きし環境修復を単一目的とするオリジナルのナノマシンへと復帰する」という修復プログラムが開発開始時点で密かに準備されていた。
灰色のクリスマス
数年前に起こった大惨劇。
数年前の12月24日20時32分、ドレクスラー機関研究所において、開発が最終段階を迎えた第二世代ナノマシン、通称「アセンブラ」が何の兆候も無しに流出。異常警報が発せられた直後、瞬時に研究所周辺がアセンブラに汚染された。人工的な建造物群には何ら損傷はなかったが、汚染地域にいた生物に壊滅的な被害をもたらし、そのほとんどが溶解した。
自己増殖、及び自己改変能力を持つアセンブラは、そのまま放置すると汚染区域を広げていくため、同日20時52分、統合軍アジア司令部は超法規的措置を遂行し、対地射撃衛星群(グングニール)による全力射撃を実施。アセンブラが流出した区域とその周辺を住民ごと焼き払い、近隣の住人数万人が帰らぬ人となる大惨事となった。
ナノマシン
ナノ物質とも。基本的には単一稼働する第1世代ナノマシンのことを指す。現代におけるナノマシンの概念を実用化したもので、作中では食料・調味料・兵器・医薬品・衣料品・建材・工具とあらゆる分野で用いられている(詳しくはナノマシンの項を参考のこと)。また、カゲロウの武装「バイオブラスター」のように、仮想空間でのみ存在するナノマシンも存在する。
世界0
Dive2に登場する世界。他の世界と異なり、甲が目覚めた時にはほとんど誰もおらず、最初に接触したシュミクラムは無人機(ドローン)という有様であった。かろうじて発見した橘聖良も半ば消失しかかった半透明の姿であり、話しかけてもリアクションは何一つ返って来なかった。
また、なぜか現実世界は大森林によって覆い尽くされ、人類による文明の痕跡すら見当たらない。
ウィザード
特級プログラマの別称。作中では橘聖良、西野亜季、久利原直樹等が登場する。一方で、ウィザード相当の技術を持ちながら、諸事情により登録していない登場人物も若干名存在する。一般人からすれば魔法使い(ウィザード)としか思えないプログラミング技術で世界規模の技術革新を行っていることからそう呼ばれる。
また、「人工知能友愛協会(A・F・A)」という交流組織が存在しており、学園編の時点では久利原直樹が会員、西野亜季が最年少正会員となっている。
NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)
仮想空間上に無数に存在する、電子的アンドロイド。動物から人物まで様々な種類が存在する。プログラムに従い、案内係からセクサロイドまで多数の役割を担う。クオリアを持っていないため、セカンドを含めた仮想空間の熟達者は動作のぎこちなさから容易に人間でないことを看破できる。
電子体かNPCかを見分ける最も確実な手段はフォークトカンプフテストを行うことであるが、AIが運用するNPCは基本的に嘘をつかないことから、素性を質問すればおおよそ回答が行われる。
「灰色のクリスマス」の最初の犠牲者となった少女をモデルとした(と言われる)アーク社製のNPCシリーズはその悲劇的な背景もあって好評を博し、現代編の時点では非常に著名な存在となっているものの、海賊版が出回っていることも含め、「彼女ら」を知る人々はそれらの事実に対して複雑な思いを抱いている。
模倣体(シミュラクラ)
現実に存在する人物の姿や思考を複製した自立稼働するNPCの一種。
NPCとの大きな違いは精神自体は人間のそれとほぼ同一のため、外部からの情報を吸収して成長することである。
また、対象人物と精神がリンクしており、お互い何となく情報のやり取りをすることができる。
ただし、対象人物と対面してしまうと互いの精神や感情が深くリンクしてしまい、共鳴(ハウリング)現象を引き起こすため、大層危険である。
人格はAI内に模倣して作られたものであるため知能や精神の発達が未熟であっても計算処理速度は人類を遥かに上回る。ただし、対象人物が死亡・人格崩壊するなどすると一切の機能が停止する。
作中には亜季によって作られた二体の模倣体が登場するが、一体は共鳴現象を発生させたことから強制機能停止・封印され、もう一体は情報集積機能を開放されたまま休眠を続けている。
電子体幽霊(ワイアード・ゴースト)
ネット上における都市伝説の一つ。仮想空間上で死んだ者は、霊魂が電子体と化して永遠にネット空間を彷徨い続けるという。具体的には実体が不明であったり、リンクが途切れていたり、あるいは現実世界で死亡が確認されている人物の電子体を指して用いられる。当然ながら、通常はただの見間違えに過ぎない。
細胞複製(クローニング)
今日におけるクローニングと同様であり、再生医療を主な目的として用いられる。しかしながら、全身を複製した場合に発生した脳を取り除くことは殺人として違法となることから、正式なクローニングには統合政府による認可が必要となる。さらに認可には厳重な資格審査と長い順番待ちが必要であり、医療費も一般庶民には払えないほど高額となっている。門倉八重には電脳症の治療用として認可が下りていたが、使用することのないまま逝去した。
無認可の闇医療でも可能ではあるものの、やはり莫大な費用が必要となることには変わりがない。
中継点(イーサ)
仮想空間に没入した際のゲートとなる座標地点。中継界とも。名前のとおり、様々な場所へ転送(ムーブ)することができるポータルでもある。「HELLO,WORLD」(亜季)。
また、電子体同士での一般的な会話・会議もおおよそがここで行われる。
直接通話(チャント)
軍用ツールを介して行われる秘匿性の高い電子会話。導入のためのプラグインは小型な一方で極めて性能が高く、傍受は不可能な上にチャントが行われたかどうかを知るだけで超伝導量子干渉計(スクイド)のような大型機器を必要とするほどである。そのため、正規軍兵士や司直だけでなく、傭兵やプログラマなどの間でもインストールしているケースが多々見られる。
無名都市(アノニマス・シティ)
Annonymous City。前世紀以前から概念化されていたアングラ・コミュが離散・結合・増殖を繰り返し、やがてAIの余剰計算能力を掠め取る形で構築された、無数の会議(フォーラム)によって構成される仮想都市。
無数のスレッドに分散されて形成されているために誰もこの街を停止できず、絶えず創造と破壊が繰り返されているために誰も街路図を描けず、この街の住人が個体名を重視しないために誰も住民名簿を作れない。バーチャル・ドラッグや違法機器、いかがわしいサービスが平然と取引される仮想空間において最も治安が悪いとされる無法地帯で、「掃き溜め」とも蔑称される。到達も離脱も比較的容易であることから、むしろ当局としても統治を諦めて放置している様相がある。
ほぼ全ての領域がリミッター・オフになっており、命を落とす危険も非常に高い、決してネット初心者が立ち入ってはならない場所でもある。
接続者(コネクター)システム
AIと人間を一体化接続するシステムで、ルネサンス計画においてDr.ノインツェーンの主導の元に開発が進められた。具体的には適合者がバルドルマシンに接続することによりAIを制御することを目的としており、適合者にはノインツェーンの弟子でもあった橘八重が選ばれてシステム調整が行われていたが、軍部からの出向者であった門倉永二が八重とともに駆け落ちし、さらにノインツェーンが失脚→死亡したことから開発は凍結・破棄、のちに技術の一部は橘聖良により第二世代(セカンド)システムの改良や模倣体(シミュラクラ)の作成技術等に転用された。
一方で、統合軍ではAIに対する危機感から研究を再開継続、ある程度接続者をエミュレートすることによりAIによる仮想空間の制御を抑圧する「トランキライザー」システムが開発された。また、ノインツェーン信奉者のカルト集団により適合者が違法に産み出されたという情報もあるものの、何者かの手によって組織は壊滅、適合者も行方不明となっている。
前衛(フォワード)
シュミクラムユーザーのうち、前面進攻に特化したパイロットを指す。門倉甲や渚千夏、シゼルがこれにあたる。
サポート
シュミクラムユーザーのうち、電子戦や欺瞞工作に特化したパイロットを指す。桐島レインやモホークがこれにあたる。役割的に仮想空間での戦場では後方援護に回ることが多く、場合によっては没入せず任務に赴くこともある。
凄腕(ホットドガー)
バルドシリーズを代表する言葉で、シュミクラム戦において一線を画した高度な技倆を有するパイロットを指す。スラングながら、こう呼ばれることはパイロットとして最大級の名誉でもある。
特異点
仮想空間上に出現する、正体不明の現象。発生時は上空にブラックホールの如き「空間の穴」が出現する。
空ルートを除く全てのルートで過去を含め、それぞれ四回発生する。このとき、AIに無限とも言うべき処理能力が付与され、通常のネットのルールが適用されなくなることが確認されている。
バルスカ学園
DiveXにあるパラレルワールド的なストーリーの一つ。
キャラの元々の性格や設定を盛大に無視・変更した学園もの。もっとも、如月寮の面々は根っこのところは同じである。







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