2006年のF1世界選手権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 03:50 UTC 版)
レギュレーションの変更
エンジン
急激なエンジン出力レベル向上への対策として、2006年のエンジンレギュレーションに抜本的な変更が行われた。
- 排気量を3000cc(3.0リッター)から2400cc(2.4リッター)に引き下げ
- 気筒数をV型10気筒 (V10) からV型8気筒へ削減
- V型でバンク角は90度のみ
- ボア径98mm以下、クランクシャフト58mm以上
- 重心位置は165mm以上
- 可変吸気装置の禁止
- 最低重量95kg
これらは安全性向上と開発コストを削減するための措置である[3]。資金力の乏しいチームはエンジン調達が難しいため、2006年と2007年は従来の3リッター・V10エンジンにレブリミッターを装着して使用することも許可された。この救済措置はミナルディからの嘆願を容れてのものだったが、制限付きでもV8エンジンよりもトルクがあると見込まれる上に、ミナルディがレッドブルに買収されて資金難が解消されたため、下位2チーム(ミッドランドとスーパーアグリ)はFIAに対してトロ・ロッソのV10エンジン使用を認めないよう異議申し立てを行った。
排気量が20%減少したことにより最高出力は200馬力程度ダウンし[3]、V10最終期の950馬力前後から750馬力前後にまで低下した[4]。最高回転数は上昇し、コスワース・エンジンは予選時に20,000回転オーバーのスペックを投入した。構造面では振動が発生する回転帯がV10よりも高いため、補記類への影響が課題となった。
当初はラップタイムが3秒ほど遅くなると予想されていたが[3]、プレシーズンテストの段階で前年のペースに迫り、本戦では前年を上回るタイムが記録された[5]。これを受けてFIAは追加策として、第17戦日本GP時点のエンジン仕様で承認(ホモロゲーション)を行い、2010年までエンジン開発を凍結することを決定(その後2013年まで延長)。さらに翌2007年より最高回転数を19,000回転に制限することを決定した(2009年より更に18,000回転に厳格化)。
タイヤ
前年度は禁止となっていた、レース中のタイヤ交換が再び許可された。
1グランプリにつき、各ドライバーは最大でドライタイヤ7セット、ウェットタイヤ4セット、エクストリームウェザータイヤ3セットの計14セットまで、タイヤの使用が認められる。
予選
予選方式は前年度までのワンアタック方式が不評であったため、2006年は大きな変更が加えられ、ノックアウト方式が導入された。予選は土曜日午後の1セッションのみである。
- 第1ラウンド
- セッション最初の15分間。全車22台が任意の燃料を積んだ(極めて軽い)状態で走り、ラップタイムを記録。下位の6台は次のセッションに進めず、タイム順に17番手から22番手までのグリッドを埋める。
- 第2ラウンド
- 5分の休憩をはさみ、その次の15分間のセッションを残りの全車が任意の燃料を積んだ(極めて軽い)状態で走行する。ここでも下位の6台は次のセッションに進めず、タイム順に11番手から16番手までのグリッドを埋める。
- ここまでで脱落した12名については、この時点で、自らの車をピットまで戻し、セッティングに変更を加えることが許される。
- 第3ラウンド
- 残った10台は決勝で予定している量まで燃料を給油し、その燃料搭載量をFIAに申告し、5分の休憩をはさんで後に行われる20分間の最終セッションに挑むことができる。このセッションに参加する10台は決勝スタート時の搭載量まで燃料が給油されているため重い。決勝のレース戦略によって各車の燃料搭載量は異なるので、全車が燃料を抜いて実質的に同じ重量で走る最初の2回のセッションと異なり、各競争者の重量には差が生じ、これが順位に少なからぬ影響を及ぼすこととなる。このセッションでのタイム順に従い上位の10グリッドが決定となり、決勝グリッドを全て確定する。
予選終了後、22台の各車両は事前に申告した量まで給油された上で、翌日までパルクフェルメ(車両保管庫)に封印される。
開幕前の時点では、この手順について、最終セッションで、事前に燃料搭載量を重めに申告しておいて、セッション中になんらかの方法を用いて燃料を抜くチームが現れるのではないかと懸念されていた。仮に密かに燃料を減じることに成功した場合、その車は予選を重量が軽い状態で走ることにより極めて有利になるばかりでなく、セッション後に給油できるため、決勝においてもなんらデメリットを負うことがなく、この点はルールの抜け穴になり得ると考えられていた。
新予選方式の発表直後から指摘されていたこの抜け穴について、FIAは燃料消費量は計算によって把握できるので、それとセッション後の給油量を比較すれば問題ないと述べているが、2006年シーズンからは従来の3.0リッターV10とは燃費が異なる2.4リッターV8エンジンに変更されることもあり、元々やっかいな燃費計算を正確にできるのか、などと疑義が呈され、シーズン中に修正を余儀なくされるのではないかとする声があがったものの、この点についてはほぼ滞りなく機能した。
実際にこの予選方式が開始されると、20分かけて行われる最終セッションの前半は各車が燃料消費のために費やすことになる為、退屈なものとなった。第11戦フランスGPからは、こうした批判に応えた修正が加えられ、最終セッションの時間は20分から15分に短縮された。同時に、各セッションについてQ1・Q2・Q3と呼ぶことになり、Q1・Q2において、それまではセッション終了までに記録したタイムが有効とされていたものが、セッション終了後最初にコントロールライン通過したラップまでが有効なタイムとされるようになった。
フリー走行
土曜日のセッションについて、従来は45分のセッションを2回としていたが、1回のみ行われる1時間のセッションに変更された。このセッションは、原則として11時から12時までの間に行われる。
- ^ a b "F1 世界選手権 第18戦ブラジル・グランプリ 2006年10月22日 決勝 ミシュランタイヤのパートナーがダブルタイトルを獲得". 日本ミシュラン.(2006年10月23日)2013年1月21日閲覧。
- ^ "ルノー ダンパーの件は痛手だった". GPUpdate.(2006年12月6日)2013年1月19日閲覧。
- ^ a b c "2006年新レギュレーション解説". 本田技研工業.(2006年)2013年1月21日閲覧。
- ^ 『F1速報PLUS Vol.23 "脱・初心者"マニュアル』 イデア、2012年、46頁。
- ^ 鈴鹿サーキットのラップレコードは2006年日本GPの予選Q2にて、ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が記録した1分28秒954。
- ^ 第3ドライバー:「サードドライバー」とも言う。前年度のランキングが5位以下のチームは金曜日のフリー走行で控えの第3ドライバーによる3台目のクルマを走らせることが許されている。
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