香港特別行政区政府 香港特別行政区政府の概要

香港特別行政区政府

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/31 00:38 UTC 版)

香港特別行政区政府
概要
創設年 1997
対象国 香港
地域 香港
政庁所在地 金鐘
現行憲法 香港特別行政区基本法
政体 選擧獨裁英語版
代表 行政長官
機関
立法府 立法会
行政府 行政会議
司法府 司法機構
香港政庁
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香港政府の要職と行政会議

行政長官

香港政府の首長は行政長官である。香港の新聞などでは別行政区の長を略して「特首」と呼ぶことが多い。行政長官は選挙委員会による間接選挙によって選出されるが、任命するのは国務院総理(中華人民共和国の首相)である。そのため、香港政府について理解するには、国務院など中央政府との関係を理解する必要もある。(詳細は「#中央政府との関係」の節で後述)

行政会議

香港政府の運営は行政会議において重要事項が決定される。行政会議の議長は行政長官である。そのメンバーには、官職メンバー(官方成員)非官職メンバー(非官方成員)がいる。行政会議は諮問機関にすぎず、議決は多数決ではなく、行政長官の判断に委ねられている。香港返還前や返還後しばらくは、司長と一部の局長、財界出身の非官職メンバーによる利害調整を行う色彩が強かった。

しかし、2002年7月の「高官問責制」の導入に伴い、3人の司長(政務司司長、財政司司長、律政司司長)と11人の局長の全員が官職メンバーとされ、行政会議は内閣により近い組織となった。しかし、曽蔭権行政長官は非官職メンバーを増員して、官職メンバーの方が少数派となった。そのため、現在では政府と各政治勢力の間における利害や意見調整の場としての性格がやや強くなった。

なお、プレスリリースされた結論を除き、行政会議における議論は非公開とされている。メンバーには守秘義務が課せられており、特に政府側の説明や他のメンバーの発言を公にすることはできない。

官職メンバー(3司長13局長)

3司長13局長は香港政府において閣僚に相当する役割を担っている。その人事は行政長官が指名し、国務院が任命する。ただし立法会の承認は必要としない。そのため民主主義国家の閣僚と違い、司長や局長は一体誰に責任を負っているのか不明確である。2002年まで、これら政府高官は公務員であった。2002年7月の問責制導入によって、政治任命ポストとなった。そのため、閣僚により近い位置づけが与えられたといわれる。公務員から就任する場合は、一旦退職することが求められる。原則として再び公務員の身分に戻ることはできない(公務員事務局長を除く)。これにより財界や学者からの登用が可能となった。

司長は行政長官を直接補佐し、香港政府高官の中でも最上位にある。そのうち政務司司長(政務長官)が筆頭とされ、全ての局および局長を指導する。財政司司長(財政長官)は序列2位とされ、財政や経済関係の局および局長のみを指導する。3位の律政司司長(司法長官)は、行政長官の法律顧問としての役割と、律政司(香港政府の法律関係の事務などを管掌)という部門を統括しているが、局長を指導する立場にはない。なお副司長は香港基本法に言及があるものの、返還後いまだ設置されていない。

局長は決策局のトップである。司長の指導の下、職責分野の政策決定を担う。英語名称では司長と同じくSecretaryとされているが、実際には司長より格付けが低い。

非官職メンバー

行政会議の非官職メンバーは、公務員や政府高官以外から任命された非常勤の役職である。会議への出席を除いて、特定の職務を負っているわけではない。そのため、司長や局長と異なり、閣僚のような職務とは言えない。

香港政府の組織

香港政府本体の組織は、政策決定を担う政府総部と、政策実行を担う執行部門に分けられる。そして政府本体の他に、日本独立行政法人に相当する公営機構がある。

政府総部

政府総部は組織であると同時に、2011年以降、香港島金鐘北部にある添馬添美道2号(2 Tim Mei Avenue、Tamar)に建つ庁舎(政府總部、Central Government Offices)をも指す。組織としての政府総部は、政務司司長を頂点とし、政務司司長弁公室および財政司司長弁公室(司長弁公室は長官官房と訳される)と13局(決策局)から構成されている。一部を除く局の所在地は、添馬の政府総部に集中している。

現在の政府総部は、しばしば「3司13局」とも呼称されるが、司は一つしか設置されていない。しかし唯一の司である律政司中環の下亜厘畢道(Lower Albert Road)沿いにある律政中心(Justice Place, 旧中区政府合署=添馬移転前に政府総部が入居した合同庁舎)に入居し、執行部門に分類されている。つまり政府総部の一部ではない。イギリス統治時代の総督府で行政長官官邸である礼賓府(Government House)は上亜厘畢道(Upper Albert Road)に面し、律政中心=旧中区政府合署に近い。ただし初代行政長官であった董建華は礼賓府を用いず、中区政府合署にオフィスを構えた。

決策局は、行政長官に対して責任を負っている。ただし、政務司司長の指導または財政司司長の指導も受ける。主要官員問責制導入後、局のトップは政治任用の「局長」である。複数の事務を管轄する局では、内部に「科」が設置され、局長の補佐役である常任秘書長が「科」の責任者を務める。ただし、一部の局では「科」が設置されていなかったり、執行部門が決策局の内部組織として組み込まれ、そのトップが常任秘書長を兼任する場合もある。常任秘書長は局内の公務員のトップの地位にある。このほかに政治任用ポストの「副局長」と「政治助理」がある。

決策局の構成

政策の方向性が異なる分野(環境と公共事業、産業政策と労働政策)を切り離しつつ、政府が積極的に経済政策を企画することも意識している。この他、行政長官弁公室には、局長待遇の主任と、常任秘書長1人が置かれる。

公務員事務局 Civil Service Bureau
公務員人事(採用、育成)、規律保持を管轄。
政制及内地事務局 Constitutional and Mainland Affairs Bureau(憲政本土事務省)
選挙事務や中央政府との折衝、海外との条約・協定に関する事務を管轄。
教育局 Education Bureau(教育省)
教育行政を管轄。
環境局 Environment Bureau(環境省)
環境政策を管轄。
食物及衛生局 Food and Health Bureau(食物保健省)
食品安全、公共衛生、医療などを管轄。常任秘書長は2人。
民政事務局 Home Affairs Bureau(民政事務局)
社会政策、娯楽・スポーツ、文化行政を管轄。
労工及福利局 Labour and Welfare Bureau(厚生労働省)
労働政策、福祉政策を管轄。
保安局 Security Bureau(保安省)
治安(警察、刑務所)、防災・救急、境界(入管、税関)行政を管轄。
運輸及房屋局 Transport and Housing Bureau(運輸住宅省)
運輸政策、住宅政策を管轄。常任秘書長は2人。
商務及経済発展局 Commerce and Economic Development Bureau(商務経済発展省)
産業政策、放送・通信とクリエイティブ産業を管轄。常任秘書長は2人。
発展局 Development Bureau
公共事業、都市計画(規劃及地政)を管轄。常任秘書長は2人。
財経事務及庫務局 Financial Services and the Treasury Bureau(金融財務省)
財経事務科(金融政策を担当)と庫務科(政府財政を担当)が置かれる。常任秘書長は2人。
創新及科技局 Innovation and Technology Bureau(技術革新・科学技術省)
2015年11月に新設。イノベーション・科学技術を管轄。

執行部門

執行部門はその名前のとおり、決策局が決定した政策を実行する部門である。執行部門は特定の局に管轄され、その局に対して責任をおっている。ただし、一部の執行部門は直接、司長や行政長官に責任を負っている。また、政府の会計監査を担う審計署は直接、立法会に報告を行っている。

執行部門の長官のうち、海関関長(税関長)、廉政専員(廉政公署長官)、警務処処長(警察長官)、入境事務処処長(入境管理局長官)、審計署署長(会計検査院長)は香港基本法において香港政府の高官に準じる位置づけとされ、行政長官が指名し、中央政府(国務院)が任命することになっている。

公営機構

公営機構は、半官半民の組織である。政府本体には含まれない。ただし多くの場合、名士や学識経験者などによる委員会が運営を決定しており、比較的強い独自性を持っている。その一部は日本特殊法人独立行政法人同様、政府の出資と指示を受けて行政サービスを提供する組織であるが、他にも由来や性格がさまざまに異なる組織がある。

政府から運営費を交付される機構だけではなく、事業収入で運営される公営企業あるいは公有企業も含まれている。香港鉄路、香港機場(空港)管理局がこれにあたる。

一部の組織には設立法があり、そのような場合は法定組織とも呼ばれる。多くの大学や慈善団体のほか、香港証券取引所香港貿易発展局、2007年に新設された香港映画発展局などがこれに含まれる。この中にも、香港証取など政府財政に依存しない組織がある。郷議局のような地方議会に相当する組織も含まれている。




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